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天地堕とし、学園防衛班 4

 「いいか?アタシの話をよく聞け。”今日は人間が痛みを感じない日なんだぜ?地球と月、太陽の位置なんかこう、いい感じになった珍しい日らしい。アンタ運が良かったな”」


 梨理はスチュワートの耳元でそう囁く。


 「・・・そ、そうでしたね。確かに運が良かったです・・・」


 梨理の能力、八百枚舌(スピークインジョーク)は有り得ない嘘ほど信じさせる能力であり、明らかに嘘であると分かるような言い回しを考えなければならないが、それを除けば便利な洗脳能力であった。


 その証拠にスチュワートは梨理の声を聞くなり、怪我していない方の足に傾けていた体の重心を元に戻し、ウォーミングアップのように軽く跳ねて見せ、そして再び手に持っている聖剣を構える。


 「これなら行けそうです。後は、私に任せてください。私と、このカラドボルグに」


 スチュワートは手に持った聖剣に雷を纏わせると、梨理に笑みを見せた。




 「がぁぐあああ!!」


 その瞬間、身体を巨大化させた狼男の様な敵能力者が吠えながら再び梨理たちに向かって殴りかかってくる。


 梨理はそれに素早く反応し、避けるが梨理の見たところスチュワートはその攻撃を避けた気配がなかった。


 その直後、敵はその大きな拳で梨理たちの元居た場所を殴り、物凄い轟音とともに大地が割れ砂煙を巻き上げる。


 「おい、会長さん大丈夫か!?」


 梨理は敵の攻撃により巻き上がった砂煙に向かって叫ぶ。


 「ええ、大丈夫です。足の痛みも無いですし、本当にいい日ですね」


 スチュワートは敵能力者の地面を殴りつけている腕の上に軽い足取りで着地し、梨理に答える。


 「さあ、決めさせてもらいます」


 スチュワートは天にカラドボルグを掲げるとそこに雷を落とし、先程までよりも多くの雷を纏わせる。


 「ぐぅああがああ!」


 自身の手の上にいるスチュワートに対して、怒りを露わにする敵能力者はスチュワートを払い落とそうと、まるで蚊でも潰すようにもう一つの手でスチュワートを叩きつけようとする。


 「無駄です。そのスピードでは私を捕えられません」


 スチュワートは気付くと押しつぶしに来た、もう片方の手の上に立っていてた。


 そして、掲げていた聖剣を振り下ろし、それと同時に天より雷が降り注ぎ、その雷を食らった敵は黒い炭の塊の様になり倒れる。




 「会長さん。これで終わりだよな?」


 「・・・多分」


 梨理はスチュワートの元まで駆け寄ると倒れて動かなくなっている敵能力者を眺める。


 しかし、先程の教訓から、より一層警戒を強め、その様子を凝視する。




 そして、その直後、やはりと言うべきなのか2人の嫌な予感を現実の物にするように敵能力者はピクピクと動き始め、そして光を放つと能力により更に巨大化しながらゆっくりと立ち上がる。


 完全に立ち上がったそいつの影が梨理たちを覆い尽くすと、梨理は絞り出すように呟く。


 「・・・ちょ、ちょっと待て、デカ過ぎじゃねーか?」


 梨理たちの見上げている視線の先には、身長を更に2倍近く大きくし、10m程にもなった敵能力者が狙いを定めるように2人を見下ろしていた。


  




 数秒後。


 そこには、10m近くまでなった敵の能力者の拳を片手で受け止める”鬼”の姿があった。


 そして、その”鬼”の後ろではスチュワートが尻餅を付いた状態で唖然とした表情を向けている。


 「もう一段階上がある何て予想外だったな。それにその足でアンタは良くやったよ。正直見直したぜ」


 「・・・あ、天喰さんなのですか?」


 スチュワートは額から大きな2本の角を生やし、肌の色を黒っぽく変色させた鬼の様な姿の少女に問いかける。

 

 「・・・ああ、バレちゃー仕方ねーな。そう、あたしの曾祖母、天喰縷々(るる)は第2.5の魔王型ハーベストとも呼ばれた鬼型ハーベスト、そしてあたしはその隔世遺伝って奴なんだぜ。どうだかっけぇだろ?」


 梨理は投げやりな口調でそう言うと、まるでその姿を恥じているようにスチュワートから目をそらす。


 梨理にとってその姿は、かつて周りから畏怖の念を抱かれていた原因であり、決して進んで人に見せたいものではなかった。


 しかし、スチュワートの足は痛みを感じなくなっているだけで完全に普段通りに動かせるわけで無く、何より今のスチュワート1人に戦わせても勝てる見込みも薄い、そう考えての苦渋の決断であった。


 「・・・」


 「ま、まあ、あれだ、あとはあたしに任せていいぜ」


 「か、かっこいい・・・」


 「はあ?」


 「かっこいいじゃないですかその姿!?しかも、鬼型ハーベストの血を引いてるとか、どれだけ宿命背負ってるんですか。ずるいですよ天喰さん」

 

 スチュワートは少しだけ前のめりになりながら、梨理に訪ねる。


 その表情からは悪い感情は一切感じず、純粋な興味と憧れと言った感情で埋め尽くされていた。


 


 「くっ、くく。ははは!!会長さん、アンタって意外と馬鹿だったんだな。この状況でしかも、この姿を見てその感想なんてなかなか出ねーぜ!」


 梨理は再びスチュワートの方を向き直すと、堪えきれず高笑いし、笑みを浮かべる。



 その瞬間、巨大化している敵能力者は叫び声を上げた。


 「ぐぅがぁぁあ!!」


 いい加減シビレを切らしたそいつはその大きな拳で、梨理を押しつぶそうと、拳に力を込る。


 だが、梨理は巨大な壁を押しているように微動だにしない。


 「うるせぇ!!」


 鬼化した梨理の一喝により、敵は怯み、拳の力抜く。


 そして梨理はそのまま腕を払い除け、高くジャンプして敵の顔面を殴り飛ばすと、梨理の約8倍近くある身長の敵は仰け反り、跪く。


 「気が変わったぜ会長さん。今からコイツを2人で完膚無きまでにぶっ飛ばそうじゃねーか、だから力を貸してくれよ」


 梨理は敵を殴りつけた後再びスチュワートの近くに着地して、スチュワートに向かい手を差し伸べた。

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― 新着の感想 ―
会長さん、、意外と話のわかる人だった、、、勘違いしてました掌返します。
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