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天使戦でも平常授業 1

 そうして3日間の文化祭は終りを迎えた。


 Zクラスのお化け屋敷は、それぞれの活躍により、大したトラブルも無く最終公演を終えることが出来て、来客数などの記録もほかのクラスのお化け屋敷には及ぼなかったものの、Zクラスの間取りの悪さと、開演時間が1日3時間だった事を考慮すると善戦したと言うことが出来た。


 「いやー、文化祭も恙無(つつがな)く終わったし、打上げでもする?」


 (むしろ)は本当に恙無く文化祭が終了していたとするならば、ごくごく一般的な提案をする。


 ・・・・そう、文化祭は恙無く終了する事は無かったのである、そして、正確に言うなら、まだ文化祭は終了できていない。


 閉会式を執り行っていた会場に、またしてもハーベストが出現したのである。


 それも新種、羽が生えていること以外は、人間と変わらない天使型のハーベストだったそうだ。


 そうして自らを神の使いと名乗る、天使のような姿のハーベストたちは閉会式の会場を破壊し、学園側に多大な被害をもたらし去っていった。


 


 そして現在、Zクラスには例のごとく待機命令が下され、れん子以外の全員が、まだお化け屋敷と化している教室に段ボールを轢いてゲームをしたり本を読んだりして時間を潰していた。


 ちなみにれん子はこういう時の恒例である情報収集に向かっているためZクラスを留守にしている。


 「さすがに、打ち上げする気にはなりませんね」


 湖畔(こはん)は臨戦態勢のほかのクラスの生徒たちに遠慮したのか、筵の提案を断る。


 「この状況で打上げとは流石すぎますね」


 カトリーナも寝ながらゲームをしているという、あまり人のことを言えない態勢で筵を皮肉る。


 「恙無くとか言えちゃう当たりが、さすがの屑っぷりですね」


 本を読んでいた(ふち)も本から目を離すこと無く、打ち上げに反対した。


 それらの意見を聞いていた譜緒流手(フォルテ)は淵の肩を軽く叩き、様々な反対意見にも半笑いを崩さない筵を指差して、首を横に振る。


 「筵の屑っぷりを、今更、言ってもしかたないでしょ?例えば、暴走の恐れがあるけど、物凄い力を持った主人公的な奴がいたとして、ずっとそいつに頼りっぱなしだったけど、大切な作戦のときにやっぱり暴走して、その作戦が失敗に終わったら、手のひら返して、最初から信用してなかったとか言っちゃうような屑だぜ筵は」


 「まあ言うだろうね。そんな事、経験したことないけれど」


 筵は当たり前のようにすました顔で譜緒流手の見解を認め、いつもの半笑いで答えた。




 それから、誰も喋らないが気まずくはない雰囲気の時間が数分間あり、永遠に何も起こらないのではないかと錯覚を起こす程であったが、そのタイミングでZクラスのドアが1人でに開く。

 

 本人は確認出来ないものの、それが偵察に行っていたれん子が戻ってきたことを表している事を悟った梨理は読んでいた漫画を地面に置いた。


 「おかえり、なんか収穫あったか?」


 梨理がそう尋ねると、れん子は能力を解除しじわじわと姿を表していく。


 「うん、どうやら、学友騎士団の中に、天使型ハーベストのスパイが居たらしいよ。そのせいで大量のハーベストの侵入を許してしまったんだってさ。それから、そのスパイが向こうの世界に帰る時に、日室(ひむろ)刀牙(とうが)もその子を追って消えてしまったそうだよ」


 れん子が偵察で得た情報を皆と共有する。


 すると、筵からはさっきまでの半笑いが消えさり、いつになく真剣な、それでいて険しい表情に変わる。


 そして、誰にも聞こえないくらいの小声でこう呟いた。

 


 「本当に信用のならない奴だよ、・・・日室刀牙(あいつ)は」

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