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模擬戦と平常授業 後編 3

 「くっ・・・なぜ魔剣を使わない」


 半透明のオークの集団に防戦一方で何度も殺されながらも決して手の内を出さない筵を見て天理は小声でつぶやく。


 「ならばこれなら」


 天理はそう呟き、同時にオークの集団に命令を出す。


 するとオーク達は武器や打撃による攻撃を止めて一斉に筵に向かってのしかかり、筵を抑えつける。 


 「いくぞ」


 それを確認した天理は大きく飛び上がって筵とオーク達が密集している場所の真上まで来るとそのまま腕を筵達の方へと向けて構えて地面に向かって急降下する。


 そして天理が1番上に位置しているオークに触れる直前、オークの集団は霞のように飛散して居なくなる。


 「おわりだっ・・・っ!?」


 しかし、消えてなくなったのはオークの集団だけではなかった。


 その場には既に筵の姿は見受けられず、代わりに小さい光の球のようなものがふわふわと浮いているだけであった。


 そして、その光の球は高速で移動して空中に居る天理の真後ろに陣取る。


 「いやいや、危うく圧死するところだったよ」


 「!?」


 急に光の球から声が聞こえ、それに驚き振り返るのが少し遅くなる天理。


 ようやく自体に気づき振り返った時、そこには光の球はすでに無くなっていて、代わりに先程破壊されたサバイバルナイフとは違う短剣を持った筵が存在し、今にも斬りかかろうとその短剣を構えていた。


 だがそれだけならばさっきのサバイバルナイフの時と状況が一緒であり、簡単に短剣がへし折られてしまう筈であった。


 がしかし天理は気づいた。


 いつもの様に半笑いを浮かべている筵の口には釘くらいの大きさの小さい棒が咥えられていて、短剣を構えている方とは別の方の手で手榴弾を見せつけるように持っている事に。


 「くっ!」


 そしてほぼ同時くらいのタイミングで短剣が天理の体に触れ、筵の手に持った手榴弾が爆発を起こした。


 巻き起こる爆発、爆音。


 そしてコンマ数秒で空中でモクモクと増殖する爆煙の中から1人の男と、光の球体が飛び出してくる。


 それから、それらは互いに少し離れた位置の地面に着地してお互いの姿を確認し合う。


 彼らを見比べると、どちらとも無傷である事には変わりは無かったのだが、天理の方は若干息を荒くしていた。


 「こんな疲れるだけの試合は一旦やめにしないかい?・・・というかこんなよく分からない能力を持つ僕よりも分かりやすい強さのウチのリーダーを先に倒した方が効率的でいいと思うけど?」


 「・・・疲れるだけなどと白々しいことを」


 そう唸るように言った天理は少しだけ時間を開けて言葉を続ける。

 

 「・・・その力を持っているお前なら分かるだろ?あの子の能力は危険だ。この・・・こんな世界で自由に居させてやる事など出来ない。なのに何故あの子を連れ去った?それが如何に危うい事か分かっているのか?」


 死んでも蘇る能力、そんな人並外れ、人の道を外れた能力を使い続けても息1つ乱さない筵を目の当たりにした天理はそれが自身の妹である孵と同系統の能力であると察したのかそのようなことを口にする。


 「・・・」


 そんな天理の様子を無言のまま少しの間観察した筵は、雰囲気と直感で天理が録音などをしていない事を感じ取り、あやふやながら返事を返す。


 「まあよく分からないけれど、それは大丈夫だと思うよ。うん、根拠は無いんだけどね」


 「・・・」


 無言のまま、筵の言葉を比較的冷静な顔で聞く天理。


 天理のその冷静さは、恐らくは孵が誘拐されてから今までの間にそれらしい犠牲者が出たと彼の元に情報が入っていない事から筵がその点は配慮していると予想を立ててのものだったのだろう。


 「僕からも質問していいかな?」


 少しの沈黙の後、打って変わって今度は筵が天理に疑問を投げかける。


 「・・・なんだ?」




 「どうして君はそんなにも僕に魔剣を使ってほしいんだい?」

 

 「!?」


 その質問に驚き絶句する天理だが、それに構わず筵はしゃべり続ける。


 「いや僕ってすごく地獄耳だからさ、さっきの君の"何故魔剣を使わない?"みたいな独り言が聞こえちゃったんだよね。・・・それにさっきから執拗に僕の能力を封じようとして来るしさ、だから何かの目的があるのかなーってね」


 「っ!それは貴様に苦痛を与えるために」


 「ふーん、でもさっきから君は自分の妹が安全である事を確信していて、尚且つこの模擬戦開始までの間に犠牲者が居ない事から9割はその点も配慮されている事が分かって、実はかなり冷静なくせに無茶苦茶に怒っているフリをして僕を目の敵にしてるよね?そう、まるで何か本当の目的を悟られないようにしているみたいにさ」


 筵はそう言いつつ、顔を上げて何気なく自身を撮影しているドローンに目線を向ける。


 「よかったらそれらも含めて理由を教えてくれないかな?」


 そして再び目線を天理の方に向け首を傾げた。

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