天地堕とし、学園防衛班 6
淵と斬人が学園のホールの前まで来ると、そこには天地堕とし下でも能力を保持していた何人かの学園側の能力者が倒れていた。
その者達はホール内の能力を失っている能力者たちを守るという仕事が与えられていた。
そんな者達が倒されてしまっている今の状況は、誰が見ても緊急事態で尚且つ、不測の事態であった。
「大丈夫ですか!?さっきの爆音はなんなんですか!!」
淵はその光景を見るなり、一番近くの倒された能力者に近づき、ここまで来る時に聞いた爆音について訪ねる。
「・・・す、すまない、秘宝によって貼られたシールドが破られた・・・、早く助けに、まだ、間に合う」
やられた能力者の生徒は呻きながらも、ホールの入口を指差す。そして、淵たちにそう告げたその生徒は気を失い、入口を指さしていた手は地面に落ちる。
「くっ、破魔野先輩!!」
「ああ、分かった」
淵は大きめの声で斬人を呼び、ホールの入口から中への入る。
「ひゃははは!!おいおい、少しは骨のある奴はいねーのか?もういねーなら、そろそろタイムリミットだぜ?」
ホールの中心付近で笑う、傷だらけのスキンヘッドの男、根本灼火はそう言うと手の形を指を鳴らす時のように変え、天に掲げる。
灼火の周りには、ホール内で警備していた能力者たちが倒れていて、能力を失ったもの達は灼火から一定の距離を保ちながら、不安そうな表情でその様子を伺っている。
「俺様の能力、人工人口爆発がなぜ、そんな名前なのか今、教えてやるぜ!」
灼火が能力を発動させると、灼火の周りで倒れている能力者と、何人かの逃げていた一般生徒の体が光を放ち始める。
その状況に、生徒たちは混乱し、恐怖して阿鼻叫喚が巻き起こる。
「いひゃははは、人工人口爆発は俺様が触れたものを爆弾に変え、更に爆弾になったものに触れてしまったものもまた、余すところ無く爆弾になっちまうんだぜ!!・・・さあ、本当に終わりの時間だ!!」
灼火はそう叫ぶと、天に掲げていた手の指を打ち鳴らす。
・・・・・。
静寂がその場を包む。
ある者は死を覚悟し、またある者は安全な位置へと逃げ耳を塞ぎ震えていた。そして、当の本人である灼火は不思議そうに、周りを見渡たしていた。
「何とか最悪の事態は回避できたみたいですね。皆さん早く逃げてください」
淵は灼火のいる位置から少し離れた所に立って、手を前に出して構えていた。
その状況から、淵がなにかした事は明白であった。
そして淵の声を聞いた、恐らく爆弾で脅され動けなくなっていた者達は一斉に逃げ出し、詰まりながらもホールから出ていく。
「はは!!なんだてめーは、俺様に何しやがったんだ?・・・はあ、まあいいか、それがてめーの能力ってんなら、てめーと俺はサシでの勝負って事だなー!!」
灼火は意外と冷静にその状況を判断すると淵の方へと、走り出し、その道中でポケットより折りたたみナイフを取り出し、構える。
「もう少し早く来ていれば、味方の能力者共と協力して戦えたのに残念だったなー!!」
「いや、問題無い」
その凶刃が淵を突き刺す直前、斬人は淵の前にかばいながら現れ、灼火のナイフを持った手を掴む。
「ちっ、まだいやがったのかよ」
灼火は斬人の手を振りほどき、バックステップで後退する。
「鈍空様には触れる事は許さない」
「はあー?てめーらそういう関係かー?」
「そうですね。私と鈍空様の関係を語るのは非常に難しいですが、あなたに説明する必要も無い」
「けっ、まあいいぜ・・・っ!!」
灼火は少し離れた所から斬人を観察するとあることに気づく。
「でも良いのか?その俺様に触れた手、爆弾になっちまってるぜ?・・・そっちの女の能力は常に能力を封じるわけじゃねーんだろ?」
灼火は触れた斬人の手を爆弾に変えられている事を確認すると、邪悪な笑みを浮べながら挑発する。
「あとよー、俺様が触れた所が爆弾になるって事は、俺が歩いた地面は地雷になるってこのなんだぜ!!」
すると、淵たちのいる場所の地面が先程の生徒たちを爆発させようとした時の様に光を放ち始める。
「させません!!」
しかし、それに素早く反応した淵により、再び能力が封じられ光が収まる。
「感謝します。鈍空様」
爆発が起こらないことを確認した斬人は能力を発動させ、手に球体状の黒い塊を生成する。
「ちっ、混沌物質かよ」
「ああ、そういう事になっている!」
灼火に近づいた斬人は手に持った黒い塊を槍の形へと変化させ、そのまま突きを放つ。
その突きに対して灼火は自身の身体を爆発させ、回避しようとするが、淵の能力により、能力が不発に終わる。
「ちっ、またかよ!」
少し焦った灼火だったが、先程までの経験から、妨害される事は予期していたのか、ギリギリで突きをかわし、後方へと跳び上がる。
空中で斬人たちを見下ろし、打開策を思考する灼火だったがふと自分の足に紐の様なものが絡まっている事に気づく。
「!?」
「変幻自在なのがこの能力の利点ですので」
斬人は自身の手から鞭の様に伸び、灼火の足に絡まっている混沌物質を振り、地面に叩きつける。
そして、素早く鞭を剣の形に変えた斬人は飛び上がり、剣を構え、斬り掛かる。
能力を封じられ危機一髪の灼火だったが、斬人の剣が突き刺さる瞬間、自己防衛の為の無意識的条件反射によるものなのか、ふと封じられている能力を発動させ、身体を爆弾に変え、そして爆発させる。
その予期せぬ爆発と爆風により、吹き飛ばされる斬人。
「す、すみません。破魔野先輩!!封じていたのですが・・・」
「いいえ大丈夫です」
心配そうに斬人に駆け寄る淵に対して、少し怪我をしているが、無事な様子を見せる斬人。
「なるほどなー、そっちの女の能力は、正確には能力を無効にする能力では無かったって事か」
自身が能力を発動した事に少し驚いた様子の灼火は自分の手を眺めながら爆煙の中から、姿を表す。そして、淵の能力を見切ったと言うように気持ち悪く笑った。




