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浮世化異変で・・・ 3

 「何処のどなたかは存じませんが、速やかに世紀末にお帰り下さい。ここは私の支配・・・ではなく、生徒会長として清く正しく統治している学園ですよ?」


 楼は先程いた生徒会室から、瞬間移動の能力によりスキンヘッドの男の前まで現れると、その男の容姿に全く臆すること無く質問する。


 「はあー?おじょーちゃん?勇敢なのはいいけどよー、この周りに転がってる人達見えませんかー?おじょーちゃんもこんな風に黒焦げにされたくなかったら、さっさと逃げた方がいいんじゃねーの?まあ逃げても追いかけて皆殺しにしちまうんだけどな、ひゃはははは!!」


 その男は見た目通りのテンションの高い感じの口調で脅すように言い、楼の表情を確認する。


 だが、それでも楼に怯えた様子なく、横目で教師陣がまだ辛うじて息があることを確認すると、その男の方を向き直す。 


 「見た目通り、品の無い喋り方ですね。・・・しかしあなたのその特徴的なお顔、どこかで見たような気がしますね?」


 「ひゃはは、そりゃ、そうだろーよ!俺様の名は根本灼火(しゃっか)、1年前の連続学校爆破事件の犯人にして、今はハーベスト教団、11人の能力者幹部の1人!!・・・あーあ、それにしてもよー!まさか脱獄して、今度は能力者の学校を爆破することになるとは人生何が起こるかわかんねーな!そう思わねーか!!」


 「ええ全く、数奇なものですこと。・・・なるほど、そう言えば居ましたね。根本灼火。名は体を表している様な人だなと思ったのを覚えています。察するに脱獄に手を貸してもらったハーベスト教団に今は所属しているという事なんでしょうね。・・・まあ、とにかく貴方が色々な事をペラペラと喋ってくれたお陰で、状況が大体把握出来ました。能力はまあまあみたいですが、頭の方はあまり達者でないようで・・・」


 楼は最初、灼火に対し空返事を返したあと、今度は筵譲りの相手の神経を逆撫でする様な喋り方で喋りかける。

 

 「はあ??そんなんおめーを殺せば、すべてチャラだろ?こっちは絶対に殺す自信があるから言ってんだよ!!」


 「ほお、なるほど、そこまで考えているなら逆に頭が良いのかも知れませんね」


 神経を逆撫でするも何も、常に声を荒らげている灼火に挑発が効いているのかは謎であり、楼はそんな状況を冷静に観察する。


 「まあー、何はとも有れだ!!お前らは残念ながら、この俺様の能力、人工人口爆発(フレンドリーボンバー)で一人残らず消し炭になる予定だからよー!!そこんとこ忘れんなよ?・・・おっと、助けが来るなんて思ってんじゃねーぞ?今ほかの連中が本物の学園の方へ行ってっからなー!!そっちに掛り切りだろうぜ。・・・今なら全裸で土下座すれば、お前だけは許してやらなくもねーぜ?ひゃはははは!!」


 「いいえ、遠慮させて貰います。私が全裸土下座をするのはお兄様に対してだけなので」


 挑発に対して見当違いの返事を返してきた楼に一瞬呆気に取られる。

 

 「はあ?なんだそりゃあ?お前の兄貴変態なんじゃねーか?」



 ビキッ!!



 「・・・まあたとえ実際にやったとしてもっ!!」


 灼火は喋っている途中、何者かのほんの少しの殺気を察知し、言葉を途切らせ、猛スピードで飛来する何かを目視で確認する。


 その何かとは鎖であった。


 楼の元から放たれたその鎖が、避けることが困難な速さである事を経験的に理解した灼火は、自身の能力を発動させ、自身の身体の近くをその鎖が身体を突刺す寸前に爆発させ、その爆風で何とか払い除けた、がしかし、爆煙によりその場の視界が悪くなってしまう。


 その状況で、その場に留まる事に危機感を感じた灼火は、視界のいい所に移動するために空中に飛び上がる。


 「ハゲゴミの分際でお兄様を馬鹿にしやがったな!!ああん!!」


 しかし、灼火が飛び上がった所には、楼がなかなかの剣幕で待ち構えていて、四方八方から先程と同じ鎖が先程と同じく猛スピードで襲いかかっていた。


 「なっ!!」


 その状況に同じ方法で回避しようとするものの、一瞬の事に能力の発動がコンマ数秒遅れてしまう。




 だが、その無数の鎖は突如、灼火の周りの空間に出現した、様々な種類の剣により防がれ、灼火の身体の代わりに剣の所有権を奪う形となる。



 「だから、下調べはしておけと言ったんだ」



 事なきを得た灼火が地面に着地すると、その背後より武士の袴を着用した長髪の男が歩み寄ってくる。


 「おい堤、ここは俺様1人の筈だろ、なんで来やがった」


 「お前1人では一瞬で敗北するだけだと思ってな。もっとも手前が来なかったらそうなっていただろうがな」


 「さ、さっきのは隙をつかれただけだぜ!!それに致命傷を避けるくらいは出来た!!お前の助けなんて要らねーよ」


 「はあ、本当に資料に目も通していなかったのか?・・・まあいい、面倒だから説明は省くがあの鎖に擦りでもしたらその時点でこちらの負けだ、肝に銘じておけ」


 そう言うと堤と呼ばれていた男は能力により剣を数本、空中に出現させてその内の1本を手に持ち、他は自分の周囲に浮かんでいる状態にして、地面に着地していた楼に剣先を向ける。


 「手前は堤達人(たつひと)、我が能力、斬斬舞(ブレードワルツ)の全力を持って、いざ尋常に勝負」


 「2対1な上、テロリストに“尋常に“とか言われても困りものですが、まあいいでしょう。1人が2人になった所で大した違いはありません。それにお兄様を愚弄したハゲのお仲間という事なら話は早い。2人仲良く死んでもらいましょうか?」

 

 楼は周囲に無数の鎖を大蛇の様に漂わせながらおよそ、世界を守る側とは思えない言葉を吐き、魔王の様な笑みを浮かべた。

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