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天使再臨で・・・ 6

 「申し訳ありません、筵様。私がついていながらこのような失態を」


 「いやいや、僕も見ていたから知ってるよ。まさか聖剣を使ってくるとわね」


 筵は漆黒の甲冑を着て、漆黒の馬に乗ったハーベストに返事を返す。


 黒甲冑のハーベストの乗っている馬には気絶している(ふち)とかぐやが乗っている。


 「斬人くんはこのままその2人を安全なところに送ってくれるかい。・・・誇り高き騎士である君に、敵前逃亡のような真似をさせてしまうのは忍び無んだけど、許してほしい」


 「いえ、主の命令に従うことこそが、我が騎士道です。それでは失礼します」


 そう言うと斬人の乗る馬は天高く駆け上がり遠くへと消えていった。


 


 


 最初、淵の能力で天使型ハーベストの能力を封じることにより戦況は有利だった。


 しかし、敵の集団のリーダーである天使が聖剣を発動させた事で状況はひっくり返ってしまった。


 淵とかぐやが意識を失ってしまい、それを安全な場所に送るために斬人が抜けてしまった学園側は、絶望的な状態となっていた。


 斬人が敵前逃亡を図ったという噂がさらに学園側の士気を下げているようだった。


 「さあ、この四天使の1人ザクスエルと、神より与えられし聖剣、ノゥカラトスの前に跪くがいい」


 天使型ハーベストのボス、ザクスエルと名乗る誇り高い貴族のような容姿の天使は聖剣を構えながら叫ぶ。


 ザクスエルの前には満身創痍の状態のスチュワートが剣で体を支えるようにして何とか立っていたが、意識はほとんど無いようであった。


 「同じ聖剣の持ち主でも、私と家畜ではここまでの差があるのですよ」


 ザクスエルは笑いながら聖剣を構えると数十の光の剣の様なものが出現する。


 そして、十数本の光の剣は高速でスチュワートに向って射出された。









 高速で飛来する光の剣は何かに刺さり鈍い音を上げた。その全ての剣をその身に受けたのはスチュワートの前にかばうように割り込んできた(むしろ)だった。


 「と、刀・・・・牙・・?」


 スチュワートは朦朧とする意識の中、そう呟くと倒れ込む、筵はそんなスチュワートの方を向き苦笑いをしながら、能力により一度死んで、再生をする事で傷を回復させ、ザクスエルの方向を向き直す。


 「聞いたかい?今、違う人の名前言ったよ。別に、この人のこと好きとかじゃないけど悲しくなったね」


 突然、現れた謎の男に戸惑っているザクスエル。構わず筵は話を続ける。


 「でも、この人が死んだら僕の大切な人も悲しむと思うんだ。あと君をこのままにしておくと、さっき逃げていった人が敵前逃亡で処罰されるかもしれない」


 筵は何とかしてスチュワートを助けてしまった、自分らしくない行動をしてしまった言い訳を探そうとしているようだった。


 「いや、認めよう。僕の中にはまだ正義の心みたいなのが残ってたんだね。気付いたら体が動いてたよ」


 「な、何をさっきから訳の分からないことを言っているのですか?」


 「気にしないでくれ、でも、この人は殺させないよ。僕の正義の心ってのに誓ってね」


 筵の手元に禍々しい闇のようなものが集まって日本刀のような形になった。


 「塊刀(かいとう) 大皿喰(おおざらぐ)らい。まさか、初めて振るう理由が、自分の正義のためとはね」


 「それは魔剣か?、先ほどの能力といい、お前いったい何者だ?」


 「僕は本田(ほんでん)筵、この世界で一番英雄から遠い男だ」


 筵はいつもの腐った目とニヤケ面をザクスエルに向けながら高らかに宣言した。






 「大体の理由は把握しているけど、あえて聞こうか?君は一体どういう理由でこの世界に来たのかな」


 筵は大皿喰らいをザクスエルに向けながら問いかける。


 「愚問だな、この世界の資源を搾取し下等生物たちを家畜とするためだ。神の使者である我々に支配されることを貴様ら下等生物は至福の喜びとすべきなのだ」


 「うんうん、まったく、その通りだね」


 目的を告げるザクスエルに対して、筵は可哀想なものを見る目を向けながら優しく肯定する。


 「この世界には、無尽蔵のパワーを持つゴルガエル、雷を司るミューカエル、サポートと防御力に特化したフォトロエル、そして、この私、ザクスエルを加えた四天使を筆頭とする500の精鋭が送り込まれている。周りの戦況を見てみろ」


 筵が周りを見渡すと、7:3ほどの感じで学園側が押されている印象を受けた。


 「戦況も我らの軍が圧倒的有利だ。何故かわかるか?」


 「羽があるからかな?」


 「違うな、人質だよ。ここに徴兵されている者達の家族を人質に取っているのだ。死んでも手柄を挙げなければ家族諸共処刑される」

 

 「なるほど、それは住みやすそうな世界だね」


 筵は引続き、哀れみの笑顔を向けながら答える。


 「しかし、それだけではない我々がこの世界に来ると同時に、もう一体恐ろしい兵器がこの地に舞い降りた。そいつは強者に引かれる習性があり、この辺りで最も強い人物を殺しに向かっている」


 ザクスエルの一人演説を聞いていた筵は、この辺りで一番強い人物という言葉を聞いて自分の母親を思い出した。


 「それなら問題ない、その兵器とやらは、この辺りで一番強い人によって恙無(つつがな)く倒されるし、君は僕によって倒される」


 筵の台詞を聞きザクスエルは笑いをこらえきれずに吹き出した。


 「はははは、お前が、私を倒す?この四天使の統括にして、進行軍副隊長であるこの私を?」


 筵はザクスエルの態度より、彼の言った副隊長という言葉に引っかかりを感じた。


 「ああ、倒す気だよ。副隊長止まりの君をね」


 筵はあえてザクスエルを怒らせる為に挑発を加える。筵の嫌味な言葉に軽く怒りを覚えたザクスエルだったが、すぐに冷静さを取り戻す。


 「小僧、これから死ぬお前にいい事を教えてやろう。我が本国では今、進行軍隊長と5万の兵が出撃の準備をしている。先行した我々の任務はこちらの世界からもワープホールを開くこと、こちらと本国、同時にワープホールを開くことにより巨大なワープホールを作成する。そうしたあかつきにはこの世界に5万の軍が攻めてくるぞ」


 ザクスエルな邪悪な笑みを浮かべながら演説を続ける。


 「もっとも、我々の任務はもう終了している。後は向こうからワープホールを開くだけだ。もうお前にはどうすることも出来ない」

 

 その言葉を聞いた筵は小さくほくそ笑んだ。


 筵の絶望した表情が見たかったザクスエルは、少し的外れな表情を浮かべる筵に戸惑った様子を見せる。


 「どうした?恐怖で発狂でも起こしたのか?」


 「いやいや、安心しただけだよ。危うく僕が英雄になってしまう所だったからね。どうやら、この世界って奴はどうあっても僕に命運というのを託してくれないらしい」


 筵は約束をたがえて異世界に行ってしまった、いけ好かないあのイケメンの顔を思い出していた。そして再び大皿喰らいをザクスエルに向ける。


 「世の中には、死んだ方がいい奴もいる、例えば君、例えば僕。さあ始めようか、この世界の、もしくは君の世界の利益にしかならない殺し合いってやつを」

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