テロ計画で休日を・・・ 3
フランの要求に対し白髪の少女、白井繭里は少し考え、そして口を開く。
「私、任務があるから・・・」
繭里はそう言って断ろうとする・・・がしかし、その際にチラリとフランの方を見ると、フランは首を傾げ迫真の演技の上目遣いをしていて、繭里は断る事への罪悪感を覚える。
「うーん少しだけね」
「うん、ありがと繭里お姉ちゃん」
「あれ?私、名前言ったっけ?」
「言ってないよ。だけどお姉ちゃん有名だもん」
フランはそう言って満面の笑みを浮かべる。
それからフランと繭里は自己紹介などの小話をしながら共に歩き、学友騎士団のメンバーと合流する。
フランがその様な茶番に興じていると、ワイヤレスのイヤホンに筵からの通信が入る。
「フランくん、そう言うのは程々にね」
「くひひ、分かっていますよぉ。情報収集を兼ねてですから、貴方も、もしかしたら彼と戦うことになるかも知れないんですからね?」
すると、フランは服に取付けてある小型カメラを動かし、学園の英雄の姿を捉えると、同時に筵のパソコンにその姿が映し出される。
「嫌なこと言うな~・・・おっとフランくん、前、前」
画面に映った刀牙を半笑いを浮べながら見ていた筵は、彼がフランに近ずいていることに気づき、注意を促す。
「□□□□□□」
そして、刀牙はフランに向けて優しく微笑み、歓迎の言葉を告げた。
そんな彼の眩しすぎるほどの好青年ぶりにフランは思わず演技を忘れ、ドン引きしてしまったが、立て直し、愛想笑いを浮かべる。
それから、暫く学友騎士団の輪の中で彼らの会話に、聞き耳を立てていると、司会による、間もなくパーティを開始するという旨の放送が入り、他の参加者たちはぞろぞろと会場の中へと入っていく。
「さあ、私達も行きますわよ」
殆どのパーティ参加者が受付を終え、会場に入ったのを確認したスチュワートが刀牙たちに声を掛ける。
そして、全員が入室すると、会場の3つほどある出入り口は、協会側の用意した黒服のスタッフによって閉ざされる。
会場の中は多くのテーブルが用意されていて、その上には、見るからに高級そうな料理の数々が並べられていた。
「この度はワープホールの新技術に関する報告会にご参加頂き誠にありがとうございます・・・・・・」
司会がその様な前口上を述べ、その後にまずは食事を取るように勧め、歓談を促す。
刀牙たちも警備という任務ではあるものの、一応、招待客であるため、周りを警戒しつつも司会の言葉に従い料理を手に取る。
「ねえ?お姉ちゃん達はそもそも何の警備をしているの?」
「うーん、わかんない。でもスチュワートが言うには、さっき言ってたワープホールの新技術って言うのを守るらしい。でもスチュワートもどんな物かは知らされてないんだって」
「へえ~」
食事を取りながらその様な話をして、20分程が経つと再び司会が喋り始める。
「それではここで、ワープホールの新技術について、当プロジェクトのプロジェクトリーダーである大瀧室長よりご説明をお願いしたいと思います」
皆の注目が集まる中、司会の呼びかけに答え、1人の二十代後半ほどの女性が壇上に上がって行き、お辞儀をする。
その女性を見て、フランは少し眉をひそめ、繭里は若干怯えた様な表情に変わる。
「なるほど彼女ですか・・・」
「いったい誰なんだい?」
フランの呟きに、筵が聞き返す。
「ああ、昔、私の助手だった方ですよ。私が地位をおわれて以降、彼女が跡を継いだようですねぇ。・・・まったく本当は彼女も共犯のようなものなのですが。あーあ、可哀想に繭里さんも怯えているではないですかぁ」
自分を棚に上げたフランは身体を震わせている繭里をニヤついた表情で眺める。
「では私からワープホールの新技術についての説明を始めさせて頂きます」
大瀧はそう言うと、新技術のワープホールの原理などを軽く説明し、早々と切り上げると、続けて筵が以前、矢式格より説明を受けたプロジェクトハーベストなる計画について話し始めた。
だいたいの説明が終わる頃には、会場は、参加者たちのその計画について話す声でうるさいくらいの雑踏に包まれていた。
そして、それから大瀧は8割が賛成に傾いている賛否の声が少し収まるタイミングを見計らって再び口を開く。
「そして、今日は実際にその大規模なワープを可能とする装置を会場に持って来ています」
大瀧はそう言うと、アイコンタクトで部下の研究員に指示を出し、壇上に3m程の布を被された何かを用意させる。
「・・・それがこちらです!」
そして、その声と共に布は剥がされ、装置が白日の元に晒された。




