魔王再臨と平常授業 5
「これからどうするの筵?」
ハーベスト教団のアジトに侵入して少し散策した所で、れん子が筵に声をかける。
「まあ虱潰しに探すしかないかな。なにせこっちは恐怖の王のサイズ感もよく分からないからさ。・・・まあ魔王型ハーベストであるからそこそこ大きい気はするけどね、ただ同時に死体を盗み出せる程度の大きさでもあるって事も覚えておかないと」
また宇宙主義や大罪型のハーベストなど魔王型でも人間と変わらない大きさである例もある、決めつけてかかるのは非常に、危険であった。
「とにかく行動あるのみって事ですね」
とやる気を見せた湖畔は懐からピンクががった銀の拳銃の様な形の武器を取り出す。
それは数日前に誕生日プレゼントで宇宙主義より貰った"キューピッド"という宇宙の兵器であった。
「あー、湖畔わかってると思うけど」
「ええ、大丈夫です。貰ってから少し触ってみましたが、これ、ちゃんと銃弾をワープさせる場所を調整出来る様になっているんです。絶対に筵先輩が心配してるような事は起こしません」
湖畔は真っ直ぐに筵の方を見てそう断言してみせる。
少し触ってみたと言いつつ"絶対に筵の心配していることは起きない"と断言している所から、短期間ながら相当な練習を積んだのだろうと筵には推察できた。
更に、自分を見つめる真剣な眼差しから、その心配が完全に杞憂である事を悟った筵は笑いつつ、湖畔の頭を撫でる。
「さ、じゃあ行こうか」
「はい!」
と再び散策を再開しようとした、その時。
「随分と荒らし回ってくれたな」
「我、秩序の冒涜者に時の試練を与えん」
「・・・"住居侵入罪の輩め、ここは通さない"!と言っている」
そこに現れたのは眼帯を付けた少女、水無月フェイトと手に包帯を巻いた少年、新司であった。
「筵先輩、ここはぼくが」
「私も残るよ。この人たちとは以前に戦った事があるからね」
そうの様に筵に提案し、1歩前に出る湖畔とれん子。
そして筵はその2人の背中を交互に見て、少し考えた後、笑いかけた。
「じゃあ、頼んだよ2人とも」
そうして、2人の肩を軽く叩くと、この場を湖畔とれん子に任せて筵は走り出す。
「させるかよ!」
筵と数名の学友騎士団のメンバーが走り出した姿を見た、司が左手に黒い炎を、右手には光の球体を召喚し、彼らに向かって放つ。
「こっちこそさせません!」
しかし、その2つの攻撃に対し、湖畔がキューピッドの引き金を素早く2回引く。
すると司の攻撃は空中で突如自壊したかのように破裂し、筵達の元へと届くこと無く消滅する。
「捻れし双星の畏怖すべき遺産か(この星には無い兵器か)」
「くっ、そういう事かよ」
咄嗟に眼帯を外したフェイトの言葉により、湖畔の持つ武器が普通ではないと気づいた司は瞬時に筵達を攻撃するのを諦め、目の前の湖畔とれん子に集中する。
そして、続けて手に炎を纏わせその状態のまま湖畔との距離を一瞬で詰めるとその手で湖畔へと殴り掛かる。
その衝撃により、ドゴン!!という凄まじい爆音が響き地面が砕かれ、瓦礫が宙を舞った。
だがしかし。
「ちっ、逃げられたか。厄介な」
湖畔は自身の能力影潜む隠居により、影の世界に隠れて、完全に姿を暗ましていた。
「フェイト!頼む」
「ふっ、任せよ。万象は我が眼前にあり」
そう言うとフェイトは自身の右目の近くに右手を持っていき、コメカミの辺りを触る動作する。
するとフェイトの目の数センチ前に魔法陣のような物が出現し、数秒後そこからあらぬ方向の壁へとレーザーが放たれる。
それは大変に不可解な行動ではあったが、一度、この2人と戦った事のあるれん子にはその行動の理由が理解出来た。
「華刀、イロジカケ!」
そして、瞬時に鞭型の魔剣、イロジカケを召喚し、飛来しているレーザーに向かってそれを振るい、空中で撃ち落とす。
それからコンマ数秒後、本来レーザーがぶち当たる筈であった場所から湖畔のキューピッドを持った方の手だけが、出てきてフェイトに向かって銃を構え、放つ。
だが、フェイトはそれも読んでいたように、非常に落ち着いた動きで半歩ほど後方へと下がり、足に掠る予定であったエネルギーの結晶体の銃弾を避ける。
「!?」
「湖畔くん、警戒して女の子の方は心とか未来とかが見えるらしいからね」
「は、はい、ありがとうございました」
助けられた事についてれん子にお礼を言った湖畔はそのまま影の世界から現実世界へと出てくる。
そして影の世界という物に頼り過ぎていた自分を両頬を叩く事で戒めた。
あと何時も誤字報告してくださっている方、本当にありがとうございますorz
有難いシステムではあるけど名前も分からずお礼を言う機会も無いのでここに書かせていただきます。




