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浮世化異変で・・・ 7

 「おう、お兄ちゃん?」


 「あれ、憩ちゃん何でここにいるんだい?父さんから職場に連れて行ったと聞いたけど?」


 「ん?抜け出してきた」


 筵が能力を失っていない者が集まっていると言われていた部屋に入って最初に見た者は、2番目の妹、本田憩であった。


 憩はさぞ当たり前のように筵の質問に答えると無垢な笑顔を向ける。


 しかし、筵にとって、それは以外ではあったものの予想できない範囲の出来事ではなかったため、一旦棚上げしその教室の中を見渡す。


 そこに広がった光景は、(おおむ)ね筵の予想した通りだった。


 ざっと見て約20名。それが今の戦力のようであった。


 日室ハーレムのスチュワート、リマ、そして前回の武能祭から転入してきた白髪の少女。


 学友騎士団に所属する海堂、そして本当は筵の補佐役でハーベストでもある斬人。


 学園唯一の魔剣の使い手と言われる名雲聖とお付の幼女。


 そして、やはり理事長の姿はなく、代わりにZクラス担任の蜂鳥とおそらくAクラスの担任と思われる教師の姿があった。


 現状は筵の知りうる者だけで、3分の1ほどが埋まってしまう散々な結果であり、さらに居なくてはならない筈の男の姿も無い。


 「あれ?日室くんが居ないみたいだけど」


 「刀牙なら私達を守って怪我したのよ。軽傷だけど取り敢えず医務室に居るわ」


 「ふーん、そうなんだ」


 かぐやは筵の質問にあまり答えたくなさそうに答えるが、予想していた筵からの皮肉は飛んで来ずに少しの沈黙がその場に(おとず)れる。


 



 「かぐやさん、何故、Zクラスを連れてきたの」


 そんな一瞬の沈黙のあと、かぐやと共にZクラスのメンバーが入室してきたのを見たスチュワートは、自身の立っている教卓の前から訪ねる。


 「能力を所持している人を連れてくるように言ってたでしょ?その結果よ。それにZクラスの肩書き忘れたの?人間相手には厄介な能力のはずでしょ?今回は相手が人間なんだからこいつらの能力は役に立つはず」


 「・・・なるほど、それでは貴方達も着席しなさい。会議を始めます。今は時間がありませんから」


 スチュワートは少し考えたあと、直ぐに決断を下し着席を命じる。


 「あのちょっと、待ってもらっていいですか?」


 半ば強引に決まった作戦への参加に対し、筵は表情は何時もの半笑いのまま小さく手を挙げ異を唱える。


 「僕達の能力は厄介ではありますが、決して敵を倒せる代物では無いですよ。僕だって死んでも蘇るだけですし、・・・えっ?まさか爆弾持って学園の名前でも叫びながら突撃しろって事ですか?」


 「それは・・・」


 筵の人権を盾にした矛のように鋭い質問にスチュワートは言葉を失った。


 しかしその質問には、スチュワートのかわりに椅子に座ったまま、筵の方を見ることもしない状態の海堂が答える。


 「ああ、やってもらう。・・・そもそも学園の生徒たるもの持てる能力の範囲で全力を尽くし戦うものだ。死んでも生き返るならば、その能力を最大限活かし戦うのが道理だ」


 「いやー、さすが硬派で通っている海堂先輩は言う事が違いますね。まさに日本男児。人間がまだ国同士で争っていた頃の軍隊を彷彿とさせますね。・・・でも死ぬって怖いんですよね~、それに自爆なんて凄く痛そうだ。まあ海堂先輩は死んだ事がないから分からないでしょうが」


 さすがの海堂も“死んだ事がないから分からないでしょう“と言われたらそれに上手く返すことが出来なかった。何故ならそれは紛れも無い事実であり、普通の人間にとっては死とは一度しか無く、最も恐れるべき事象であるためであった。


 そしてそれ故に軽々しく分かったようなことは言えない。


 海堂は今度はしっかりと振り返り、筵の顔を睨む。睨む海堂に対し半笑いで返す筵、そんな状況が数秒続いた後、筵は少しだけ笑顔を誇張させ、再び喋り始める。


 「と、まあ、色々言いましたが今回は協力するのにやぶさかでは無いんです。ただ、さっきの(あしら)い方がちょっと“おやっ?“となったので揶揄(からか)ってしまっただけです」


 筵はそう言うと振り返り、れん子たち2年組の顔を見る、すると3人はおだやかな表情を筵に向け首を縦に振る。


 その顔を見た筵も、再び昨日の夜の事を確信し、スチュワートたちの方を向き直す。

 

 「但し、作戦に協力するのは僕達、2年組だけです。それと・・・」


 筵は喋りながら、生徒会室を見て回る。


 そこにはZクラスと設備が数十年は違うであろうハイテクな機器が備え付けられていて、筵はそれを物欲しそうな顔を作り見る。


 「いいですね。机の中にパソコンみたいなのがありますよ。それに黒板もモニターですね。凄いなー」


 「な、何が言いたいのです?」


 筵の行動にスチュワートは不信感を抱きながら訪ねる。


 「いやいや、僕、最近知ったんですけど、何かハーベスト戦とかでいい活躍をするとボーナス見たいのがあるらしいじゃないですか。羨ましいなーと思いまして」


 「・・・はあ、要求は一体なんですか?学園設備の向上ですか?」


 筵の言動と行動から何が望みかを確信したスチュワートは嫌そうな顔をしながら質問する。


 「ええ、まあね。でもこんな大層な設備が欲しいわけじゃないんですよ。あの一々、チョークの粉を掃除するのが大変な黒板も、木の椅子と机もモダンな感じで好きですし」


 筵は息を少しだけ多く吸い込むと要求を述べ始める。




 「僕達の要求は・・・、テレビと据え置き機、それとジョ○ョ、GA○TZとキング○ム、進撃の全巻、高級なイヤホンにブランド物のバック、本棚、それとそうですね~、納豆1年分とかですかね」



 

 筵の謎の要求に元々、生徒会室内にいた人物は唖然とした様な反応を見せ、何度目か分からない沈黙が訪れる。


 しかしながら、何を要求されるか、ひやひやとしていた分のギャップによるものなのか、筵の要求はすぐに呑まれ、ようやく会議は本題へと移行した。



 



 「まとまったのなら、会議を始めるぞ。えーっと、私から敵能力者の今までに得られた情報を伝える。・・・攻めてきた敵はハーベスト教団の能力者。構成員はこの学園に攻めてきた9人、そして中等部からの情報によりさらに2人足した、合計11人であると情報を受けた」


 場がまとまり筵たちが席についたことを確認した蜂鳥はスチュワートのいる教卓の隣で資料を片手に話し始める。


 「その内、詳細が確認出来たのは以下の通りだ」


 根本灼火。能力、人工人口爆発(フレンドリーボンバー)。触れたものを爆弾に変える能力。一年前の学校連続爆破事件の犯人。


 茶川風土。能力、毒にもクスリにも(ポイズンドラッガー)。毒と薬とクスリを操る能力。人工的に能力者作る研究の第1人者。武能祭で捕まったが護送中に脱出。元々ハーベスト教団との癒着があった模様。


 「この2人以外は、今のところ分かっていないが、使った能力についてまとめておいたから各自、目を通しておいてくれ」


 蜂鳥はそう言うと皆に渡されている資料を指さす。そこには髪の色や特徴が書かれ能力のある程度の予想が書かれていた。


 蜂鳥が報告を終えると司会はスチュワートに移る。


 「蜂鳥先生ありがとうございます。次に能力者が能力を失う異変について、この異変が起きてすぐにハーベスト教団が攻めてきたことから、この2つは関係があると考えてまず間違いないはずです。そして奴らの目的はこの機に、能力を失った能力者を始末する事の筈、故に私達のやるべき事は、1つ目に能力を失った者を守る事。そして2つ目に、この異変の元凶を突き止め解決することです。この様な大規模な工作、恐らく元凶は異世界のテクノロジーによるものか、強化合宿の時の様に秘宝を用いたものだと思われます」


 スチュワートは自身の前に置いてある紙を捲り、少しだけ間を開けると続きを述べ始める。


 「そして、この異変はおそらくですが、中心から、ほぼ円形上に能力を無効化する空間が広がっています。よってその距離を図ることが出来れば、元凶の位置をだいたい把握できると考えています。そして、その際には学園の防衛と異変解決の2つのグループに分かれ行動することが現在、最も有効な手段であると思っています」

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