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千宮寺新羅の最後の副業 4

 「ハーベストとは神の怒りの体現者であり、この地球という美しい星の癌に等しき人間を間引きし、数を整える為のシステムなのです。そして私、水守方翦(ほうせん)は神より、それを代弁し人々に伝えるように天啓を賜ったのです」


 新興宗教の信者達が集まった小さめの体育館ほどの空間で水守方翦と名乗る痩せ型で長身の男が壇上から如何(いか)にもな感じの言葉を吐いていた。


 そしてその空間に潜入し、信者達に混ざっていた新羅と社もそれを黙って聞いていた。


 「しかし神は非常に慈悲深い。勤勉に生き、自身を心から崇める者に対しては最大級の恩寵を与えて下さります。さあ、皆さん、我等が神に祈りを捧げようではありませんか」


 そう言うと方翦は数歩前に出て、目を閉じながら両手を左右に広げ、何やらよく分からない呪文の様なものを唱え始める。


 そして、それに合わせて信者たちは方翦が呪文を唱え終えるまで土下座をしながら、ひたすらに祈り始める。


 「全く潜入しているからといってこれは屈辱ですね」


 「ははは、確かにそうですね。まあ、ここは事を荒立てずに行きましょう」


 社はブーたれながらも仕方無しに周りの信者を真似ていた。


 がしかし、隣の新羅はと言う他の信者から見ても驚く程に綺麗な土下座で祈りを捧げていた。


 それから更に5分ほどが経ってようやく、祈りが終了して、土下座から開放される。


 「ふう、ようやくですか。全く・・・」


 「下らない・・・ですか?」


 「・・・・・・まあ客観的に見たらそうでしょう。ただ私が言うと特大のブーメランになりそうなのでそうは言えませんがね」


 社は無表情のままに、方翦に対して羨望の眼差しを向けている信者達を見渡す。


 そして、社はそこにいる人々がかつて神という存在によって救われた自分と変わらない事を自覚する。


 更に嫌悪感すら覚える壇上の水守方翦という男もまたここの信者達にとって必要不可欠な存在であり、それは自分にとっての千宮寺新羅であるという事も同時に理解した。


 もしあの頃の自分が茜さんの立場だとして、私達みたいな者が助けに来た等と言ったら、あの頃の自分はどういう選択をしただろうか、果たして新羅の元から離れたのだろうか。


 「・・・こほん、とにかく茜さんを早く見つけましょう」


 まあ何はともあれ会わないことには始まらない。


 色々思うところがあったが、社は取り敢えずその結論にたどり着いた。


 そして、再び数百人はいるであろうその場の信者達を見渡した。


 ・・・すると丁度その時。


 「水守方翦!!」


 と叫びながら一人の男が怒りに満ちた様な表情で壇上の方翦の元へ歩いていくのが確認でき、信者達もザワザワとし始める。


 そして、今にも方翦の胸ぐらを掴みにかかりそうな男は壇上にいた上級の信者と思わしき数名の者達によってギリギリで抑えられる。


 だがその男の力は強く、1人に対して数名で掛かっていても取り押さえるまでは行かずに攻防を繰り広げていた。


 「ぐぅっ・・・なにが神を崇める者には最大限の恩寵があるだ!!私の妻はお前の非常に熱心な信者だった筈だ。なのに、なのに・・・妻は十日前のハーベストの襲来で死んだんだぞ」


 男のその発言で信者達の喋り声は余計にうるさくなる。


 「・・・なるほど。それは非常に悲しい事です」


 片方の手でもう片方の手を握り込み祈る様なポーズを取りながら方翦が言う。


 「彼女は非常に勤勉な信徒でありました。故に姿を見掛けぬ日が続いて心配していました。・・・しかし、今の事でその理由が全て分かりました。・・・そう、きっと神が罰をお与えになったのでしょう」


 「な、なに?今、妻は勤勉な信徒だったとお前が言ったじゃないか!!」


 「ええ、言いました。・・・ですから罰を受けたのは彼女では無く貴方ですよ。彼女はただその側杖を食らってしまったのです。・・・おお、何という悲しき因果か」


 「貴様!!」


 飄々とした方翦の言葉に男は激怒し、自分を抑えている者達を力づくで吹き飛ばすと能力を用いて手に炎を纏わせて方翦に向かって放つ。


 だがしかし。


 「!?」


 その炎は方翦の方向に少し進んだ後に、急に方向転換する様に逆流し、男の元へと戻っていくと途端に男は自身の放った炎により火達磨になってしまう。


 「ぐっ、な、何だごれはぁ!!!」


 「天罰でしょうね。まあ当然の事です」


 「ぐっぐぁ、き、貴様、これはどう言う・・・や、止めろ!!」


 そのままもがき苦しみながら男は壇上から信者達のいる所まで落ちていくと、信者達は騒然としながら半径5mほどの円状にその男を避ける。


 そして、信者達はその光景を眺めることしか出来ず、やがて男は動かなくなり、それと同時に彼を燃やしていた炎も消えていった。

作者はドラマとかでしかそういった宗教を見た事が無いです。本当の宗教はこんな感じじゃねーぞって言われても困ってしまうので許してください。

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