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天地堕とし、異変解決班 前編2

 「上か下か?迷うね。この異変が電波系だったら上っぽいけど、秘宝や異世界の技術による物なら下も十分有り得る。・・・よし多数決で決めようか」


 「何でそうなるのよ」


 筵は階段の前で、こめかみの辺りを人差し指で(つつ)きながら呟くと、かぐやがそれに異を唱える。


 「えー、多数決いいじゃんないか。民意の名の下に真実を捻じ曲げ、嘘を真に、真を嘘にすることが出来る最も簡単な手段なんだよ?」


 「アンタの説明から1個も良さを見いだせないわ」


 「まあやってみようよ」


 「・・・」


 結果、筵、れん子、譜緒流手、下。かぐや、繭里、上。


 「多数決反対!!」


 「まあ、待って。僕達は別に話し合ったりした訳じゃないよ。ただ、敵の行動から下じゃないかなと思っただけだよ」


 「えっ?」


 「彼は一般人もしくは、非戦闘員を上の階へ逃がしてたでしょ。僕の観察眼では彼は嘘をついていない上、見るからに武士道みたいな物を心掛けていそうだったし、一般人を戦闘には巻き込まないと思う。勿論そこまで考えていない可能性もあるけど、僕は下の方が怪しいと睨んでいるよ」


 筵が自分の見解について説明するとれん子と譜緒流手がそれに同意して、頷く。


 そして筵の意見に一理あると感じてしまったかぐやが押し黙っていると、その間に繭里が手を上げる。


 「なんか私も下な気がしてきた」


 「繭里、裏切ったわね!?」


 「まあまあ、藤居さん。僕達も、邪知暴虐な学園に梨理ちゃん達を人質に取られているんだから、筵は“激おこ“したって感じだけど、学園を除こうとなんて考えないよ?勿論わざと間違えたりなんかもね」


 「くっ、人質って、いやな言い方するわね・・・はあ、分かったわよ」


 かぐやはため息をもらすと、それに合意して、一行は下の階へ向かう。そして階段で行ける一番下の階を探索した結果、更にもう一つ下へと降りる階段を発見した。

 

 



 「天を(つんざ)く生ける屍の塔を掻き分け、此処に至るに、まず偽りの美酒を」


 「“高層ビル群の中からここを見つけ出したこと、まずは褒めてやろう“と言っている」


 ビルの最下層に降りて、やけに広い道を少し歩くと、その道の前に、筵たちと同い年程に見える右眼に眼帯を付けた少女と、左手に包帯を巻いた少年が立ち塞がり、少女の珍妙な言葉を少年が解説する。


 「我が名は水無月フェイト、滅金(めっき)を量る天秤を砕く者」


 「“世界に新しい秩序をもたらす“者らしい。ああ、俺は(あらた)(つかさ)だ」


 フェイトは様々なポーズを決めながら高らかに、司は半分呆れながらも自己紹介をする。


 「アンタ達、そこを退きなさい。ハーベスト教団なんかに所属しててもいいことは無いわよ」


 少し変わってはいるものの、同い年程に見える彼女らがハーベスト教団に所属していることに疑問を感じ、説得しようと質問するかぐや。


 しかし、かぐやの質問にフェイトたちが答える前に譜緒流手とれん子が1歩前に出てそれに答える。


 「まあ、野暮なこと言うもんじゃないよ。彼女らには、きっと世界に絶望する何かがあったんだろうさ。それに、説得なら倒した後、両手両足縛ってからでも遅くないよ」


 「まあそれは、脅しって言うと思うけど・・・。まあ、そうでもしないと止められないものもあるけどね」


 そして、1歩前に出たところから譜織流手が筵の方に振り返る。


 「筵、ここはオレ達に任せて先に行け!・・・ってな」


 「・・・はあ、まあいいか、死亡フラグと知っててそれを言うのは、逆に生存フラグだからね。ではよろしく頼むよ」


 譜織流手と筵はそう言って笑い合う。そして筵はかぐや達にも合図を送ると、全速力で走り出す。


 「おっと、行かせるわけには、いかないんだよなー、・・・っ!!」


 司はダルそうに手に巻いている包帯に手をかけ、筵達の進行を阻害しようとしたが、突然何者かの強い存在感を感じ、思わずそちら側を向いてしまう。


 そして、その隙に筵とかぐや、繭里は敵2人の横をすり抜け、奥へと進んで行く。


 

 

 「それは魔剣か?」


 「そう、これは華刀 イロジカケ。敵の標的を全て自分にするリスクがあるけど、こういう使い方もある。まあ今回は、それはプラス私の能力で存在感を最高まで高めているんだけどね」


 れん子は鞭型の魔剣、イロジカケを手に持ち、いじりながら司の質問に答えるが、れん子の容姿とその鞭は、かなりのミスマッチである印象があった。


 「うん、れん子分かったから、早く解いて、オレも目が離せないから」


 「ああ、ごめん」


 れん子は首を90度に曲げ自分を凝視している譜織流手に謝りを入れ、能力により自分の存在感を調整する。


 「くく、数奇なる邂逅の交じりし特異点・・・か」


 フェイトは独り言の様に呟き、そして笑うと、右眼を隠していた眼帯を外す。眼帯から現れたその眼は禍々しく輝き、ただの年頃という訳では無い事が伺える。


 「だが汝らの神は堕落し、ここに名を刻むであろう」


 「はあ・・・“しかしお前達の命運もここまで“だそうだ」


 司もフェイトの言葉を翻訳しつつ ダルそうに左手に巻かれた包帯を外す。現れたその手の形は普通と大差ないが、全体的に黒く腕や指にそって蛍光色の線のようなものが刺青の様に付いていた。


 「我、悪魔の宿りし右眼に、女神の破顔を刮目す」


 「“私の勝利は目に見えたものだ“と言っている」


 フェイトは右眼を強調し、司は左手を右手で持ち、戦闘態勢で構える。


 「さあ、血の饗宴を始めよう!!」


 「“血の饗宴を始めよう“・・・と言っている!!」

 

 フェイトと司はそう啖呵をきるように言うと、フェイトはれん子に司は譜織流手にそれぞれ攻撃を仕掛けた。

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