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浮世化異変で・・・ 4

 「楼さまーーーー!!」


 楼と2人の敵能力者たちが今にも戦闘を始めそうな雰囲気で向かい合っているところに、今更ながら紅來莉子の声が響き、3階にある生徒会室の窓を開きそのまま飛び降りると、楼の元まで駆け寄ってくる。


 「おいテメーら、人がお仕置きに夢中になってたら、なに寄って集って楼様に言いよってくれてんだ?」

 

 「お、おい堤。誰なんだこいつは?」


 「分からん。情報は無かったが、低質力とはいえ“天地(あめつち)堕とし“の中、能力を使えると言う事はそれなりの能力者という事だ、油断するなよ」


 見た目お嬢さまの様な容姿の紅來莉子から放たれた乱暴な言葉に敵は一瞬、動揺した雰囲気を見せたが、すぐに立て直す。


 「おうおうやる気か?、エクロキサのホウセンカは獰猛だぞ、このやろー!!」


 灼火等の様子に紅來莉子も戦う気満々で中指を立てて挑発する。


 そんな紅來莉子の様子を見た楼はため息をもらす。


 「はあ、ところで紅來莉子、ちゃんと100回終わらせてきたのかしら?」


 「えっ!?いや、や、楼様今はそれどころでは・・・」


 「どうなのかしら?」


 楼の追求に言葉を詰まらせながら、目を逸らし答えあぐねる紅來莉子、それを見て全てを察し、見下すような視線を紅來莉子に向ける。


 「自分でお仕置きを欲しがっておきながら、途中で投げ出した。そういう事でいいんですね」


 「あ、あの、その・・・謹んで続きをやらせてもらいます」


 「続き?」


 「い、いえ最初からやりたいと思います!!」


 紅來莉子は慌てながらそう言い残すと校庭の隅っこへと移動する。




 「さあ、邪魔者が消えたところで、続きをしましょうか?」


 「は、はあ?せっかく2対2になったのによー!!いいのか?」


 味方であるはずの紅來莉子を邪魔者扱いする楼の行動を見た灼火は、楼の強い能力者の持つ独特の雰囲気に飲まれかけ、格でも負けている様に思えてしまい声を荒らげる。


 「何を言っているのかしら?1対2とか2対2とか?そんな次元の話は既に終っています。・・・紅來莉子を引かせたのは、少々、興が乗ってきましたので少し本気を出そうかと思っただけです」

 

 楼は不気味で不敵な笑みを浮かべながら軽く手を上げる。


 すると周りの雰囲気が薄暗く変化して、学校の上空に巨大な魔法陣のようなものが出現する。そしてその中より多種多様、大小綯い交ぜのハーベストが召喚される。


 そのハーベスト全てに共通することとして、皆、瞳には精気がなく、首に光で出来た首輪の様なものを付けていた。

 

 そしてその数はゆうに数百を超えていて、その召喚されるハーベストは量産型が多かったが、見る人が見れば有名なハーベストも多く存在していた。




 「人道 “死線酷使(しせんこくし)“」


 


 楼は非の打ち所がある技名を呟くと、再び魔王の様な笑みを浮かべながら相手の表情を楽しそうに伺う。




 絶句。


 


 それは、この絶望的な状況に立たされた者達がとるべき行動としてごく自然であった。


 楼はそんな敵の様子を見下しながら両手を軽く挙げ、天を仰ぐようなポーズをとり、校舎から校庭で行われている出来事を唖然とした様子で見ている能力を失った生徒達に、背を向けた状態のまま、まるで演説するかのように喋り始める。




 「全校生徒の諸君。よく見ていなさい。これが貴方たちの生徒会長、いや、支配者の力。・・・さあ、怯えなさい、嫉妬しなさい。この埋めようの無い圧倒的な差に絶望なさい。そしてその劣等感と悟りの果て、自分が駒の1つ、石垣の1個である事を受け入れ・・・そして誇りなさい。貴方達の支配者を、この軍を。嬉々と見上げなさい。貴方たちが従順である限り、これは貴方達の力でもあるのだから」



 

 楼の落ち着いた、まるで独り言のような演説。それは支配者や独裁者のそれであり、その演説により歓声をあげる一般生徒たちは見えない鎖で縛られ、楼によって操られる人形の様であり、この状況すべてが楼の能力、ただ1人の操演(オールテイマー)を表しているようだった。

 

 「くそが!!こんなの聞いてねーぞ」


 「・・・・くっ、ここは一旦引くしか」


 「そんな事出来ると思いますか?」


 楼は不敵に笑うと灼火らの周りを取り囲む様にハーベストたちが降りて来て逃げ場を塞ぐ。


 「しかし、回り込まれたと言う奴です。さあ、足掻く姿を見せて下さい」



 



 「どうなってやがる、爆破しても、何度も向かって来やがるぞ」


 「・・・恐らくこのハーベストたちは既に死んでいるんだ。だから何度も向かってくる」


 灼火は爆発の能力、達人は剣を精製する能力によりハーベストたちに応戦するがゾンビの様なハーベストの集団に埒が明かない様子であった。


 そしてその上、楼の鎖にも警戒しないといけないため精神的にもキツイものがあった。


 「ゾンビ見たいなモンか?と言う事は頭を破壊すればいいのか?」

 

 「いやハーベストを操っているのはあの少女だ。頭を破壊しても意味が無いと思われる。それよりも・・・」


 達人は剣を再び創り出すと、獣人の様なハーベストの手足を切断する。


 「動けなくする方が有効的だ」


 「ははあ!!なるほどなー!!」


 すると2人はまるで水を得た肴のように身体の破損により、ハーベストたちの動きを封じる事に専念する。


 そして灼火たちは周りにいた十数匹のゾンビハーベストたちをあらかた片付けると少しの光明を見出(みいだ)し始める。



 しかし次の瞬間、その希望は一瞬のうちに崩れる事になる。



 「慈悲 “異形活性“」



 楼のさらに追加での能力の発動により、やられたハーベストの光の首輪が赤く変色して、見る見るうちに腕や足などの欠損した部分が再生していく。それどころかその再生した部分は前よりも厳つくなっている印象を受けた。


 そして、やっとの思いで動きを封じたゾンビハーベストたちが再び向かってくる様子を見た灼火たちは、先程自分たちの周りのハーベストを一掃した隙をついて逃げなかった事を酷く後悔する事となった。

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