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クラス旅行で殺人事件 後編 1

 筵たちが旅館に帰ると、既に一星たちの姿は無くなっていた。聞くところによると急なハーベストの出現により戦闘へと駆り出されてしまったらしい。


 このような急な呼び出しは、一星達に限らず学園に所属する生徒達にとって日常茶飯事であり、例外は筵たちの所属するZクラスくらいで、それもまたZクラスがほかのクラスから嫌われまくっている原因の一つでもあった。


 しかし、筵を中心とするZクラスの生徒達もその事に関して、完全に開きか直っていて、自粛していても、していなくても小言を言われるのなら自粛なんてするだけ無駄という悟りに至っていて、今回もそれに(のっと)り、キッチリと温泉と料理を堪能していた。


 


 そして偶然、筵が男部屋に1人の時にその事件は起こった。


 突如、後方に何者かの気配を感じた筵は後ろを振り向こうとする。しかし、その前に背中側から心臓に向かって刀で斬られたような、あるいは銃で撃たれた様な、要するに何なのか特定できない衝撃が走り、筵はそのままうつ伏せに倒れ込む。


 他の誰かなら、心臓を一撃でやられ死に至り、死体役としてこの事件に関わる事になるが、そこは卑屈で不屈の能力者、本田筵。


 数秒後、自身の能力により何食わぬ顔で復活する。


 そしてすぐに立ち上がり、犯人の姿を確認するため振り返るがそこにはすでに誰も居なかった。


 筵はゆっくりとドアへと向かい、外へ出るためにドアノブを捻るがドアは開かなかった。


 すると筵は何かに気づいたように急いで反対側の窓に向かい、開くか確認するが、そちらの窓にもロックがかかっていて開かない。


 筵は少しの時間、腕組をして目を瞑り、状況を整理する。そしてさらに十数秒たった後、パッと目を開く。


 「これは完全に密室殺人じゃないか!!」


 筵は片手をグーにしてもう片方の手に打ち付ける。そして、現場保存などお構い無しに、ドアのロックを外して男子部屋を出て、Zクラス並びに未来の子供たちの無事を確認すると、被害者自ら事件の真相を求めて調査を開始し、約1時間後、男子部屋に容疑者全員を集め、解決編を開始した。






 「僕を殺した犯人は、この中にいる!!」


 「いや、2回も言わなくていいから、と言うか全然状況が掴め無いんだけど」


 「おいおい、譜緒流手(フォルテ)ちゃんは今回は結構優力な容疑者なんだぜ?」


 筵は訳が分からずに少し困惑している譜緒流手に何時も半笑いを向けると、状況が掴めていない他の者達にも、約1時間ほど前にあった事件について説明する。


 しかし、いくら説明されても、被害者である筵は目の前でピンピンしていて、筵の能力を知っているはずのZクラスの生徒達ですら半信半疑の状態であった。


 「まあ、信じられない人はオリエンテーションとでも思ってくれていいよ。ハ〇ヒのクローズドサークルの奴みたいな感じ」


 筵がZクラスの生徒達に説明していると、ほかの呼び出された宿泊客たちが明らかにイライラした様子に変わっていた。


 「おい、俺はそんなのに、付き合っている暇はないんだが、殺人事件だって言うから来たのにとんだ茶番だぜ」


 筵に呼び出された中の、浴衣姿の中年の男性は頭を掻きながら深く溜息をもらし、部屋から退出しようとする。


 すると、それにつられて筵の知り合い以外で呼び出された若い女性と30代程の女性も出ていこうとする。


 「おっと、そちらの方々は出て行かれては困ります。さもないと“秘密をバラしますよ“」


 筵の意味深な発言に退出しようしていた者達の動きがピタリと止まる。


 「お前・・・」


 中年男性は筵の方を振り返ると睨みを効かせる。


 「なになに、これどういう状況」


 筵と中年男性の険悪な様子を見てれん子があわてた様子で尋ねる。


 「いや〜、ここに付いてからの数時間で僕はここに呼んだ3人の秘密を偶然にも知ってしまってね」


 筵はれん子の質問に答えると、続けて中年男性の方を見る。


 「積極的にバラす気なんて無いですよ。でも貴方達には僕を殺すに足る・・・かどうかは人それぞれですが、それでも動機と呼べるものが存在する。もう少しだけこの“遊び“に付き合ってもらえませんか?」


 中年男性は睨みつけたまま、筵の表情や仕草を観察し、秘密をバラす気が無さそうなことを読み取ると、諦めたように頭を掻きむしる。


 「・・・はあ、分かったよ。少しだけ付き合ってやる・・・ああ、あと念のために聞くが、こいつが死んでもすぐに生き返る能力者ってのは本当なんだな?」 


 その質問にZクラスの生徒達は頷いたことで、中年男性も納得してドアの付近から部屋の中心の方へと戻ってくる。


 「ご協力感謝します」


 筵は戻ってきた中年男性に半笑いを向けた後、続けて、まだ退出しようとしている女性2人の方を見る。

 

 筵の無言の圧力と出て行ったら犯人と疑われかねない状況に渋々、その2人も部屋の中央の方へと帰ってくる。


 全員が一応、話を聞く雰囲気になった所で、筵は少しだけ大きく息を吸い込む。


 「まあ何にせよ。この中に居るはずなんだよ。殺人事件が起こったという話を聞き、この部屋に僕の死体が横たわっているのを期待してやって来た。死体無き殺人事件の真犯人がね」

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