魔王再臨と平常授業 1
筵達と斎賀天理の決着が着く十数分前。
山々や森林に囲まれたハーベスト教団のある施設にて。
「本当にやるのですか?新羅?」
「まあ、これも仕事ですから」
長身の眼鏡をかけたサラリーマン風の男、千宮寺新羅は成人しているとは思えない見た目の背の低い少女、結城社に最高の営業スマイルで答える。
2人は施設に設置された機械の前に立っていて、その装置には先日盗み出した第2の魔王型ハーベスト、"恐怖の王"の死体が設置されていた。
恐怖の王の死体は非常に貧弱で痩せ細った龍が球体状に身体を折り曲げミイラ化した様な姿で、死体と言うよりは正確には仮死状態と言った感じであった。
「この装置、崩壊の天秤は異世界側から開くワープホールの発生位置をこの場所に変更する機能があり、ワープホールからでてきたハーベストは下の装置でエネルギーに分解され恐怖の王に注がれる仕組みになっているようですが、理解し難い技術ですね」
「全くですね。これだけの技術、平和的に利用すればどれだけいいか・・・」
「ははは、こちら側に渡ってしまったのが運の尽きですね。・・・どうやらこの技術は宇宙からもたらされた物であるとか、まあ最も宇宙でもタブーテクノロジーとして研究する事すら禁止されているらしいですが」
「まあ死者を蘇らせる技術ですからね。こんな物が存在したらそれこそ宇宙の法則が崩壊するでしょう。何でウチらのトップがそれをもっているのかが本当に謎ですね」
と新羅と社が雑談をしている中、1人の少女がそこに合流する。
「作戦はまだ始まらないの?」
「ああ御影さん・・・申し訳ありません。これは性質上、向こうからワープホールを開いてくれるの待つしかないのです。・・・もしかして緊張されているのですか?」
「別にそういう訳じゃないけど」
乱雑で所々ツンツンと跳ねた長髪を持った野生的な見た目の少女、御影龍子は口ではそう言っているがやはり心做しかソワソワした様子であった。
「忘れてはいないと思いますが、今回の作戦は恐怖の王が復活するために必要な千の命が無事に吸収されるまでこれを防衛する事ですからね。あまり攻めすぎないように気をつけてくださいね。あと敵に情けを掛けたりなども出来ればしないようにお願いします」
「分かってるわ」
龍子は食い気味にそう言うと少しだけ不機嫌そうにその場を離れる。
「大丈夫ですかね?御影さん」
「・・・どうとも言えませんね。まあその時が来るまでは信じましょう。仲間ですからね」
と新羅が社の質問に答えた瞬間、崩壊の天秤がワープホールの発生を感知し警報が鳴り響く。
「さあそろそろお仕事ですよ。協会側がワープホールの発生を受けてここに押し寄せてきますからね」
「ええ、防衛戦開始ですね」
新羅と社は眩しい位に光る警報を比較的落ち着いた様子で眺めながら言った。




