強化合宿で平常授業 3
筵たちが別荘に帰ると、筵の妹である本田楼が別荘に訪れていた。
楼の話によると、父親の根城が強化合宿の教官を務める事となり、それに付いてきたという事で、憩も同じ理由でこの島に来たらしい。
そして憩はかぐやたちと合流して、楼は筵たちと合流したという訳だ。
そうして、Zクラスに楼を含めた8人で南の島での、強化合宿もといバカンスが始まった。
楽しい時間はあっという間にすぎると言うが今回が正しくそれで、二日目は海で特にサービスシーンも無い海水浴を楽しみ、三日目は強化合宿の設備の設置と片付けを多少の陰口をたたかれつつも手伝わされ、その後は町まで出て行き、娯楽施設で適当に暇を潰した。
そして4日目、特別レクリエーションが始まった。
「まさか、僕たちも参加させられるとわね」
筵が別荘のリビングで机の上にある1枚のプリントを眺めながら呟く。
三日目の夜、Zクラスをこの別荘へと誘ったメイドさんが、特別レクリエーションに関するプリントと銀のメダル三枚目を持ってきたのだ。
そして、強制参加であるという旨を伝えて去っていた。
特別レクリエーションの内容は三人一組のチームとなり、最初メダルを1枚持ったらゲームスタート。
この島全体を舞台に各チームメダルを奪い合う。
同じクラスでの仲間割れは禁止。
メダルは敵チームから奪うだけでなく、この島の至るところに隠されている。
A、Bクラスには金のメダル、C、Dクラスには銀のメダル、E、Fクラスには銅のメダルが支給されている。
A、Bクラスは全てのメダルが1ポイント。C、Dクラスは金のメダルのみ2ポイントで、ほかは1ポイント。E、Fクラスは金のメダルが3ポイント、銀のメダルが2ポイント、銅のメダルが1ポイントとなる。
最終的に1番多くのポイントを稼いだクラスが総合優勝、一番多くのポイントを稼いだチームがチーム優勝となる。
優勝するとポイントが更に加算されて、そのポイントに応じて商品と交換できる。
最初に銀のメダルが支給されていると言うことは、ZクラスはC、Dクラスと同じ扱いだろう。そして問題はZクラスが7人なのに対してメダルが3枚が支給されていることである。
筵は人差し指でこめかみの当たりを叩きながら、全員の様子を確認して独断と偏見でチーム割を発表する。
「チーム分けは、湖畔とれん子ちゃん、譜緒流手ちゃんチーム。梨理ちゃん、淵ちゃん、カトリーナちゃんチームで行こうか」
筵がチームを決めると梨理は疑問を口にする。
「おめーが入ってねーだろ?」
「僕は一人でいいよ。何かの手違いなのか、嫌がらせなのかは分からないけどね」
筵が呆れたように呟くと突然別荘の扉が勢いよく開き、一旦、島の町まで帰っていた楼が姿を表した。
「申し訳ありませんお兄様。それをしたのは私です。どうか罰を」
「それはいいから、どういう事?」
「・・・はい、私もお兄様とこれに参加したいと思い、あの生徒会長を脅しまして言うことを聞かせました」
楼は机の上にあるプリントと同じプリントを筵に見せながら、筵に対しては申し訳なさそうに、しかしながらスチュワートにはなんの負い目も感じていないと言った風に宣言する。
「なるほどね。でもこれだと二人だよ?」
「安心してください。コイツを呼びます」
楼はポケットの中から植物の種を取り出して筵に見せる。
「まあ、それならいいかな」
筵は納得して楼の申し出を受け入れると、楼の元まで行き、手を握りその種を再び握らせる。
その後、筵がれん子たちに先程の種ついての質問され、それに対して言い訳を考えていると、遠くの方でレクリエーション開始の空砲が鳴り響いた。
「よ〜し、みんなここに固まっているのは危ないから解散するよ」
筵は皆の質問について答えをはぐらかし、それぞれのチームにメダルを渡すと外に出るように促す。
皆、筵たちのチームの三人目に興味があったようだが、しぶしぶと言った感じで別荘を出ていった。
「困るな、楼ちゃん。さっきみたいなのをみんなの前で出しちゃダメでしょ?」
「申し訳ありません。どうか罰を」
筵は、目を瞑って顔を前に突き出し罰を待っている楼のおデコに軽くデコピンをする。
すると楼の表情は恍惚とした様に変化し、そのまま数秒間静止してしまう。
「じゃあ、三人目呼び出そうか?」
筵が少し待ったあと楼に提案し、2人は共に外に出て地面に先程の種を置き、水をかける。
すると、その種は見る見るうちに成長して、植物と人の中間のような存在のハーベストに変化する。その姿はまるで植物の女王といった感じだった。
「楼様お呼びですか?・・・おや筵様もこれはどういう要件でしょうか?」
その植物女王型ハーベストに楼が状況を説明すると、そいつは二つ返事で了承する。
そして植物女王型ハーベストは体から光を発して、そのシルエットがどんどんと小さくなり、それが収まると中学の生徒会副会長、姫川紅來莉子へと姿を変えていた。