テロ事件でも平常授業 2
テロ事件の起きる少し前、2階本屋。
「淵ちゃん〜」
「気持ち悪いですよ筵先輩。一体なんですか?」
本屋で本を散策していた淵に筵が泣きついてくる。
「さっきそこで、日室刀牙と憩ちゃんが一緒に歩いてた」
「誰ですか?憩ちゃんて」
「僕の二番目の妹・・・」
淵は跪くような状況になっている筵を、呆れたように見下ろした後、本の散策に戻った。
「怖い・・・王道主人公怖い。これがN・T・R」
「なにいってるんですか!?」
絶望の表情で語る筵を淵が再び見下しながらゴミを見るような目を向ける。
「ついに憩ちゃんも奴の魔の手に落ちてしまった」
「どちらかと言うと魔の方はあなたなのでは?」
淵は筵を見下したままの状態で言うと、筵は跪いたまま顔を上げ淵の方を見る。
「淵ちゃんお願い、僕をお兄ちゃんと呼んで励まして・・・」
「はあ?何言ってるんですか嫌ですよ」
「いいのかい?あまり駄々をこねると、僕の世界一安い土下座が飛び出すよ?」
「いや、駄々捏ねてるの先輩ですよね?」
淵は公衆の面前で今にも土下座をかましそうな筵を抑えながら、何とか土下座を阻止する。
数秒間その無駄な攻防を繰り返して、ついに淵が折れたのか口を開く。
「わ、分かりましたよ。言いますから・・・お、お兄ちゃん元気だして」
恥ずかしそな顔でうつ向く淵を、筵はあごに手を当てて吟味するように観察した後、ため息をつき首を横に振った。
「やる気あるのかな?憩ちゃんはもっと元気系の妹だよ」
「もう一生、そこに居て下さい」
筵の言葉を受けて、淵の顔からは恥ずかしさというものが消え失せていた。
「じゃなかったら、そこら辺の女の子に言ってもらって下さい。そして警察の厄介になってください」
淵は筵を無視して数冊の本を持ちレジに向かった。
本屋の店員が本のバーコードを通して金額が表示され、お金を払う為に財布を探す、しかし何処を探しても財布が見つからなかった。
焦ってカバンの小物入れの様な所も探すが、それでも見つからず、そこで今朝、カバンに財布を入れ忘れたことに気づいた。
かと言って筵に借りるのも気が引けた淵は、硬直してしまっていた。
「はい、じゃあこれで」
筵は何食わぬ顔で自分の財布からお金を取り出して、本の代金を支払い本を受け取った。
そして本屋を出たところで淵に渡す。
「はいどうぞ」
「あ、ありがとうございます。・・・明日返します」
淵は本の入ったビニール袋を受け取り、悔しそうな顔で言った。
「返さなくていいよ。君の"お兄ちゃん"にはそれだけの価値があったからね」
「なんか批評された気がしますけど」
「あれはあくまで憩ちゃんと違ったってだけだよ」
「い、いやでも返しますよ」
淵の言葉に、奢ったつもりだった筵は頭を掻きながら、少しの考え口を開く。
「いや、お金は受け取れないかな、その代わりに・・・淵ちゃんにはこれから一時間、僕の事"お兄ちゃん"と呼んでもらう」
「・・・・・・はあ、もう分かりましたよ」
淵はドヤ顔で宣言する筵の相手に疲れたのか、しぶしぶそれに同意した。
「まあこれから一時間、筵先輩の事を無視すればいいだけの話しですね」
「さすがは淵ちゃん。早速"筵先輩"と呼んだ上にもう必勝法を見つけ出したね、末恐ろしいよ」
そう言うと筵は淵に笑いかける。その瞬間、何処かで何かが爆発する音が響き渡った。