クラス 旅行で殺人事件 前編 5
安住の持つ魔剣、“銃持たせ“から放たれた禍々しく黒いエネルギーの球体は少し左右に振れながらも真っ直ぐにハーベスト信者の方へと向かって行き、何かに衝突して爆発し爆煙をあげる。
「はあはあ、やったか?」
安住は興奮により息を切らしながら砂煙が晴れるのを凝視していた。するとその薄らと晴れかかっている砂煙の中から聞き慣れた声が響いた。
「安住ちゃん、“やったか?“は言っちゃダメだよ」
「パパなんで!?」
筵はハーベスト信者の前に出て、日本刀型の魔剣、大皿喰らいを呼びたし安住の攻撃を防いでいた。
しかし、その攻撃を防いでいる時の衝撃波により、ハーベスト信者は吹き飛ばされて、地面に倒れ唸っていた。
「ああ〜、勘違いしないでよね。これは安住ちゃんを人殺しにしないためであって、どんな犯罪者も法で裁かれるべきで、生きて罪を償うべきだとか高尚なことを考えたわけじゃないんだからねー」
筵は自分の後ろで倒れているハーベスト信者に対して横目で見ながら棒読みでツンデレのような事を言い、安住の方へと歩いていく。
その途中で大皿喰らいをしまい、安住の元までたどり着くと安住の頭を撫でる。
「後は警察とかに任せればいいから、それしまっちゃおうか」
安住は筵に頭を撫でられると力なく、構えていた“銃持たせ“を下ろし、やがて出現させた時と同様の闇の煙のような物になって雲散霧消する。
「・・・ごめんなさい」
「いやいや、安住ちゃんにはまだ早いと思っただけで、行動自体は間違ってはいないよ。それに無限の命を持つ僕の怪我に対してそんなに怒ってくれるのは安住ちゃん位だからね、嬉しく思うよ・・・まったく、それにしても誰がそんなものを君に持たせたんだろうね」
筵の問に対してさっきまで暗かった安住の表情が少しだけ、柔らかくなり筵の方を見上げる。
「あれはパパが護身用に持たせてくれたモノだよ。小学校入学のお祝いにね」
「えっ?」
筵は未来の自分が安住に魔剣を渡したという事は予想がついていたが、小学校入学のお祝いという言葉に流石に唖然としてしまう。
小学校入学のお祝いという事は6歳の子供に魔剣を待たせたということになる。
いくら安住がしっかりしているからといって、防犯ベルを登校中や下校中に鳴らしてしまう子供のようにその銃を発砲してしまう恐れもあるため、もはや過保護を通り越しているレベルであった。
「・・・まあいいや、じゃあさっさと退散しますか。御先祖様、監視カメラの映像の隠蔽をお願いしてもいいですか?」
筵は思考停止して取り敢えず逃げることを選択し、古巣に後処理を依頼する。
「相変わらずの秘密主義じゃの〜、・・・まあ、ええか。任されてやろうかの」
「ありがとうございます。じゃあ、みんなトンズラするよ」
筵はそう言うと、安住たちを連れて、この博物館にいくつかある入口の、騒ぎになっていない方へと向かい博物館を後にした。
「全く、わっちの子孫は面白いのが多くて退屈せんわ。これだから成仏なんぞしてられん」
古巣は筵たちの後ろ姿を見ながらほくそ笑みながら呟き、筵たちが見えなくなると、先程の筵から受けた依頼をこなす為、飛び立った。
そして監視カメラの映像を管理する警備員室の様な部屋の前につき、壁を抜けてその部屋へと入っていく。
「おい応答しろ。何があった!・・・くそ、一体どうしたってんだ」
そこには私服を着た男が監視カメラのモニターの前で椅子に座り、無線に向かって必死に呼びかけていた。
その近くの床には、警備員と思わしき者達が気絶した状態で手足を縛られ倒れ込んでいて、その男がおそらく先程の集団の仲間なのだと分かった。
「好都合じゃ、わっちの銅像を破壊した罪はこいつに償わせるかの〜」
古巣は能力を解放させると、その男は自分の背後に寒気を感じ、振りかえる。
「お、お前が何故ここに!?何十年も前に死んだはずじゃ」
「ああ、死んでおるぞ。ぷかぷか浮いとるのを見ればわかるじゃろ?それに、ここはわっちを崇め奉っておるから、破壊行為なんぞしたら化けて出ても可笑しくない。違うかえ?」
古巣は脇を占めて、肘を曲げ、手首を前方に力なく投げ出す、いわゆる幽霊のポーズでその男に近づいていく。
古巣はふざけていただけだが、男からしたらそれは恐怖でしかなく、怯えた表情で椅子から転げ落ちる。
「さぁ、どうしてやろうかの〜」
古巣はそんな男を見下ろしながら、無邪気なような、邪悪なような笑みを浮かべた。
「ところで安住ちゃん。魔剣のリスクは大丈夫なのかい?」
博物館を出て少し歩いた辺りの場所で筵は安住に質問をする。
「うん、私の魔剣、“銃持たせ“のリスクは命中率が極めて低いってだけだから、まあそんなもの私の能力と組み合わせればなんの問題もないけどね」
安住の能力、絶対正解は全て物事の正解を出し実行する能力。命中率の低い銃を命中させる事など朝飯前だろう。
「というかパパは危険なモノを私たちには渡さないでしょ?」
「まあ、そういう風に努めているけど、少し不安になってね」
筵は安住に何時もの半笑いを向けると、携帯電話を取り出し時間を確認する。
「もういい時間だから旅館に戻ろうか」
一応、ハーベスト博物館は一通り回る事が出来たため、時間つぶしと言う役割は果されていた。
筵たちはそろそろ日が暮れそうな中、夕焼けと紅葉というという最高の絶景を眺めながられん子たちの待つ旅館へと帰っていた。




