魔王再臨と平常授業 14
「じゃ、行きますかー♪」
メリーは準備運動の様に身体を動かしながらそう言うと、一瞬だけ身体を高速回転させる。
そして小さかったメリーの姿からは想像ができないほど巨大な日本古来の龍の姿に変身を遂げ、上空の恐怖の王の元へと飛び立つ。
そうして空の上で対面する魔王型同士。
数秒間その様な状況が続いた後、最初に動いたのはメリーであった。
メリーは変身した龍の姿で空気を大きく吸い込むと、そのまま炎を吐く。
だが、それらは恐怖の王の纏う暴風によって防がれ決して中の本体には届かない。
「ちぇ、仕方ない」
すると、メリーは更に炎の威力を上げると同時に、龍の尻尾の方からどんどんと自分の身体を短くしていき、遂には顔の部分だけになり、結局最後は炎を吐いていた顔すら消えてしまう。
その様子に、暴風の中にいた恐怖の王も少々驚いた様に辺りを見た渡す。
すると。
「ここだよ。ここ♪」
と暴風の周りに未だ纏わり着いていた炎から声が聞こえ、その炎は薄らとメリーの顔の様な姿を形作る。
「はあぁぁぁ!!!」
そしてメリーは一気に火力を上げ炎で暴風の周りを完全に覆い隠しながら、敵を蒸し焼きにしようと試みる。
がしかし。
「あがあああぁ!!!!」
と恐怖の王も声を上げると、暴風の威力を更に高め、炎を振り払おうとする。
「ちぇ、なら···」
敵の力に押され、仕方なく作戦を変更したメリーは続いて自身を竜巻に変化させ、相手の纏う暴風を更に覆い隠してしまう。
そして、内側と外側で異なる風が入り乱れ、ぶつかり合う。
そんな攻防が数秒間続いた後、それらは弾ける様に相殺して恐怖の王の周りの暴風は剥がれ、竜巻に変身していたメリーは一時的に飛散してしまう。
だが、少しすると辺りからそよ風程度の風が一所に集まって行き、人っぽい形を作るとメリーは白鳥の様な羽を背中に生やした状態で姿を表す。
「流石、魔王型♪久々だよ。こんなに色々変身したのは」
「・・・」
少し離れた位置で睨み合うようにお互いを観察する2体の魔王。
そして今度は恐怖の王が先に動く。
恐怖の王は天候を操る能力を発動させ、メリーに向けて雷を降らせる。
ドゴォン!!!
と耳を劈く凄まじい音が響き、雷はメリーに直撃する。
だが、メリーは自身の身体も一瞬で雷に変える事でそれを受け流し、反撃とばかりに敵の体目掛けて、世にも珍しい真横に向かっていく稲光となって突進する。
そして、恐怖の王の腹側から入り、敵の身体を巡ったメリーは背中付近から飛び出し、さっまでの羽の生えた人間の姿への戻る。
「ぐぅがぁぁ!!」
と僅かに苦しそうな声をあげる恐怖の王。
しかし、流石は魔王型というべきかそれ程のダメージは入っていないらしく、直ぐに後ろを振り向き尻尾でメリーに攻撃を仕掛ける。
「おっと♪」
だが、恐怖の王の尻尾による攻撃がメリーの腹部に当たった瞬間に、メリーはそれを受け流す様に身体を切断して上半身と下半身に分かれる。
そして、その後すぐに手を少しだけ伸ばして自身の下半身を掴むと何事も無かったかのように上半身にくっ付けて元に戻す。
「ふふふ」
「・・・」
と、そんなメリーの姿を見ていた恐怖の王は何を考えたのか彼女から僅かに距離を取る。
そして。
「うがぁぁぁああ!!!!!!!!」
と今までよりも大きな絶叫を上げ、能力を発動させる。
・・・。
がしかし、それから直ぐには何も起こることは無く、魔王達の戦いを眺めていた者達は肩透かしを食らったようになりながも、何かが起こりそうな嫌な雰囲気を味わいながら緊張の時間を過ごす。
そして、それから間もなくして、恐怖の王が何をしたのか、そこに居た全員が思い知らされることとなかった。
恐怖の王の天候を操る能力で空から降り注いで来たのは大小様々な石、つまりは隕石であった。




