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テロ計画で休日を・・・ 9

 それから、2本の聖剣を持った男と2本の魔剣を持ったは男は、お互いの剣をぶつけ合い、激しい打ち合いを続けている。


 「凄いものだね少年。俺のこの魔剣は斬ったモノに死に値する事象を(もたら)す・・・筈なんだけどその剣は刃こぼれ一つしない様だ」


 「□□□」


 「なるほど、それは厄介な力だ」


 刀牙の新しい聖剣、十握剱(とあくのつるぎ)は異能に対して高い耐性をほこる剣であった。


 故に打ち付けあっていた、触れたものを殺す剣である寝首掻きの能力は失われてしまい、結局の所、普通の小太刀と刀の打ち合いと変わらなくなっていた。


 「それなら・・・」


 筵はその打ち合いを()が悪いと踏み、寝首掻きを足元に向けて投げ、それと同時に後方に向かってジャンプする。


 すると寝首掻きの刺さった地面は、それを中心とする数m程の大きな綻びを生じて、刀牙を乗せた状態で崩れる。


 「□□□!!」


 「はあ・・・」


 筵は寝首掻きにより作られた大穴から、少し離れた所に着地するとため息をもらし、刀牙と共に下の階に落ちていったはずの寝首掻きを再び自身の手元に呼び戻す。




 「刀牙!!」



 それからすぐ、そのように叫ぶかぐやを初めとする何人かの声がその場に響き、筵は不意に辺り見渡す。


 その時。


 「!!」


 振り返った筵のすぐ目の前には、両手に丁度収まるサイズの何かが吹き飛ばされて来ていて、筵は不意に持っていた魔剣を手放し、反射的にそれを受け止める。


 「フランくん。さっき、あんなに強キャラ感を出していたのに何で普通に負けてるんだい?」


 「し、仕方ないでしょう。殺すなと言われてましたし、それに、もともと私も私の能力も戦闘向きではないんですよ」


 「ははは、まあ、いいか。お陰でちょっと頭が冷えたからね」


 筵はそう言って自分と刀牙が戦っていた戦場を見渡す。


 その空間は床や壁の至る所に穴が空き、机は倒れ、料理は床に散乱していて、酷い有様であった。


 それから、筵はフランを下ろすと床に落ちている2本の魔剣を手に取り、収納する。


 そして刀牙の落ちた穴から下を見下ろし、埃にまみれているものの、無傷の状態の刀牙とその横に駆け寄るかぐやに目を合わす。


 「大変、私事ですまないけど、そろそろ君たちの応援が来てしまいそうだから、私達はこの辺で失礼させてもらうよ」


 筵はそう言い、更にそのあと少しだけ間を開け、白々しく話を続ける。


 「ああ、でも君がこれから戦うことになるであろう、千宮寺神羅はそう甘くは無いよ。彼は僕より強い・・・のかはわからないけれど、それでも明らかに僕より容赦は無く、そして、恐らく僕のように優柔不断でも無い。彼はそんな律儀で真面目で、まあ悪くいえば融通が効かない、そんな男だ。だからこそ、きっと君に3度目のチャンスは無いだろう。まあせいぜいその新しい力を上手く使うことだね」


 そのように言い残し、フランとともに去ろうとする筵。


 「□□□!!」


 その後姿に向けて、刀牙が"貴方はいったい誰なのだ"と訪ねる。


 「ははは、見ての通りこっちはマスクをして素性を隠しているんだよ?そんな質問に答えるはずが無いだろ?・・・うーん、まあでも、そうだね・・・」


 筵は顎に手を当て、少し考えるフリをした後で、自身の左手を刀牙に向け、最初から用意されていたあの名前を名乗る。


 「僕の事は、"世界の認めぬ超個人的な愛"その化身にして、象徴。"3つ指輪の男"と、そう覚えておいてくれ」


 「□□□!□□□・・・」


 「ははは、まあ、それも"超個人的な愛"故さ・・・ああ、ガッカリさせたらすまないが、君に対するじゃないよ」


 自分を強くする為に立ち塞がったのか?と訪ねる刀牙の多少の感の良さに、少しだけ驚いた筵だったがそれを笑って誤魔化して切り返す。




 「私は2度と君のもとに姿を表さないかも知れない、だから、これだけは言っておこう。この世界には100%明確な正義も正解も存在しない。しかし、そんな世界で唯一1つだけ、その矛盾を打ち破り、正しいと言い切れるものが存在する。・・・それは自分の行いをその信念を全肯定し、正しいと信じる自分の心だ。君も私も、千宮寺神羅も、あるいは世界のすべて人間が、そう信じている自己愛に満ちた者の"ただ一人"ある事を忘れてはいけない。そして、君が斬ってきた君の目から見たら悪だった者もそうであった事を忘れてはいけない」


 筵は穴の下の刀牙にそう言い残すと振り返り、矢式格と大瀧を順に見て、自分の打ち破った"正義"に対して心の中で哀悼の意を捧げると再び壇上の自分の降りてきた穴の近くにフランと共に戻る。





 その時丁度、逃げた者達の通報により駆けつけた、見るからに日本の能力者ランキングのトップに入っていそうな風格のあるビジュアル系のバンドマン風の男、白い学ランを着た少年、ゴスロリに身を包んだ少女、2mはあろうかという大男ら数名が扉を派手に打ち壊し、会場に入ってくる。


 筵はそれらのとても面倒臭そうで意識高げな個性に溢れた者達を見て、早めに戦いを切り上げた自分を心の中で賞賛する。


 そして、筵は会場に最初に来た時の、頭のおかしいテロリストを再び演じる。


 「え~、私はこの日本の腐敗の満ちた能力者達による社会の運営を叩き潰し、切り刻み、燃やしつくして、玉ねぎ、人参などと共にデミグラスソースでじっくりコトコトと煮込んでやりたいと思っております。えー今日は是非、"3つ指輪の男"という名前だけでも、覚えて帰ってください」


 筵はその謎の演説を終えるとフランに指示を出し、用意していた煙幕を使って、辺り一面を煙で充満させ、目くらましをしている隙に姿を暗ました。

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