スキャンダルと平常授業 5
「ところでどうしてポリたん程の実力を持った能力者がCクラスなんだい?君ならAクラスだって足りないくらいだろ?」
筵は改めて学園の制服に身を包んでいる宇宙主義を見るとそう問いかける。
「我々の目的は人の心、感情とはどういうものかを学ぶ事。必要以上にこの星の防衛に手を貸したりはしません」
小さく笑いながらドヤ顔混じりに、それでいて冷然とした態度で答える宇宙主義。
それに対し、だったら普通の学校の方が良かったのではないか?という疑問は生じたものの、そこをわざわざ追求することを可哀想に思った筵は、それらを飲み込むと話を切り替える。
「いやーでも早速友達が出来たみたいで安心したよ。そっちのほうの目的も順調じゃないかい?」
「友達?・・・ああ蛭間さんですか。しかし、彼女は我々の友人にはなれないでしょう?力が違いすぎます。住む世界が、いや、星が違うと言った感じですね。・・・それにそもそもどうして我々が友人を作りたい前提になっているんですか?”魔王級の力を持つ我々が友人を作りたいという目的のために能力者の学園に入学するわけが無い”でしょう?少しは考えてください」
「そのまま主人公最強系の小説のタイトルに出来そうな口語長だったね・・・でもポリたん、僕が言うのも難だけど友達関係は力が強いとか、能力が優れているとかではないと思うよ。そこには、きっとポリたんの知りたがっている心や感情というものに密接に関係した”何か”あるんじゃないかな?」
「・・・っ、本当にあなたに言われたくないですね。・・・まあでも、仕方ないですから、少しくらいは考えて見ますよ」
筵から目を逸らし、小声で呟く宇宙主義。
筵はそんな宇宙主義を我が子を見るように微笑ましく見ていると、早々と譜緒流手へのインタビューを終えた笑がスキップ混じりにZクラスを退出して来る。
「お邪魔しましたっす。あっ、本田さんと美宇宙さんがなんだかいい雰囲気」
笑は筵と宇宙主義の方を見るなり、興味深げに二人に詰め寄る。
「おや?もうインタビューは終わったのかい?早いね」
しかし筵は笑のそんな囃子詞を笑い飛ばし、そこには全く触れることなく、それでいてバツの悪い質問を無視したという訳でも無い自然な流れで問を返す。
「ははは、やっぱり本田さんは簡単に踊ってはくれないっすね。・・・ああ、インタビューはまた改めてしてもらう事になりました。もう時間すからね」
笑は自身のスマートフォンで時間を確認しつつ、そう言うと宇宙主義の肩に手を置き、敬礼のポーズをとる。
「私達は午後一で実戦訓練なので失礼するっす」
「そうなんだ。上のクラスの人は大変だね」
「まあそうっすね。Cクラス程の能力者の殉職率は他のクラスより高めっすから、どうにか死なないように、身を守るための努力は惜しむことはできませんよ。・・・それじゃあ私達は急がないといけないんで失礼するっす」
自身の後頭部を軽く撫でながら語り、その後、筵に別れを告げると振り返り、宇宙主義の手を引きながら実戦訓練を行う体育館の様なホールへと向かって走り出す。
チャリン。
「ああ、ちょっと蛭間さん。なにか落としたよ」
筵は勢いよく振り返った拍子に笑のポケットから落ちたペンダントのような何かを拾い上げると笑を引き止める。
すると、声をかけられた笑は身体の至る所に触れ、何かを探すような素振りをした後、ハッとし、筵の目の前まで駆け寄り、そのペンダントを奪い取るように回収する。
その後、我に帰り、上目遣いで苦笑いのような笑みを浮かべる。
「はは、これはあれですよ。おまじない的な奴で自分以外の人に触れられてはいけない的なあれです・・・」
「・・・ふーん、そうなんだ。なんだか、ごめんね」
「いやいや、こっちも拾ってもらったのにすみませんす」
色々なものを見透かしたような視線を向ける筵に、慌てながら謝罪する笑。
「では、改めて失礼するっす」
若干気まずい雰囲気の中、笑は再び別れを告げると足早に宇宙主義の方へと戻り、彼女にも謝罪するとそのまま目的地の方へと向かって行った。




