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天地堕とし、学園防衛班 7

 「てめーの、その厄介な能力は能力を無効にする能力じゃねー、能力発動の失敗を促す能力なんだろう?能力は普段はなんの違和感もなく使っているが、そこに無意識のうちに違う思考や不安要素などを加えさせる事で知らない内に能力を使えなくさせる、それがてめーの能力の全貌だ・・・そしてセオリーならこの手の能力は正体がバレるとその効力は半減する!!」


 淵の能力に対する推理を得意気に語った灼火は、再び淵の近くの地面にを爆発させるために手を前に突き出し、指をならす。


 それにより淵のいる場所の地面が光を放つ。


 「くっ」


 その状況に少しの不安感はあったものの、再び能力を発動し、爆発を抑えようとする。


 だが、能力の熟練度の差なのか、先程の灼火が言った通り、能力は無効化れることはなく光は徐々に強くなっていく。


 「鈍空様!!」


 光につつまれていく淵の元へと叫びながら駆けっていく斬人。


 しかし、淵の元へとたどり着いた瞬間、半径数m程を吹き飛ばすほどの威力の爆発が巻き起こる。


 更なる光量の光、その後に爆音、そして鼻を突く火薬の臭い。


 それらが順々にその場にもたらされ、淵と斬人が優位に戦闘を行っていた事で、その場に残って、状況を伺っていた者達にも緊張が走る。

 

 「ひゃははは!!やっぱり女子供は爆破のしがいがあるぜ!!・・・ぷっ、ひゃははは、今のは、"しがい"と死骸を掛けたギャグだぜ!!ほら、てめーらも笑えや!」


 灼火は仰け反る様に能力を失った生徒達を眺める。


 「さーて、焼き加減はどうかなー?・・・ああ!!?」


 続いて淵と斬人のいた場所を眺めた灼火は、怒りと疑問の入り交じる声を上げる。


 淵たちのいた辺りの地面は明らかに爆破によるものではない、綺麗にくり抜かれた様な穴が空いていた。

 

 「おいおいおいおい、あいつら逃げやがったぜ!!今や無能力者のテメーらを置いて!まあ、懸命な判断ではあるがよー!普通しねーだろ!ひゃははは!!きっと、あいつはあの嬢ちゃんだけ守れればそれでいいんじゃねーか?」


 灼火は愉快そうに叫び、笑う。


 そして、その言葉を聞いた生徒たちからも、不安げな言葉が漏れる。


 斬人は学友騎士団の中では取り立てて、目立つ存在では無かった。だが、頭が切れ、常に冷静、能力もAクラスの平均以上と他の生徒からすれば高スペックで、社交性はそこまで高くないものの頼り甲斐はあり正義感も強い、そんな存在だった。 

 

 故に、少なくとも一般人に成り下がった生徒たちを見捨て逃げるような、選択をすることは、今まで作り上げてきた破魔野斬人のイメージにはそぐわなかった。


 しかし、それは所詮、演じられていた、ただのイメージに過ぎなくもあった。






 「鈍空様、大丈夫ですか?」


 「はい、いきなりで驚きましたが、それでここは?」


 淵が目を開けると、そこは薄暗く埃臭い広めの場所であり、斬人にお姫様抱っこをされているという状態であった。

 

 「あのホールの地下です。あのスキンヘッドの男、見た目に寄らず、なかなかの能力者でしたね。流石に勝てる気がしません。さあ、一緒に安全な所へ逃げましょう」


 斬人は淵が目を開けるなり、地面に優しく下ろし淵の質問に答える。


 「えっ?」


 斬人から出た余りにも意外な言葉に淵は困惑し、声をもらす。


 「待ってください。あの灼火という男と戦わないんですか!?」


 「え、ええ、そもそもこの姿と制限された能力では、彼には勝てませんから、それに私がハーベストであるという事実がバレるのは避け無くてはならない。都合のいい事に、このまま放っておけば、あの男があの場に居る、私が敵前逃亡した事を知っている者達を全滅させてくれます」


 「・・・」


 「大体、筵様に対して、常日頃から無礼な事を言っている、あの連中がどうなろうと私は一向に構いません、私の任務は筵様を守り、筵様の命令を守り、筵様の守りたいものを守る。それだけです」


 斬人はさぞ当たり前のように言うと、遠くに少しだけ見える光が漏れている天井の穴とは逆の方向へと歩き出す。


 斬人にとって破魔野斬人とは、100%周りを欺く為だけに作られたものであった。そして正体がバレない程度の制限されたスペックでのみ、周りと協調していた。


 例えば、灼火が斬人の制限された能力でも倒せる様なレベルだったなら、斬人は周りの期待通りの彼を演じ、敵を倒すだろう。


 しかし、そうでなければ斬人は非情なまでに命令を遂行する。


 「私は筵様より命令を受けています。まず1番に筵様の大切な人を守る事、2番に自分の命を守る事、3番に自分の正体を守る事、4番に破魔野斬人のイメージ、世間体を守る事。今は何よりも鈍空様、貴女の命を守る事が先決です」


 淵の方を振り向かずにそう語る斬人は尚も歩みを続ける。


 「・・・なるほど、分かりました。破魔野先輩」


 淵は斬人を呼び止める様にそう言い、その場にしゃがみ込み、少し鋭利な木屑を手に取り自身の首元に持っていく。


 「では、これならどうでしょうか?・・・わたし自分で言うのもなんですが、筵先輩が守りたくて守りたくて仕方が無い、大切な、それはもう大切な、目に入れても痛くない位の可愛い可愛い後輩ですよ。それはつまり破魔野先輩が何に変えても守らなければいけないもののはずですよね?」

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