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浮世化異変で・・・ 1

 翌日。


 見知らぬ天井を見つめながら薄っすらと目を開け、微睡みの中で旅行へ来ている事実をあやふやにしながら、ここが今どこなのか理解するまでに一瞬の時間を要するあの感覚を味わいながら目覚める朝。


 その朝はZクラスの者達のような固有能力者や、他の高レベルの能力者たちにとってはごくごく普通の朝であった。


 いや、もしかしたら、自宅以外の場所で目覚める特殊さのせいで、その朝の異変が掠れていただけなのかもしれないのだが、しかし、その朝起こった事件は紛れもない事実のようであった。


 男子部屋に集結したZクラス+αの面々は、旅行では良くある朝食後からチェックアウトまでの多少持て余した時間帯をテレビでニュースになっているその大事件をどこか他人行儀に思いながら見入っていた。




 その事件とは、都心から数百kmの範囲で能力者の能力が失われているというものであった。




 今のところ原因は不明ではあるものの、不思議なことに都心から、ある一定の範囲離れると能力は蘇るということが確認されていて、その事から完全に能力が失われたのではなく、その範囲にいると能力が使えなくなるというものらしい。


 例外として、A~Bランクほどの高レベルの能力者は普段通りに能力を発動する事が出来ると言う話であった。


 そしてニュースではこれを、“浮世化異変“と仮称していた。


 「これはあれだな。新手のハーベストの攻撃だな。アジトは何か知らねーか?」


 「うーん、あまり、現代史に詳しくないから分からないなあ。ただ少なくとも魔王型ではなかったような・・・」


 後ろから抱き付いてきている梨理の質問に対し、抱きつかれている張本人のアジトがもはや諦めたように抱擁を受け入れながら答える。

 

 すると新たな疑問を生じた譜緒流手がテレビを見ながら首を傾げる。


 「ところで都心から数百kmって、ここは入ってるのかな?オレらは能力使えるけど?」


 「お母、それならさっき、大作さん達が能力が使えなくなったって言ってたよ~」


 自身の能力で右手を左手に貫通させている譜緒流手に娘である愛巣が答え、愛巣自身も能力を確認する。


 すると、それを見たZクラスの面々もそれにつられて、能力を発動確認をして、その結果、全員が能力を失っていない事が分かる。


 「でもおかしくないですか?Zクラスのうち達は何故、能力を失っていないんですかね?」


 「カトリーナさん、多分それはぼく達の能力が戦闘向きでないだけで、能力自体が弱い訳では無いってことじゃないですかね?わからないですけど・・・」


 「そうですね。湖畔さんの言う通りだと思います。未来では今この世界での能力者の評価基準と違い、異能値と言うパラメーターが存在してまして、これは簡単に言うとどれだけ一般人から外れた御業を行う事が出来るかというものを示した値となっていて、今回はそれの低い者が能力を失ったため、皆さんは能力を失っていないという事だと思います。固有能力者の多くはこの異能値が高いと言われていますから」


 安住は何故か得意げな表情で、カトリーナと湖畔に説明をすると、それに感心を持った淵が反応する。


 「へー、そんな基準があればわたし達も冷遇されずにすみそうなものですね。一体誰が、そんな基準を作ってくれるんですか?」


 淵は興味有り気に安住に訪ねる。すると安住は秘密保持の為なのか何なのかは分からないが、淵から目を逸らし、言葉を濁していた。しかし、安住は意外と分かりやすい性格らしくチラチラと筵の方を見てしまっている事から淵も大体、答えを把握出来てしまい、鼻で笑いつつ筵の方を見る。


 「憎まれっ子世に憚るとは、まさにこの事ですね」


 「ははは、淵ちゃん、安住ちゃん達の話を総合すると未来の僕は相当すごい事になっているらしいよ。胡麻を摺るなら今の内だぜ?今なら秘書とかにして上げるよ」


 「えっ?パパなんでそれ・・・はっ」


 何かを言いかけた安住は慌てて自身の口を塞ぐ、恐る恐ると言った感じで2人の方を伺う。


 そんな感じで、色々とやらかしまくる安住が忍びなくなった筵と淵はお互いの顔を見合う。


 「・・・この話は止めようか」


 「そうですね。止めましょう」


 




 「それで、これからどうするの筵?」

 

 「うーん、そうだね〜」


 れん子が仕切り直し筵に質問を投げると、筵は腕組みをして状況を整理しつつ、学園や自宅のある街のことを考える。


 今、学園のおよそ8割ほどの能力者が能力を失い、パニック状態だろう。


 父親である根城は能力は失っていないだろうが、一般の能力者としてそれなりのポストに就いているため、この緊急事態で対応に追われているだろう。


 そして、母親の栖は出産の為、彼女の使役する世界に篭っていて、救援を送る事はあっても、恐らくこの世界には帰ってこれないと考えられた。


 そうなると2人の妹が心配になってくる。長女である楼はもしかしたら戦いに参加しなくてはならなくなるかもしれず、それに伴い次女の憩は家に1人になってしまう可能性も高かった。戦闘能力的には2人とも心配無いだろうが、精神的な面が些か心配ではあった。


 妹たちを助けに行きたい気持ちはあるものの、Zクラスの面々を浮世化の範囲内ながら、偶然にも疎開に近い状況に置けていることは有り難くもあった。



 「私は筵がどう判断しても、あなたに着いていくつもりだよ。だから好きな様に決めて・・・ああ、あと勘違いしないで欲しいけど、筵の意見に従うって言ってる訳じゃないからそこの所宜しくね」

 

 少し悩んだ様子の筵を見てれん子が、微笑みながら助け舟の様なものを出すが、その船は筵にとってハイジャックされたノアの方舟の様なものであった。


 そして困った事にそのれん子の意見がクラスの総意であるように皆が頷く。


 なかなかに厳しい二択を迫られた筵だったが、その時、ふと昨日の夜のことを思い出す。


 そして数秒押し黙り考えたあと、筵は決心を固める。


 昨日、同級生の3人に対して感じた感情が、筵に今までとは違った選択を促した。筵にはそれが正解なのかはわからなかったが、そうしたいと思う何かが感じられた。


 そして、皆に笑い掛けながらゆっくりと口を開く。


 「分かった。僕は楼ちゃんたちが心配だから一旦、学園に戻るよ。だから・・・君達も着いきてくれるかな?」

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