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???と放課後を・・・ 1

 かぐやをZクラス内に置き去りにし、学園を出た筵は今や日課となっている、天才外道少年への食事を買い、人通りがそこそこある道を歩いていた。


 「そこ行くあなた?あなたは神を信じますか?」


 すると突然、筵の前方でビラを配っていた長身の眼鏡を掛けたサラリーマン風の男が声をかけてきた。


 その腰の低い印象の男はすばらしい営業スマイルで真っ直ぐに筵を見ている。


 筵はその男の姿を上から下まで見ると、男に少し近づき、作り真顔をすると饒舌に話し始める。


 「・・・ええ勿論。と言うことは、あなたも唯一絶対なる創造神ポムラポムラ様を信仰しているのですね。何せこの世で神と言えばポムラポムラ様ただ1柱のみ。・・・ちょうど今日は我らが創造神の御座(おわ)すトゲナシトゲトゲ座星雲の中のある星で、7つの月と3つの太陽が東の空へと沈む346年に1度の吉兆。共にナンジャモンジャの花を南東微東(なんとうびとう)の方向に奉り、ネアンデルタール式ダンスを奉納しましょう。安心してください、(なら)わしでは右前後ろ前足も捧げる事になっていますが軟体人間では無い我々は・・・」


 「危ない人のフリはしなくても大丈夫ですよ。本田(ほんでん)(むしろ)さん」


 焦点の合っていない目を作って男の手を激しく振りながら語る筵に、男は動じることなく返してくる。


 その様子から男は筵の事を知っていて、待ちぐせをかねてビラを配っていたことが分かった。


 「本田筵?誰ですかそれは?私は洗礼名リンガリング・デス。今日も今日とて修行に明け暮れる匆匆たる日々を過ごしていまして・・・」


 「ああ、申し遅れました、私こういうものです。どうぞお受け取り下さい」


 男は筵の事はお構い無しに名刺のようなものを差し出し、綺麗なお辞儀をきめる。


 筵はそれに対し、ため息をもらし、仕方なく名刺に目を落とす。


 ”ハーベスト教団 支部長 千宮寺新羅(しんら)


 そこに書かれていた言葉に心の中で驚く筵に千宮寺新羅らしき男が再び問いかける。


 「どうですか?興味を持って頂けましたか?」


 「・・・ええまあ、昨日までの僕なら無視していた所ですが、今日の僕はその名前に少し興味があります」


 目の前にいる腰の低そうな男と、日室刀牙に勝ったと言われているハーベスト教団の能力者リーダーの印象が一致しなかったが嘘を見破るのが得意な筵の目から見てもその男が偽りを述べているようには思えなかった。


 そして、新羅の話を聞くために近くの喫茶店へと入っていった。

 

 

 


 「貴方は本当にうちの日室君を倒した千宮寺新羅さんなんですか?あまりイメージが湧かないですね」


 「ええ、まあ、リーダーとして不甲斐ないとはよく言われます。何分ただ能力に恵まれただけの者でして・・・ビラ配りなど下のものに任せればいいともよく言われるのですが、こういう仕事が性に合っているんですね。きっと」


 筵の問に、自身の配っていたビラを見せ、(かしこ)まりながら答える新羅。


 そのビラには直接的にテロなどの犯罪行為が行っているハーベスト教団の名前ではなく、ハーベストを信奉しているという趣旨は同じながらも、違う宗教団体の名前が使われていた。


 それを確認した筵は、自身のテーブルの前のコーヒーに砂糖を2つ程入れ掻き回しながら、新羅の顔を伺う。


 「なるほど、・・・それで、僕を呼び止めてどうしようと言うんですか?復讐ですか?勧誘ですか?」


 「いえいえ滅相もない。・・・ああ、でも勧誘を受けてくれるならこれ以上の事はないですね。如何です?」


 「すみません。僕にはポムラポムラ様が居るので」


 筵の返しに対し、”ははは”と笑う新羅は、最初から勧誘出来るとは思っていないようで話を切り替える。


 「私の所属するハーベスト教団は決して一枚岩ではないんですよ。本当にハーベストを信仰している人もいれば、そういう組織らしく世界征服を目論んでいる者もいたり、後はただ暴れたいだけなんて人も居ます」


 「そうなんですか〜、僕はてっきり全員が本気でこの地球を本気で侵略(とり)に来ているハーベストに狂信しているのかと思ってましたよ。で、千宮寺さんはどの立ち位置なんですか?」


 コーヒーを飲みつつ、筵はあまり興味が無い事を装いながら内情について質問する。


 「今、上げた中のどれでも無いと言うのが正しいですね」


 新羅はそう結論を述べると、その答えに至る前置きを話し始める。


 「・・・最初に会った時の話の続きをさせて貰いますが、貴方が神という存在を信じるか信じないかは別として、どの様な存在がいたらそれを神だと思いますか?」


 「そうですね〜、あえて言うなら、全能性と完璧なる慈愛を合わせ持った存在ですかね。しかし世界から争いが無くならない事から、神が全能性を持っているのなら、神から慈愛の心は失われ、逆に完璧なる慈愛を持っていたら全能性は失われてしまう。ですからあまり、興味が無い話です」


 「なるほど、それは神様も大変ですね・・・。まあ、しかし、あなたにとっての神がそれである様に、人には自分自身にとっての神がいていい時代です。特にこの国ではそう言ったことに寛容ですから、・・・そして私は誰もが逆らう事すら躊躇う程の力持った存在が神なのだと考えています」



 新羅は筵の事を見透かしているように笑いかけ、コーヒーを1口飲むと違う切り口から話を続ける。


 「この世界で安定を求めない人間なんていない。そうは思いませんか?私も貴方も悪も正義もみな安定を求めています。問題なのは何の元にその安定が保たれるのかということです。皆、激動を嫌うがそれよりも何より自身の待遇や心情が不安定な事を嫌う。所詮、歴史とはそういった者達の盤上のひっくり返し合いです。この前の学園と我々の戦闘も、学園やその上の能力者協会が主権を握っている世界の運営に不満を持った私たちが、それをひっくり返えそうとしたに過ぎません」


 新羅は身振り手振りを交えながら、さすがは宗教家といった様に饒舌に語り続ける。

 

 「しかし、例えひっくり返えせた所で、教団の教祖共では、ただいたずらに同じ事を繰り返すだけです。・・・だから私は神という上位の存在に世界の頂点に君臨して頂き、その絶対的な力を持って人々を等しく支配して欲しいと考えています。神の元になら誰もが冷遇を受け入れざる負えないはずですからね・・・そう我らが神、ハーベストの王”本田(ほんでん)(すみか)”様の前では」


 新羅はそう言うと、再び筵に笑いかける。


 最初に会ってから新羅の表情や挙動などは何一つ変わっていないが、筵はやはりこの男はハーベスト教団の能力者たちのリーダーなのだと再認識していた。

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