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人の噂と平常授業 3

 そして、翌日。


 前日に宇宙主義から借り受けた、監視カメラのデータを隅々まで観察した筵は、それより導き出された事実に対し、取るべき措置をほぼ完了させ、実質徹夜ながら、眠そうな様子を一切見せずにケータイを片手に登校していた。


 「おはようございますっす。本田さん」


 「やあ、蛭間さん、おはよう」


 後ろから駆け足で寄ってきた笑は元気よく筵に挨拶し、筵も片手で持っていたケータイの画面を一度確認した後、ポケットにしまい、振り返るといつも通りの様子でそれに応える。


 「昨日は色々あったみたいだけど大丈夫だったかい?」


 「あ、は、はいっす。美宇宙さんから聞いたっすか?」


 「ああ、でも、見たところ怪我はないみたいだね。よかったよかった」


 「ええ、私自身は特に何もされてません。された事と言ったらカメラを壊された事くらいっす・・・ああ、でも聞いてくださいっす。それを美宇宙さんに言ったら、あっと言う間に直してくれたんすよ。それにこれ、前よりも数段階機能が向上していて、ビックリっすよ」


 「へー、それは素晴らしいね」


 筵は笑のカメラを直している宇宙主義の姿を思い浮かべ、喜ばしく、それでいて複雑な心境で笑う。


 そして、筵と笑の2人はそのまま学園の中へと入っていき、それから暫く歩くと、筵がふと口を開いた。


 「ああ、そう言えば蛭間さんに頼みたい事があったんだけど、お願いしてもいいかな?」


 「なんすか、また新聞のネタにされたいってことっすか?」


 笑は冗談半分でそう言うと、筵はその冗談に対してパチンと手を叩く。


 「ズバリそれだよ。いやー、昨日、ZクラスとAクラスが荒らされる事件があったでしょ?流石に治まりがつかなくなっているから、新聞で弁明して、どうにか火消しできないかなと思ってさ」

 

 「成程、まあそうっすね。私も自分で書いといて言うのもあれっすけど、少し手応えがあり過ぎて引いていた所だったんす。・・・よし、分かりました。私で良ければお手伝いさせてくださいっす」


 「ありがとう。じゃあ早速お願い出来ないかな?ここだと人が多くて落ち着かないから、Zクラスの教室の方に行こうか、あそこならZクラスの子達以外は殆ど誰も来ないからさ」


 筵は周りの登校中の生徒を見渡すと、Zクラスの方を指さし、笑もそれに同意する。


 それから、少し距離あるZクラスまで、宇宙主義が直したカメラの話をしたりと、世間話に花を咲かせながら歩きていき、ようやくZクラスの教室の前までたどり着くと、筵は急に立ち止まる。


 「ん、どうしたっすか?」

 

 「そう言えば、さっきも話したZクラスとAクラスの教室を荒らした犯人だけど、見つかったんだよね」


 「へー、よかったっすね」


 「うん、それで結局、犯人は5人組の男女だったんだけど、その打ち分けが3年Eクラス女子、3年Cクラス男子、2年Dクラス男子、2年Fクラス男子、そして、1年Dクラス女子だったんだ。・・・でも凄い不思議なことなんだけど、この5人、全員面識が無かったんだ」


 「ほほう・・・それは興味深いですね」


 「ああ、そうだろ、僕はまるで、AクラスやZクラスに対して思いの強いものが、何かに操られるように集まってそれを行った様に見えたよ。・・・そして、同時に、この事件にはそれをさせた黒幕が居るのでは無いかと思った」


 「・・・」


 「僕はその正体を知るため、現在も何者かに操られている状態だった2年Dクラス男子に実験に強制参加してもらい、マッドサイエンティスト監修の元、脳を調べさせて貰った。するとある人物によって彼らが操られていた事が分かったんだ・・・」


 筵はそう言うとポケットからケータイを取り出し、笑に見せる。


 そこには、大雑把な学園の地図のようなものが表示されていて、フランからリアルタイムで送られてくる画面のデータには、この携帯の場所を示す矢印の隣に赤い丸が点滅していた。



 「犯人は君だね。蛭間笑さん」

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