天地堕とし、異変解決班 前編3
「我が、詰め込み過ぎな右眼は世界を造る裏切り無き数のスキルを宿す」
フェイトはそう言うとその美しくも禍々しい右眼から小型の魔法陣の様なものを浮かび上がらせ、その魔法陣からビームを放つ。
「ちょ、ちょっと、この子の言ってること翻訳してー」
れん子は嘆きながら、イロジカケでそのビームを弾き飛ばし、続けてフェイトに向けて、鞭による攻撃を放つ。
しかし、フェイトはその攻撃をいとも簡単にかわしてみせる。
「じゃあこれなら」
自身の能力、どこ吹く嵐で存在感を操作したれん子は、皆の目の前から姿を暗ます。
「くくっ、汝、閑散の中に溶けて尚、我が魔眼は真実のみ凝視する」
フェイトは目の前かられん子が消えた事にも同様せずに、不敵に笑ってみせた。
そして、そこから少し離れた所では、大剣型の魔剣、山双を呼び出した譜織流手と司が少し距離を開けながら睨み合い、同時にお互いの相方の戦いを横目で見ていた。
「はあ、フェイトの奴は、自ら進んで、詰め込み過ぎな右眼の能力ついてばらしてるし・・・」
「大丈夫、うちのれん子には全く伝わってないから、オレもいくつかの能力があの詰め込み過ぎな右眼に宿っているってことしか分からなかったから!!」
譜織流手は言葉を言い終わると同時に見るからに重厚感のある山双を軽く持ち上げ、司に斬り掛かる。
「あの、詰め込み過ぎな右眼って名前は俺が考えてやったんだ最高にダサいだろ?」
譜織流手の攻撃は司にかわされ、同時に司は能力の象徴であろう左腕を譜織流手に向かって突き出すとそこから突風が発生し、その風は譜織流手に直撃する。
しかし巻き起こった砂煙の中から、物体をすり抜けることの出来る能力、一方的好意的行為により無傷の譜織流手が現れ、再び司に斬り掛かる。
「そう?オレはいいと思うけどなー、詰め込み過ぎな右眼!!」
「おっと・・・、と言うかもう止めてくれない?なんか俺が恥ずかしくなってきた」
司は譜織流手の度重なる斬撃をかわしつつ、言葉を交わす。
そして司は話を変えるために、譜織流手の持つ魔剣について触れる。
「その魔剣、ここでは使いづらそうだな」
「まあ。ちょっと本気出したら、きっとビルが倒壊しちゃうからねー」
「そりゃあ、助かった!」
司は譜織流手の攻撃の隙を見つけ、左手で譜織流手を掴もうとするが例によってすり抜けてしまう。
「ちっ、服もすり抜けるのか」
「まあね」
譜織流手を掴もうとし、すり抜けてしまった事で、バランスを崩した司に、譜織流手は山双を振り下ろす。
「へぇー、丈夫な腕だね」
「まあな」
そこには山双を左手で受け止める司の姿があった。
一方で、れん子は困惑していた。
れん子は能力により姿を消し、何度も攻撃を加えるがどういう訳か、自分の姿を認識できていない筈のフェイトに攻撃をかわされてしまう。
「我が魔眼は汝の逆巻く思案を読み解く」
フェイトはれん子に向け、得意げな表情で宣言するものの、姿を消しているれん子はフェイトの視線の先には居らず、実際はフェイトの斜め後ろにいた。
“私の事が見えているようには思えないんだけど?“
れん子は首を傾げる。しかし、フェイトに攻撃を仕掛けると、直ぐにれん子に気づき、その攻撃をかわす、そんな事を数回繰り返していた。
れん子の思考でも、フェイトの眼にいくつかの能力が備わっている事は理解していた。
一つ目はビームを出すもの、そして2つ目は、見えない筈のれん子の攻撃をかわしたもの。
れん子の能力は透明になるのでは無く、存在感自体を低くするため、人の気配みたいな物を察知する能力では無い。
そして、攻撃を仕掛けていない時のれん子をフェイトが認識できていない事から、れん子が見えている訳では無いと予想できた。
「はあ、仕方ないか、・・・譜織流手!!」
れん子は諦めたように、存在感を普通レベルまで引き上げ、姿を現し、戦闘中の譜織流手を呼ぶと何かを投げ渡す。
「えっ?って、危ねー。今、すり抜けて壊れる所だったよれん子」
れん子の投げた物を少し慌てながら受け取る譜織流手。そしてそれが何か確認すると、れん子に向けて親指を立てる。
「OK行ってらっしゃい」
「うん行ってくる」
そして、譜織流手はれん子から受け取ったものをポケットにしまい、れん子は再び、能力を発動させて姿を消した。




