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クラス旅行で殺人事件 後編 2

 「まず最初に言っておくけど、この部屋のロックを鍵を使わずに開けたり、閉めたりするのは不可能だと思う。たとえ不可能でなくても何らかの証拠が残ってしまう。だがドアにはそのような形跡は全くなかった・・・そして、ロビーに確認をとったけど、保管されていたスペアの鍵が使われた形跡も無かった」


 「はあ?何言ってんだお前?それじゃあ完全に不可能じゃねーか」


 梨理は(むしろ)の発言に少し、怒ったような口調で質問する。


 「んー、そうでもないんだよねー梨理ちゃん。今、分かっている中でもその密室を破綻させてしまう者達がこの中に3人いる」


 筵そう言うと筵は片腕をあげて、人差し指を伸ばし、そしてその3人を指さす。


 「譜緒流手(フォルテ)ちゃん、れん子ちゃん、そして湖畔(こはん)だね」


 「え?」


 「譜緒流手ちゃんは能力で密室に侵入するのも密室から出ていくのも簡単だし、れん子ちゃんと湖畔は僕を殺した後、隠れていて僕がドアを開けて出ていくタイミングで一緒に出ればいい」


 筵は半笑いのドヤ顔で推理を披露しながらさらに続ける。


 「なにより、動機が揃いすぎている。譜緒流手ちゃんとれん子ちゃんは色々なことで僕に恨みが溜まっていてもおかしく無い。そして湖畔も殺す事が究極の愛情表現であるとか、ヤンデレ男の娘属性を開花してしまったのかもしれない」


 「そ、そんなのしてません」


 筵に言われのない疑いをかけられた湖畔は必死に手を振って否定し、れん子と譜緒流手は呆れたように筵を見ている。


 すると同じく呆れたように見ていた(ふち)が反対意見を述べる。


 「はあ、待ってください筵先輩、その時間、れん子先輩と譜緒流手先輩はわたし達と一緒に温泉に入っていました。というか筵先輩お風呂場まで確認しに来ましたよね?」


 ・・・・・。


 「あの、淵ちゃんそれでは、まるで僕が女湯に入って行ったみたいだよ」


 「あ、ああ!!ち、違います。男湯の方から急に“点呼とるよー“って話しかけてきて・・・って、あれはあれでかなり恥ずかしかったですからね」


 淵は自分の言葉のニュアンスの違いに気づき慌てて否定する。


 「でも筵なら下心とか無く普通に入ってきそうだけどね」


 「譜緒流手ちゃん、僕をそんじょそこらの、下心も無いけどデリカシーも無い悟り開いちゃってる系の朴念仁キャラと一緒にしないでほしいな〜。いくら緊急事態だって、僕が入って行ったら皆が恥ずかし思いをする事くらい分かってるからね」


 筵は譜緒流手の見解に、分かってないなという様な表情で、ため息を漏らす。


 「というか、他のお客さんもいるかもしれないんだから、入ってきちゃダメでしょ」


 「れ、れん子先輩それじゃあ、まるでわたし達だけなら入ってきてもいいって事みたいじゃないですか」


 淵は微笑を浮かべているれん子にまたしても慌てながら言う。


 「淵ちゃん安心して、もしも君達から、どうしてもってお願いされたとしても僕みたいな小心者は、女の子との混浴なんて出来ないから」


 「そんな頭のおかしなお願い誰もしませんよ!」


 淵のツッコミを貰った筵は満足したようにれん子と譜緒流手のアリバイに関する話を終了させた。


 そして、その流れで筵は湖畔の方を見て、何時もの半笑いを強調させ、ビシッと指を指す。


 「という事は犯人はヤンデレ男の娘こと椎名湖畔、君だ!!」


 「異議ありです!!」


 筵の犯人指名に湖畔の代わりに何故かテンションの高いカトリーナが異を唱える。


 「湖畔君はうちらと一緒に、旅館のゲームセンターに居ました。うちと梨理先輩、そして筵先輩のお子さん達が証人です」


 「なに!!」


 筵が確認するために梨理たちの方を見ると皆一斉に首を縦に振る。


 「という事は一体誰が犯人なんだ?こんな密室、常人には到底作り出すことが出来ないはず」


 筵は地面に崩れ落ち、わざとらしく項垂れたフリをしながら地面に向かってつぶやく。


 するとZクラスの身内話しで流石にしびれを切らしたのか容疑者の中年男性喋りかけてくる。


 「おい、あんまり長いと流石に俺たちも付き合いきれないんだが」


 「ああ、すみません。今までの茶番はこの事件が常人には起こすことが出来ないもので、犯人は恐らく能力者であるという事が言いたかったんです。そして事件はもう解決です」


 そう言うと筵は勢いよく立ちがあり、不敵な笑みを浮かべる。


 「さあ白状しな。この事件の犯人はあなた達3人の容疑者の中で能力を所持している誰かだ。能力者かそうでないかは調べればすぐに分かる。諦めるんだな」


 目を瞑り、完璧に決まったというような顔をしている筵が静かに目を開けるとそこには、複雑な表情の3人の姿があった。


 先程の筵の“調べれば能力者か分かる“と言うのは事実であり、能力者か隠すのは不可能であった。


 そして、筵ももう少しだけ長引きそうなこの事件を思い、斜め上の天井を見上げた。

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