???と放課後を・・・ 3
「・・・という事があってね。今日は大変だったんだよ」
町外れの使われていない倉庫内で筵は異国の少年の姿に変わったフラン・パーカー、旧茶川風土に今日の出来事をまるで愚痴でも零すように語る。
「それを何故、私に、しかも親しげに話すんですか?」
「おや?僕達は利害関係と金で強固に繋がった友達同士だろ?」
筵は首を傾げながら、手に持った食料の入っているビニール袋を此れ見よがしに見せつける。
「友達ですか?はあ、それは私の嫌いなもの、第3位の言葉ですよ。反吐が出てしまいます。ちなみに2位が子供。1位が・・・」
「はい、分かった”道徳”だ」
「ええ、まあ、それも嫌いですね。道徳心とか倫理的にどうこうとか、そんな事から、革新的なものは生まれまないというのにっ!」
フランはそう言い終わると、筵から食料をようやく奪い取り、中からおにぎりを取り出して食べ始める。
あまり行儀がいいとは言えないフランの食事シーンを少し眺めた筵は不意に疑問を口にする。
「君から見て、千宮寺新羅とはどういう人間だい?」
「ん、くちゃくちゃ、んごくん。そうですねぇ?仕事人間でマニュアル人間で、飛び抜けて有能という印象はないですが、恐ろしい人・・・ですかね。くれぐれも私の存在を悟られないでくださいね。私、まだ死にたく無いので」
「ふーん」
筵のどこか微妙な反応にフランは筵の方に向かい少しだけ身を乗り出す。
「まさか、何か変な事してないでしょうね!?」
「えっ?理事長に千宮寺新羅の居場所をチクったけど?」
悪びれ様子もなく告げる筵に、絶句した様子のフラン。
「フラン君の食費と研究費で僕のポケットマネーも貧しい感じになってしまっているから、情報を売って小遣い稼ぎをね。こういった小物じみた行為も平気で出来るのが僕の強みだと自負してるよ」
「そんな事をして、もし逆恨みされたらどうするんです?」
「ああ、それなら大丈夫だよ。彼は本気で僕の母親を狂信している様だったから、僕や僕の周りには手を出してこないさ。そこまで馬鹿ではない事は話していて分かったからね。まあ、それでも、確かに君の事がバレたらマズいかもしれないけど、その時は僕が”友達”として守ってあげるから安心してくれよ」
「なっ!?・・・こほん、本当にお願いしますよ」
フランはそう言うとそっぽを向いて、いつもは具のところだけ食べ、あとは残してしまうおにぎりを全て食べ切った。
そしてペットボトルのお茶を半分ほど一気に飲み干すと次のおにぎりに手をかける。
「で、実際のところ学園側に千宮寺新羅の居場所を教えて何がしたいのですかぁ?」
「ん?だから、小遣い稼ぎだって言っただろ?それ以上でも以下でもないよ。僕の話した情報を生かすも殺すも理事長の勝手で、それにより理事長が誰を生かすのか殺すのか、誰が千宮寺新羅に殺されるのか、それらすべて僕の知るところではないよ。ただ、この日本で千宮寺新羅に勝てるかも知れない人間は多く見積もっても10人くらいだろう。その中で僕みたいな学生のタレコミで動かせる人間が果たしているのか?それが問題だね」
「・・・貴方もなかなかの悪ですねぇ」
「いやー、お代官様程ではないよ。それに情報収集とかだけが目的なら何とかなるかも知れないだろ?」
「・・・ふっ、まあそれは無いでしょうね」
ニマりと不気味かつ意味深に笑うフランは、2つ目のおにぎりはしっかりと具のところだけ食べて、研究に戻って行った。




