表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/256

天使再臨で・・・ 2

 「ついに始まるのか」


 梨理は警告音が鳴っているスピーカーの方を見て呟く。


 先程まで机に突っ伏していた筵もその音を聞くと教卓の椅子から立ち上がった。


 「みんな、今日に限っては平常授業は中止だ。避難しよう。さあ貴重品だけもってシェルターに向うよ」


 筵は淡々とした態度で財布と携帯をカバンから取り出した。その行為を見てZクラスのメンバーは硬着している。


 「天使型ハーベストは間違いなく、この学園を狙ってくるんだ。もしかしたら学校ごと破壊されるかも知れないよ」


 「いや、そうじゃねーだろ」


 少し焦った様子の梨理は筵を呼び止める。


 「なに?淵ちゃんが戦ってるんだから、僕達もここで戦うべきだって言いたいの?」


 「ああそうだよ」


 「淵ちゃんは学友騎士団が守ってくれることになってるよ」


 その筵の言葉に梨理が激怒し、筵の胸ぐらを掴んだ。


 「おいてめー、見損なったぜ。てめーは命をかけて守るって誓ったやつを、違う誰かに守らせて安心するようなやつだったのかよ」


 「君たちを危険に晒したくはないんだ。淵ちゃんも心配だけど向こうには護衛がついてる。いくらでも命はかけられるけど身体は一つしかないんだよ」


 筵はいつもの口調で梨理に説明するかのように言ったが、それがかえって梨理の怒りを増大させてしまった。


 それからしばらく、筵と梨理の意味の無い言い合いが続き、どんどんと埒が明かない状況になって行く。


 そんな当人同士ではどうしようもない状況に対して、そのやり取りを不思議そうに見ていたれん子が、まさしく鶴の一声をかけた。


 「でも、筵は私達を安全な場所に避難させたい。私達は筵に淵ちゃんを助けに行って欲しい。この二つって、全く矛盾してないよね?」


 れん子の言葉で譜緒流手(フォルテ)は何かに気づいたように手を打ち鳴らした。


 「なるほど、れん子はやっぱり天才だね。そうと決まれば準備しないと。ああ、あと避難所の中でも心配とか言ったら怒るからね」


 譜緒流手は貴重品を全て持ち、避難所に行く準備しながら言った。


 「おい、あたしも淵を助けに行きてーんだけど・・・」


 「往生際が悪いですよ。淵を助けに行くのは筵先輩に託しましょう」


 「梨理先輩も早く準備してください」

 

 梨理は筵の胸ぐらを掴んでいる腕を解き、Zクラスのメンバーに主張するが先程まで寝ていたはずのカトリーナや湖畔に諭される。


 「まあ僕も梨理ちゃんも、結局、れん子ちゃんには勝てないって事だね」


 「ああそうだな、・・・淵に何かあったら死ぬこと以上の苦しみを与えるからな。具体的にはあたしら全員、Zクラスから家出する」


 梨理は筵の胸のあたりを軽く殴って気合をいれた。


 「これは身も引き締まるね」


 その時の筵はいつの間にか、いつものニヤけ面を取り戻していた。




 

 

 

 

 それから数十分後、Zクラスのメンバーは学校から一番近い商店街のシェルターの前まで避難していた。


 そこには既に多くの人が避難していて、ハーベストの襲来というものが地震や竜巻のような自然現象と同じように恐ろしいものなのだと、再認識させられる空間であった。


 「じゃあ、行ってくるよ。僕に何が出来るかは分からないけどね」

 

 全員をシェルターの前まで送った筵は、別れをつげて走って学校の方へと向かっていき、筵が見えなくなるまで見送ったZクラスのメンバーもシェルターの内部へと入っていった。





 「筵の奴も結構、頑固だよな」


 梨理はシェルター内で湖畔とカトリーナに向かって話しかけた。その時の顔は、憧れのヒーローを見ている時のようにキラキラしていた。


 「ところで、譜緒流手とれん子はどこいった」


 「さっき、トイレに行くとか言ってましたけど」


 「おう、そうか」


 梨理の質問に貴重品と枕を抱えたカトリーナが答えた。



 10分後・・・・


 「アイツらぜってー、淵のところ行っただろ」


 「まだ、分かりませんよ。たくさんの人が避難してるからトイレが混んでるんじゃないですか」


 今度は湖畔が引きつった顔をした梨理に答えた。


 「いいや、あたしの勘が言っている奴らはあたしを裏切った」


 梨理も行きたい気持ちはあったが、この時点で梨理にはカトリーナと湖畔を守るという任務が生まれてしまったため、このシェルターを離れることが出来なくなってしまった。


 梨理はシェルターの無機質な天井を見ながら、しぶしぶながらもその任務を真っ当することを誓った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ