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天地堕とし、異変解決班 前編4

 「お前1人で俺ら2人をどう相手取るって言うんだ」


 「まあね~。でもオレは筵達を追わせないように足止めだけすればいいんだけだから、楽なもんだよ」


 1人になってしまった譜緒流手は(つかさ)達に若干の苦笑いを向けながら再び山双を構える。

  

 「我が半身よ。汝のギフト、全ては手中(エレメンタルマスター)の、惰性なる枷を今こそ砕く時」


 「はいはい、分かったから、そう怒んなって」


 フェイトが横目で司を軽く睨み、司はため息混じりにそれに答え、左手を構える。


 すると、司の左手から、球体状の水が出現する。


 「ふーん、と言う事は少なくとも、あと炎と土は操るのかな?」


 「ちょ、フェイト!お前の考えた名前、分かりやす過ぎんだよ」


 「・・・歴戦の勇者はやがて、始まりの地に還える」


 「もういいわ、・・・はあ、じゃあ、隠す必要ないよな」


 司はため息交じりに言い、譜緒流手の方へと近づきつつ、左手の水の塊は数本の槍の形に変化させ、襲いかかる。


 しかし、その槍は譜緒流手を通り抜け、譜緒流手のやや後ろの地面へと刺さった。


 だが、司はそれ位のことは予期していた様子で、動揺すること無くつつけざまに、左手を下から上へと振り上げ、地面より巨大な円錐状の岩を出現させる。


 その岩は譜緒流手の足元からも出現したが、それすらも能力により回避されてしまう。


 「ちょっとマジで」


 流石に動揺してしまった司。その隙をつき譜緒流手は山双を持ち上げ斬り掛かり、数回の攻防を繰り返す。


 「半身よ、下がれ」


 譜緒流手と司の戦っている後ろから、フェイトの声が響き、それを聞いた司は譜緒流手が山双を振り下ろすタイミングで後方へと高くジャンプして後退し、それと同時に後ろにいたフェイトは能力により、ビームを放つ。


 


 「はあ?よくある。攻撃する瞬間は実体化するとかじゃねーの?」


 「ごめんね」


 司の落胆する声に、譜緒流手が答える。


 協力して無敵の能力の攻略法を模索する少年と、その攻撃をことごとくかわす魔剣使いの少女、最早、どちらが世界を救う側なのか分からない状況であった。


 「まあ、こっちも筵達を行かせるために一人になって内心ヒヤヒヤしてるんだからさ。何で”ここは任せろ”何て言っちゃったんだろ」


 譜緒流手は苦笑いを浮かべながらも、山双を頭上に構え、今いる司達から少し離れた場所で振り下ろすと、山双から斬撃の衝撃波のような物が発せられ司とフェイトに襲いかかる。


 だが、フェイトは司に軽く指示を出し、いとも簡単にその攻撃を避けてしまう。


 「ちょっとさっきからそれ何なの?」 


 「くくっ、我が魔眼に映らぬものは無い、そして半身よ、奴の死角は生命の循環における現世と継ぎ目だ」


 「なるほどそういう事ね。と言うかもっと早く言ってくれね?」


 司はフェイトの言葉を聞くと左手に炎を纏い譜緒流手に向けて放つ。


 その炎自体は譜緒流手の身体をすり抜けてダメージは無いのだが、司は尚も炎を緩めない。


 そして、炎を受け続けている譜緒流手の表情は徐々に苦痛を帯びた様子へ変わっていく。


 「お前の物体をすり抜ける能力は、攻撃する時だけ姿を表さなくてはならないとか、地面に立っている足裏だけは物を透過しないとか、そう言うちゃちな物では無いことは分かった。だが呼吸はしっかりと外から取り入れなければならないんだろ?」


 「・・・参ったなー」


 炎の中、譜緒流手が呟く。しかし譜緒流手にとってこの状況を一時打破することは容易い事だった。


 しかし、先ほど司が言ったことは譜緒流手の明確な弱点であり、ジリ貧になる恐れは大いにあった。


 そして譜緒流手はまだフェイトの能力の全貌を掴めていない。


 


 譜緒流手は炎に囲まれている中、息の続くかぎり思考を巡らせる。


 アニメやゲームなどに軽く精通している譜緒流手にはフェイトの能力の一つが未来を見る能力である事が想像出来ていた。


 だが、未来を見ただけで果たして全ての攻撃に対応出来るものなのか。そして最初にフェイトが言っていた”世界を造る裏切りなき数のスキルを宿す”という言葉。


 この数を例えば10以上と仮定し、あの絶対回避を様々な能力の併用であるとするなら全ての攻撃に対応出来るのも頷けた。


 譜緒流手はそう考え、今までの戦闘の様子から能力を洗い出すために記憶を辿っていく。


 しかし、その記憶の中で様々な部分での矛盾点が浮かび上がって来る。


 そして、その矛盾点、と言うか矛盾点が乱立する状況に譜緒流手はある心当たりがあり、自身の体を探りポケットの中にある物がある事を確認する。


 譜緒流手はそれをポケットから出して目視でも確認し、クスりと笑い、息もそろそろ限界のため、炎をはらう為に山双を構える。



 その瞬間、急に司達のいる場所の天井が崩落し、瓦礫が降り注ぐ。そして、それを避ける為に司は炎を放つのをやめざる負えず、そのまま元いた場所より数mほど後退する。


 その一連の流れを見た譜緒流手の想像は確信に変わり、ここに居ないはずの親友に笑顔を向けた。

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