???と長い放課後を・・・ 3
筵が仕方なく、手で洗濯を行っていると、その内に祭が帰って来て、壊れた洗濯機と筵の様子を確認すると直ぐにまた何処かへと消え、今回は一瞬で帰ってくる。
そして、帰ってきた祭は少女を抱えていて、その少女はいきなりの事に理解が及ばず、あたふたした様子であった。
「なっ、なにが!?って、何故、筵がここに?そして貴女は誰ですか?」
「では、筵兄、ポリ姉を置いていきますので、それを直してもらって下さい」
機械の身体に人間の心を持った少女、宇宙主義を拉致してきた祭は壊れた洗濯機を指差すとさっさとリビングへ行ってしまう。
そして、イマイチ状況が理解出来ていないで硬直している宇宙主義と何時もの半笑いを浮かべる筵が洗面所に残される。
「久しぶりだね。最近、侵略活動の方はどうかな?」
「よくこのタイミングで世間話に行けますね。いや、侵略活動について聞く事が世間話なのかは分かりませんけど」
筵の発言にツッコミつつ、続けて宇宙主義はしっかりとその世間話に答える。
「いえ、侵略は一時的に中止してます。貴方との戦いで我々の心システムは未熟であると痛感しましたから、どうにか鍛える方法を考えているところです」
「それなら学園に通うかい?うちの学園がいいかは分からないけど、人の気持ちを学ぶなら、学校に通うのが1番ではないかな?」
「・・・うっ、ま、まあ、考えておきますよ」
宇宙主義は驚いた様な表情を浮かべ、その後、筵から目を逸らし呟く。
恐らく、彼女の膨大な知識の中では、学園に通うという選択肢は出ていたのだろうが、自分からそれを選ぶ決心がつかないでいたようだった。
そして、少しだけ機嫌が良くなった様子の宇宙主義は筵から目を逸らしたついでに壊れた洗濯機に目をやり、近づいていく。
「全く、こんなにしてしまって、仕方ない人ですね」
宇宙主義はそう言うと、彼女の周りにワープホールの様なものが出現し、中から数体の球体状の機械が母船より転送されて来る。
それらに対し、宇宙主義が能力により電波を飛ばすと、空中をなんのモーター音も無くただ浮遊していた機械たちは、それぞれがまるで小人の乗組員によって操縦している様な滑らかな動きで、壊れた洗濯機のスキャンを行い、その後、機械たちは小型の手の様な物を出し、修理に取り掛かる。
宇宙主義の能力、あっちの星の人は電気信号や電波を操る能力であり、彼女の出す電波を受信した電気信号で動く機械は彼女思うままに操作されてしまう。
彼女曰く本気で使ったら一つの都市の文明レベルが江戸時代にまで戻ってしまうらしい。
「所でさっき我々を拉致した女性は誰ですか?見た目からして、貴方の関係者だとは思いますが」
「ああ、祭ちゃんはこの本田家の3女で、今から3年後に生まれる予定の子だよ」
「えっ?ちょっと何を言っているか分からないんですけど」
「ん?言葉通りだよ。彼女は未来人でタイムマシンみたいな能力でこの時代に来てるんだ」
「なっ、・・・さすがはエクロキサの女王の遺伝子という所ですか・・・」
栖の優秀な遺伝子に驚いている様子の宇宙主義は、腕組をしながら少しの間、黙り込む。
「ああ、そうだ。ポリたん。心システムについて色々レクチャーしてあげて欲しい人が居るんだけど、今度付き合ってくれないかな?」
「何ですか。急に・・・」
「いや〜、ある頭の良い人と知り合ったから協力して、心を持った機械を作ろうと思っていてね。ポリたんにも手伝って欲しいのさ」
「・・・あの?言っておきますけど、我々が存在を保てているのは運が良かっただけで奇跡に近いものですよ?よって我々を調べてもどうしようもないはずですが?」
「へーそうなんだ。・・・でも例えば□□□□□□□□たら少しは出来る可能性も上がるんじゃないかな?」
筵の放った言葉に宇宙主義は少し驚き、そして、その事についてしばし考えていると、再び様子を見に来た祭が鶴の一声を掛けてしまう。
「何ですか?”ハーツ”の話をしてるんですか?」
「・・・」
お馴染みとなりつつある祭のネタバレにより、宇宙主義は唖然とし、筵は何時もの半笑いで祭を見つめる。
「ああ〜、もしかして、私、またやっちゃいましたか?」
「そうだね。でも、もはやワザとやっているでしょ?」
筵の問に祭は可愛らしく舌を出し、無表情な表情を少しだけ緩め小さく笑う。
「ちょ、ちょっと待ってください。これいいんですか?確かにタイムマシーンは誰も発明した事が無く謎も多いですが、こんな未来を変えるような発言を軽々として大丈夫なんですか?」
「ポリ姉、過去を変えても未来は変わらないんで大丈夫なんですよ。本当にポリ姉は知っている事しかしらないですね~」
「な、何だとこの野郎!?」
宇宙主義はやけに馴れ馴れしい祭に辿々しく言い返す。
だが、その食い違いは当然の事であり、宇宙主義にとってこの時の祭は初対面だが、祭にとっては少なくとも”ポリ姉”と、まるで女芸人の先輩を呼ぶような呼び方をするほど仲なのであった。
しかし、そんな事は馴れっこであった祭は特に気にすることもなく、またリビングに戻っていく。
「彼女は一体何しに来たんですか?」
「さあ?でも、暗躍がしたい年頃なんじゃないかな?」
祭を見送った宇宙主義はため息をもらすと、少し言葉を詰ませながら筵の先程のお願いに答える。
「・・・あ、あの、さっきの話、手伝うかは考えてください。・・・まあ、ですが貴方の提案、貴方自身は根拠も無く適当に言ったのでしょうが、リスクを分散すると言う意味では悪くない手で、的外れでは無いと思いますよ」
そう言って、機械の少女は笑って見せる。
そんな話をしている内に、すでに洗濯機の修理は終了していて、呼び出された機械は役目を終えスリープモードに入っていた。
そしてその後、さっさと帰ろうとする宇宙主義を感謝の気持ちを込め夕食に招待し、改めて祭などと親睦を深めて貰い、それを微笑ましく見守る事で、筵の色々な事があった長い放課後は終わり迎えた。




