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魔王再臨と平常授業 8

 「ちっ、魔剣を封じておくべきでしたか」


 舌打ちをした社は睨むように筵を見ながら数枚の御札を自分の周りに召喚し、今度は義真とハーベスト人間達に向かってそれを飛ばし、張り付ける。



 「「グゥオオオオオオ!!!!」」



 すると新たに御札を貼られてしまったそれらは、そんな悲鳴にも似た声を上げる。


 そして、先程までも決して普通とは言えない目をしていたそれらであったが、新たに貼り付けられた御札の力により目は更に血走り、殺意剥き出しといった具合に筵を睨み付ける。


 そうして次の瞬間、1体のハーベスト人間が筵との距離を今までよりも数段速いスピードで詰めてきて殴り掛かる。


 「くっ」


 と筵はそれを何とか(かわ)し反撃の為、大皿喰らいを下からすくい上げるように斬り上げようとする。


 「グゥグオオオォ!」


 だが、筵に斬られるよりも前にハーベスト人間は苦しそうに叫び声を上げる。


 よくよく見るの地面を殴ったハーベスト人間の腕は在らぬ方向に曲がっていて完全に骨折してしまっている様であった。


 しかし尚もそいつはもう片方の腕を振り上げ再び筵に向かって殴りかかってくる。

 

 「あー、可哀想に」


 感情が篭っているのかいないのか分からない微妙な口調でそう言った筵は僅かにバックステップをしてギリギリの所でその拳を(かわ)すと、すぐ様、刀を振り上げてその腕を切断する。


 更に息をつかせぬ間に敵の懐へと入り込んで、心臓の付近に向けて刀を突き刺しハーベスト人間の息の根を止め、そいつが地面に倒れるまでそれを見届ける。


 そして、その後半身の状態で社の方に目を向ける。


 「これはさっきの札の効果かな?」


 「ええ、人は知らず知らずの内に力をセーブしてしまっていると言うのは有名な話ですよね。その札でそれを禁止しました」


 「ふーん、結構エグい事するね」


 「ええ、悪の組織ですから、そりゃあ外道な事もします。・・・どんな事をしてでも貴方を新羅の元へは行かせない、そういう覚悟だと理解して下さい」


 「それはそれは随分と過大評価してくれているね」


 「ふっ、天地堕としも貴方には阻まれているので当たり前のことかと・・・まあそれ以外にも個人的に貴方には恨みがありますがね」


 と、社はそこで会話を切ると手を軽く動かし、残りの者達に指示を出して筵を襲わせる。


 そして自分は新たに幾つかの御札を自身の周りに召喚して筵が隙を作るのを待つ。


 「それならこうしようかな」


 筵はこの状況が自分にとって不利な事を察すると物理的な攻撃しか仕掛けてこないハーベスト人間と義真を完全に無視して社の元へと走る。


 「ちっ、そう来ますか」


 すると社は先程まで使っていた御札とは形、色合い共に見劣りする御札を数百枚単位で大量に出現させてそれを右手に張り付ける。


 そして数段階大きい見た目になった腕で筵の斬撃を受け止める。


 「えー、そんなことも出来るの」


 と筵は少し焦りながら直ぐに刀を社の手から離し数歩後ろへと下がる。


 「ん?」


 しかし筵の焦りとは裏腹に大皿喰らいにも筵自身の体にも御札らしきものは張り付いてはいなかった。


 更にその他にも、先程まではかなり力を込めて数枚生み出していた御札を一瞬で大量に召喚した事にも違和感を覚える。


 加えてその御札の色合いなどを見ても、トレーディングカードゲームでいうノーマルカードとウルトラレアカード位の違いがある事にも気が付いた。


 その事から社の手に張り付いた大量の御札は、例えば少し筋力を上げると言ったような効果のある量産型のものであり、強く何かを禁止する力はない事が予想できた。


 と、そこまで考えを巡らせたところで。


 「逃がしませんよ」


 社はそう言い、今度は彼女の方から筵との距離を詰めて来て、掌を広げた状態で筵に殴り掛かる。


 「くっ・・・」


 いきなりの事に筵はその攻撃を大皿喰らいでガードしてしまう。


 そして、再び刀と社の腕に張り付いた大量の御札による(せめ)ぎ合いがあり、筵はその最中でニヤリと笑う社の姿を目視した。


 そうして数秒の攻防が終わり、刀と社の腕が離れる。


 「やられたか・・・」


 「やっちゃいました」


 恐らく、量産型の御札で隠していたのだろう。


 大皿喰らいの刃の部分には2枚程の御札が貼られていた。


 そして先程の推理からそれはウルトラレアカードである事が分かってしまった。

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