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天地堕とし、異変解決班 前編6

 「譜緒流手達、置いて来て良かったの」


 「ああ、90%くらいの確率で大丈夫でしょう」


 譜緒流手達を置いて、更に先に進んでいた筵にかぐやが問いかけ、筵はそれに対して、少し考えた後、答える。


 「ふーん、よくその確率で任せたわね。珍しい」


 「まあね。でも譜緒流手ちゃん達は十分しっかりしているから、仲間として信じて任せる事にしたんだよ」


 「・・・へー」


 かぐやは筵の返答を聞くと何処か詰まらなそうに呟き、少し早歩きになって先に行ってしまう。そして、そこで会話は途切れ、更にしばらく進んで行くとかなり大きなドアへと差し掛かった。


 そのドアは機械仕掛けの様で筵達が前に立つと、一瞬何かを確認するような間が空いた後、招き入れるかのように開く。




 招かれたそこは円状の巨大な部屋であった。


 そして、その部屋の上の方にはガラス張りの小さい部屋付いていて、その部屋からボサボサの髪で邪悪な笑みを浮べている白衣の男が筵たちを見下ろしている。


 「やあやあやあ、よく来たね〜。ようこそ私の実験室へ。いや〜待ちくたびれましたよ〜。余りに暇すぎて、試作品同士で遊ばせちゃったじゃないですか〜」


 そのボサボサの髪の男はねっとりとした声でそう言うと、部屋の中心当たりを指差す。


 そこには人間と化け物を足して2で割ったような生命体の血塗れの骸が2体転がっていた。


 「それは私が研究中のハーベスト人間ですよ〜。どうですか?かっこいいでしょう?・・・おおっと、私としたことが、申し遅れてしまいました。私、茶川風土と申します。久しぶりですねー繭里さん♪」


 風土はテンション高めに繭里に問いかける。しかし、繭里は風土を見た瞬間からずっと絶句してしまっていた。


 人工能力者である白井繭里。彼女を作り上げた人物こそがこの茶川風土という男であった。


 彼は、武能祭での一件で非人道的な実験の数々が、刀牙たちの活躍で明るみになり、研究者としての地位を失い逮捕された。しかし、護送している途中に逃げ出し、現在はハーベスト教団を隠れ蓑にしていた。


 そして、繭里にとって彼は酷いトラウマなのであろう、恐怖と怒りを同居させたようなの表情で風土を睨んでいる。


 「ひどいですね〜、私が居なかったら、貴方はただの無能力者、あのいけ好かない男とお近づきになれることも無かったんでよ〜。感謝して欲しいくらいですね〜」


 「黙れ!!」


 繭里は風土に向って叫び、同時に能力により甲冑を纏ったハーベストを召喚する。そしてその甲冑ハーベストは風土のいるガラス張りの部屋まで跳び上がると風土の前のガラスに向け剣を振り下ろす。


 「せっかちは良くないですよ。貴方達の相手は私ではないですからね〜」 


 風土は不敵に笑うと、その甲冑ハーベストの前に先程倒れていたハーベスト人間と同じような容姿のバケモノが風土を庇うように甲冑ハーベストの前に出てきて、その攻撃をガードする。


 そして、そのハーベスト達が地面に着地すると、その円形の部屋はすでにハーベスト人間で埋め尽くされていた。


 「えー、マイクテス、マイクテス。コホン、それでは、これより、お集まりの皆様には殺し合いをしてもらいたいと思いまーす。最後まで生き残った1人にはここを脱出する権利が与えられますので、皆さん張り切って殺し合っちゃってください。あんまりトロトロしていると毒ガス的なものが撒布されますのでお気を付けてくださいね〜」


 風土はまるで、バラエティーの司会のようにそう告げ、喋り終わると同時にハーベスト人間なる者達が筵達に襲い掛かかる。




 「困るなー、こう言うの。僕が居ると随分と白けてしまわないかい?」


 「何呑気な事言ってるの!ってあんたは死んでも蘇れるんでだったわね」


 「まあ、そういう意味でもあるけど、今回言いたかったのはそうじゃなくて、ほら僕だけあの人と初対面じゃん?」

  

 「はあ?どうでもいいでしょそんなの、と言うか私だって1回会っただけよ。そんな因縁なんてないわ」


 次々に襲い掛かるハーベスト人間に対し、筵は爆弾とナイフで、かぐやは聖剣で応戦しつつ、不意に呟く筵にかぐやが答る。そしてその後、かぐやは心配そうに繭里の様子を伺う。

 

 「あんた、コイツらってなんだと思う?」


 「ハーベストの人間化だったら君は嬉しいのかい?」


 「・・・本当に嫌な返しするわね」


 「まあ僕としては、人間の容姿をした者を殺すなんて勇気無いから、人間から随分と逸脱している彼らはとても有難いよ。・・・それとあの・・・白井さんだっけ?気にしていてあげなよ」


 筵はそう言い理性を失いかけている様な様子でハーベスト人間と戦っている繭里を横目に見る。


 しかし、かぐやが筵の忠告を実行するより先に嫌な予感は現実のものになってしまう。



 繭里が召喚したハーベストで敵を倒した瞬間、再び風土が口を開いた。



 「あーあ」


 風土は意味有り気に邪悪な笑みを浮かべ、そして少し間を開け、繭里が風土の方へ視線を向けたのを確認すると、風土は話を続ける。


 「ピンポンパンポーン。さあ、突然ですが、ここで問題で〜す。今、繭里さんがぶっ殺したのは一体何でしょーか?ヒントは、私、人工能力者の計画がパーになってしまったので、次の研究として見て通り、人間のハーベスト化にチャレンジしてるんです。いやー私って本当に努力家ですよね〜。で、それにつきまして前の研究で余ったものをこの研究に再利用したんですよ。やっぱりリサイクルとか、勿体ない精神は日本人の美徳じゃないですかー。そう思いません?」


 風土の説明を聞いた繭里は焦りながら先程倒したハーベスト人間を見る。そして数秒硬直し、その後、表情は誰でも分かる位に青ざめ、呼吸は過呼吸気味になって行く。恐らく先程、倒した物が記憶の中の何かと重なってしまったのだろう。


 「あれ?答え分かっちゃいました?酷いですねー、繭里さん。研究所ではあんなに仲良さそうにしていたのに」


 風土はそんな繭里を楽しそうに眺めながら、挑発を続ける。そして繭里はその作戦にまんまと乗ってしまい、能力の制御が上手くいかない様子になって行き、武能祭の時の様な暴走が起こりかけていた。


 「ちょっと繭里、落ち着きなさい。耳を傾けるな」


 かぐやは必死に暴走寸前の繭里に声を掛け、なんとか落ち着かせようとする。


 そして、それを見世物として楽しんでいる風土。




 そんな鬼気迫る状況の中、1人の場違いな男は、一歩下がった所で何時もの半笑いを浮べ、目の前で起こっている事をまるで、テレビ越しの出来事であるかのように眺めていた。


 そして、その男は、渋々といった様子でため息をもらし、何時ものように空気をあえて読まない立ち振る舞いで、軽く片手を上げつつ一歩前に出る。




 「あの、こんな所で彼女に暴走されても止める人が居ないし、面倒臭いだけなので止めてもらえませんか?・・・それと、僕としては、彼女と貴方のハートウォーミングな過去編には非常に興味があって、部屋で横になりポップコーンを摘みながら、片手間にソーシャルゲームでもプレイして見ていたい気持ちに駆られるのですが、今回はそんな時間も無いものでね・・・だからどうです?ここは人間の底辺同士、地球に優しい潰し合いといきませんか?」

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