重大発表も平常授業 2
「色々脱線しちゃったけど、日程は二週間後で一週間の予定だよ。ダメな人はいるかい?」
蜂鳥を含めたZクラスの全員が自分の席に戻り落ち着いた所で、筵は強化合宿の予定について説明して全員がそれに了解した。
「結構楽しみだな、水着とか買いに行くか?」
「オレも新しいの欲しいかも」
梨理と譜緒流手が予定について話し合っている。
「よしじゃあ、みんなで買いに行こうか」
当たり前のように筵も話に交じる。
「筵も買うの?」
れん子は首を傾げながら尋ねる。
「いや、君たちがあまり大胆なものを選ばないように見張らないとね」
「何だそりゃ?あんたはお父さんかい」
筵とれん子がにこやかに会話をしていると、淵が待ったをかける。
「えっ!?筵先輩なんで当たり前のように付いてこようとしてるんですか?」
「だめかな?」
恥ずかしそうな表情で筵が付いてくることを拒否する淵に、筵は不思議そうな顔で尋ねる。
すると梨理が立ち上がり淵の肩を叩く。
「安心しろよ。こいつはこっちが心配になるくらい性欲を絶ってるから変な事にはならねーよ」
「えぇ!?」
梨理の言葉に驚いている淵をしりめに、続いて譜緒流手がしゃべり始める、
「筵は下ネタは言うけど実際にそういう行動はしないよ。主人公補正とか無いから女子を巻き込んで転んだりしないし」
「なんでその点に関しては絶大な信頼を受けてるんですか!?」
筵の性欲関係での2年組からの絶対的信頼に淵は少し困惑した様子でいる。
「うちは筵先輩がいても全然構わないですよー。湖畔くんもいいよね?」
「そもそも、ぼくも男なのですけど行ってもいいんですか?」
梨理と譜緒流手に続き、カトリーナと湖畔の会話を聞いた淵は少し考えた後、しぶしぶ筵がついてくることに合意する。
「まあ、皆さんがそこまで言うなら・・・公序良俗に反する事はしないでくださいよ」
淵の言葉に対して筵は耳元に手を持っていって聞き取れなかったようなポーズをとる。
「えっ!?幼女陵辱?」
「アウト過ぎる。超危険人物じゃないですか、しかもダブルアウトだし!!」
「ああ、ツーアウトも貰っちゃったか。でも9回裏ツーアウトからが本当の勝負だよね」
「変なところでポジティブですねー!?あと確か筵先輩って恐ろしいほどの地獄耳でしたよね?さっき主人公補正無いって言われたの気にしてたんですか?」
「少し自分を見つめ直そうと思ってね。主人公らしく"難聴"に挑戦してみたよ。まあ60点て所かな」
「自分に対する評価甘いですね。あと確かに難聴主人公とかいますけど別に変な聞き間違えするとかじゃないですからね・・・聞きましたよね、皆さん筵先輩はやっぱり危険ですよ」
淵が皆に主張するものの周りからは、あまりいい返事が得られない。
「淵ちゃん、分かってると思うけど筵は冗談で言ってるんだよ?」
れん子が淵に対して相変わらずの真面目なツッコミ、というか説得をすると、筵はれん子に"待った"というようなジェスチャーをした。
「淵ちゃんがどうしても嫌なら仕方ない。僕は諦めるよ」
筵は窓の方に歩いて行き青空を見上げ、どこか悲しげな表情を浮かべる。
「今、娘に洗濯物は別々に洗ってと言われたお父さんの気分を味わってるよ」
「えっ?なんだかわたしが悪いみたいになってません?」
「いや、淵ちゃんは悪くないよ。僕の日頃の行いが悪いのがいけないんだ」
「いや、それは全くその通りですけど・・・・・・うぅ、分かりましたよ付いてきていいですよ」
淵は根負けして、恥ずかしそうな、あるいは悔しそうな表情を浮かべ再び筵が付いてくることに合意する。
「よーし、じゃあ授業初めようか」
筵はいつものニヤケ面で振り向き、蜂鳥と席を交換して着席する。
「放課後楽しみだね、淵ちゃん」
「だ、騙しましたね!?」
淵の声は学園中に少しだけ響き渡った。