テロ事件でも平常授業 5
今回のテロ事件は憩と刀牙、あと実はショッピングモールに来ていたスチュワートなどの活躍で無事解決した。
事件での重傷者、死傷者は0人で軽傷者も逃げ回って転んだなどがすべてであり、直接の被害はほとんどなかった。公式発表では。
実際の死者は14人ほどだろうか。しかしそれは政府が隠蔽しているとかそういうベタなものでは無い。
そう本田筵である。
刀牙に憩フラグが立ってしまったことで、筵は精神的にダメージを受けて、14回自殺すると言う世にも奇妙な言葉が出来上がってしまった。
今はまだ事情聴取などが行われていて、ショッピングモールにいた人たちは解放されていない。
譜緒流手たち1階にいた者達は、かぐやから勝手に逃げた事への軽い抗議を受けている。
1人で立てる程までは回復した筵は、刀牙と楽しそうに話す憩を虚しさを含んだ、何とも言えない表情で眺めている。
そんな筵に淵が近づいて声をかける。
「元気出してくださいよ。そもそも筵先輩が憩さんを助けに行かなかったからあんな事になったんですよね?」
「・・・憩ちゃんのヒーローごっこを邪魔してはいけないと思ったんだよ。あの程度の奴の攻撃、憩ちゃんには効かないからね・・・それでもやっぱり。助けられると好感度は上がるものなんだね」
筵は後悔を孕んだ目で再び刃牙と憩を見たが、淵には何かそれ以外の理由がある気がした。
「他に何か理由があるんじゃないですか?」
「淵ちゃん、君も僕並みに人の心を読めるんじゃないかい?・・・そうだね。あの2人の関係性が僕の両親と似ていてね。複雑な気持ちになったんだよ」
しばしの静寂がその場を包む。淵は何とかして筵を慰めようと言葉を探した。
学園の光と影、日室刀牙と本田筵。でもきっと筵は自分が影なんておこがましいと言うだろう。
しかし淵を始めとするZクラスの全員が、その日影を心地よく感じていた。それだけは確かだった。
「わたしは筵先輩の三枚目みたいな態度、嫌いじゃないですよ・・・多分」
「・・・それはデレと受けっていいのかな?」
筵の返しに淵は恥しさや怒りなどの感情が入り交じって湧き出したが、少し考えてうつ向きながら口を開いた。
「まあ、今回だけは・・・」
淵はそう言うと、本気で恥ずかしくなったのか筵に背を向けて、梨理たちの方に足早向かった。
そしては筵は月並みなが、その小さい背中を守らねばならないと決意を新たにした。