テロ計画で休日を・・・ 2
それから筵は上の階に上がり、会場の丁度、真上に位置している部屋に入る。
その部屋は資料室のようになっていて、人の気配はなく色々と準備するには最適な状態であった。
そして、準備を済ませて待機すること数十分。
フランのいる下の階にはどんどんと人が集まりあり、開宴数分前になると、筵はどこかに隠れて人が集まるまで待機していることになっているフランへに小型のマイクのようなものを通して連絡を取る。
「さあ、フランくんそろそろ頼むよ」
「はあ、やっとですかぁ。トイレで何分待機させるんですか」
「・・・まさかとは思うけどフランくん、男子トイレに入ってないよね?」
「いえ、その辺はぬかりありませんよ。・・・全く、こっちは女性の排泄行為に興奮するアブノーマルな性癖持ってないんですから苦痛でしか無かったですよ。・・・ああ、ただ恐怖による失禁とかなら興奮しますがね」
「それは更に上を行くアブノーマルさだと思うけど、まあいいか。・・・それじゃあ、よろしくね」
耳につけられたワイヤレスのイヤホンから聴こえてきた筵の合図により、フランは立ち上がり、トイレのドアを開ける、するとそこには、パーティの前の最後のチェックとばかりに、鏡の前でメイクを直している女性の姿が見受けられる。
フランはその女性達を横目にトイレを後にして、通路に出ると筵が下の階のパーティの映像を見れる様に自身のドレスについたボタンのような形のカメラを作動する。
「どうです?映ってますか?」
「うんバッチリだね・・・見たくないものまでハッキリ映ってるよ」
「はい?どうしました?」
「フランくん、前見てみ」
「・・・うっ」
そこには、学園の制服を来た数名の人物が確認できた。
「僕は急に体調が悪くなってきたよ。帰っていいかな?」
「そんなもの、あなたは、死ねばリセットでしょう。私を置いて逃げるなんて許しませんよ」
フランの前方には学園を代表する生徒達の集い、かぐや、スチュワートなどの所属する学友騎士団の姿があった。
そして、もちろん、そこにはあの人物も存在していた。
「どうやら僕の命運もこれまでの様だね。彼の物語では、僕はきっと彼に倒されるテロリストAとかそういう感じのエキストラとしてエンディングに名前が乗ることになるだろう・・・」
「何をあきらめてるんですかぁ?・・・で、私はどうします?作戦通りでいいんですかぁ?」
「そうだなー、まあ、とりあえず怪しまれない程度に、日室くんたちの偵察も頼むよ。・・・いやいや、別に日室くんたちがいた所で何ら支障はないんだよ~。それにフランくん、僕はね、ゲームをやる時はいつもハードモードでクリアするんだ~、ははは」
「はあ・・・了解しましたよ」
棒読みで語る筵にフランはしぶしぶ了解し、ファーストコンタクトとしてゆっくりとした足取りで、一度、彼らの横を通り過ぎる。
「なんで私たちがこんなパーティの警備なんてしなくちゃいけないわけ?」
「仕方ないでしょう、協会からの御達しよ。それに半分はワープホールの新技術を私達にも見せるという意味合いも大きいわ」
「見せてどうするんですか?会長」
「さあ、でも、もしこの技術が実現したら私達のしなくてはいけない嫌な仕事がまた増えるかもしれないって事ね」
フランが彼らの横を通った数秒間、学友騎士団の面々からは、その様な会話が聴こえてくる。
そして完全に通り過ぎ少し行った所で、フランは会場の外のソファに一度腰掛ける。
「どうです?聞き取れましたかぁ?」
「ああ、残念ながら、彼らが遊びに来た訳では無いということが分かってしまったよ」
「作戦はそのまま行きますか?」
「うーん、そうだなー」
予想外の事態に対して、筵とフランが作戦を少し練り直そうとしていた時。
「あなた、迷子なの?」
少しおっとりとした、それでいて淡々とした様な声がフランに向かって掛けられる。
「?」
フランが驚き顔を上げると、そこには学園の制服に身を包んだ、白髪の少女の姿があった。
その少女は、フランと、いや茶川風土と深い因縁のあり、今は日室刀牙のグループの一員であった。
「くひひ・・・」
その少女の姿を見たフランの心の中では、邪悪な感情が渦巻きだし、内側に留めておく筈だった笑みがつい溢れてしまう。
「お父さんは仕事の話があるみたいだから、暇なんだ~、お姉ちゃん。少しお話ししない?」
フランは声を作り、口調も年相応の少女を装うと、可愛らしく首を傾げてみせた。




