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スキャンダルと平常授業 3

 その後も凛と譜緒流手は言い争いを繰り広げるものの、状況は、まるで筵が憑依した様なフォルティシモ状態の譜緒流手の方が一枚上手であり、屁理屈ではあるものの、あまりにも堂々とした重箱の隅をつついている風な発言の数々に凛は押し切られ、押し黙ってしまう。


 「あー、2人とも、もうその辺でいいんじゃないかな?早くしないとラーメンが伸びてしまうよ?今回は、矢式さんは才能に甘んじること無く努力を重ねたスーパー転校生ってことで一つ」


 筵は仕方無しにそう言い、二人を説得するがどちらとも聞く耳持たない様子で筵を睨みつける。


 その時の凛の”突然しゃしゃり出てきたこの男は誰だ”と言うような表情から、目の前の人物を筵だと知らない事が伺えた。


 そんなどうしようも無い状況を筵は何時もの半笑いを浮かべつつ、内心困りながら数秒眺めた後。


 「・・・ラウンド2、ファイト!」


 「筵先輩!?」


 結論として、決着が付くまで収まらないと判断し、そう叫んだ筵に横にいた淵がツッコミを入れる。




 「ちょっと、凛。急にどこ行ってるのよ・・・って、うわ!」


 そんな気まずい状況に拍車をかけるように、凛を探しに来たかぐやがその場に駆けつけてしまう。


 だが、当の本人のかぐやも良くないタイミングで来てしまったことは自覚した様で気まずそうに言葉を詰まらせる。


 しかし、かぐやの乱入にも変わらず睨み合ったままの凛と譜緒流手。


 「やっぱりZクラスと言うのは噂通りなのね。能力者としての義務も果たさないで、ただ日々を過ごし、口ばかり達者だと色々な人から聞きましたよ」


 「はい?貴方、情報が古いんじゃない?ほら、この新聞にもこの前の異変を解決したのは、ここにいる筵で、筵が居なかったら学園は崩壊してかもしれないって、書いてあるでしょ?」

 

 譜緒流手は尚も食ってかかってくる凛に笑の新聞を突きつけながら言う。


 「まあそれは私の主観すが・・・」


 そんな譜緒流手の発言に対し、笑が小声で中略を入れるが、譜緒流手の余計な事を言うなと言わんばかりの視線を受け、掌を返す。


 「そうだー、書いてあるじゃないっすかー」


 笑も譜緒流手に加担し、棒読みで言ったが凛は先程まで言い争いをしていたことも忘れているような、呆気に取られた顔で筵の方を見ていて、それを見ていたかぐやは手遅れだったと額に手を当てている。

 

 「・・・えっ?筵?」


 「・・・」


 笑の問にただ何時もの半笑いを浮かべて答える筵。


 その行為は、ここで思い出話でも話そうものなら、譜緒流手がさらに拗ねてしまうのではないかとの配慮からだったが、それは杞憂に終わり、凛は、今まで筵が近くにいるとは知らずに変な態度を取っていたことと、あまりに呆気ない再会に動揺し言葉を失う。


 「・・・ひ、久しぶりね」


 「そうだね」


 「・・・今度また、ゆっくり話しましょう・・・」  


 凛は動揺しながらも、筵の装いから筵が悪い噂の絶えないZクラスに所属している事を察し、必死に落胆という感情を押さえつけながらそう笑いかけると、ゆっくりとその場を後にする。


 筵もそれら全てを理解した上で笑いかけながら凛の背中を見送る。


 「ちょ、ちょっと待ちなさいよ・・・」


 かぐやは凛の向かった方に手を伸ばし、呼び止めるがそれが失敗に終わるとすぐに筵の方を振り返る。


 「って、何なのあんたの態度は?」


 「いやいや、これは戦略的なものだよ?僕が彼女に素っ気のない態度をとれば、彼女だって日室君へ乗り換えやすいだろ?」


 筵は当たり前の事を言っている様に首を傾げつつ言葉を続ける。


 「彼女の気持ちになって考えると、日室君を僕だと勘違いした後に、ご本人登場で容姿も性格もコレではそれはそれはガッカリするだろうと心中お察ししてやまないんだよ。・・・彼女にとっての日室君は、きっと彼女の中で理想的に成長した僕で、そうなってくれていたらいいなという彼女の願望そのものなんだろう。だからそこで、過去の僕の写真を持ち出して、果たして間違える事があるのか?似ているのは髪の色だけじゃないか?なんて事を言うのは野暮というものじゃないかな?・・・ああ、彼女を追いかけるのなら、過去の記憶なんて美化されるものなのだから、負い目を感じることは無いよ、と伝えてくれるかな?」


 「・・・言っておくけど容姿とか関係なく、今のあんたにはガッカリだから」


 かぐやは低めの声でそう捨て台詞を残すと凛を追って食堂の人混みの中へと消える。 


 「いや〜、それにしてもさっきの譜緒流手ちゃんは凄かったね」


 少し気まずくなった空気を全く気にすることなく、今がチャンスと言わんばかりに譜緒流手に話しかける筵。


 「・・・」


 「ああ、まだ終わらないんだね」 


 いつの間にか自分の席に戻って、昼食の続きを取っている譜緒流手に対し小さく苦笑いを浮かべた筵は仕方なく自分もすっかり冷めてしまっている昼食に手をつけた。

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