クラス会議で平常授業 2
「市販されて、数週間で生産停止となった、このボードゲーム"縮図"は如何にマシな人生を送る事が出来るか、と言う事に主眼を置いて作られていて、その殆どがマイナスのマスで構成されている。プレイヤーは一般職、職人、泥棒、詐欺師の4つの職業から一つを選んでからゲームを始めるんだけど・・・」
筵はそれぞれの選んだ職業を見てつぶやく。
4つの机をくっ付けて、その上に一見ただの人生ゲームのように見えるボードゲームを置き、周りに椅子を持って来て座っているZクラスのメンバーの手には、それぞれ自分の使用する職業を表す小さいフィギュアが握られている。
それを見るに梨理、譜緒流手、れん子、カトリーナが"泥棒"、淵が"職人"で湖畔が"一般職"を選択していた。
「やっぱり泥棒に偏るんだよね」
この勝負になれている2年生組と、ゲーム好きのカトリーナは勝ちに行くためにしっかりと泥棒を選んでいて、まだイマイチこのゲームを理解していない淵と湖畔は何となく、犯罪者でない方を選んだ構図であった。
「まあ泥棒安定でしょ?」
「ああ、警察マスを恐ていたら、マシな人生なんて送れないぜ」
「一般職でも警察に捕まる時は捕まるからね。確率が少し高いだけの話だよ」
「でも、筵先輩は泥棒選んじゃダメですよ。あまり多過ぎると泥棒同士で潰し合いになりますからね」
譜緒流手、梨理、れん子、カトリーナがそれぞれ自分の前にある、泥棒のプレイヤーフィギュアをいじりながら答える。
「うんいいよ、元々僕は詐欺師を選ぶつもりだったからね。でも湖畔と淵ちゃんはそれでいいのかい?簡単に説明すると、一般職は不安定なこのゲームの中では安定的な方だけど一発逆転とかは厳しい感じで、職人は一般職より不安定で一発逆転も無くはない、泥棒と詐欺師はどっちもリスクが高いけどその分、大金を手にするチャンスがある。だけど詐欺師の方は少しトリッキーそんな感じかな?」
それぞれの職業の特性について語った筵はつづいて報酬について話し始める。
「そして、それぞれには2ターンに1度、報酬タイムがある。一般職は5万円、職人は1~10の出た目×1万円、泥棒は右回りに数えて、出た目の数値に当たる人から3万円奪う、それが自分なら報酬はゼロ、詐欺師は詐欺師カードの山札から1枚取ることが出来き、1番お金を持っている人から2万円を奪うことが出来る。まあ結局の所、有利不利以前に泥棒と詐欺師の方が面白いって言うのもあるね」
「な、なるほど・・・でもぼくは、一般職で行きます。性に合っていそうですから」
「わたしも職人でいいです。まあ、そこ良いんですけど・・・相変わらず、すごい人生ゲームですね」
筵の説明を聞いても、湖畔と淵は意見を変える事は無くお互い、最初に決めていた一般職と職人で行くことにしたようだった。
そして、淵は禍々しいネガティブな色をしたマスばかりの人生ゲームを見ると苦笑いで呟く。
この禍々しい色のマスには恐らく、お金を失う系の何かが書かれているのだろう事は雰囲気で察することが出来た。
しかし、その禍禍しい色にも赤黒や青黒、ただの黒色等、様々あり、泥棒職の人には特定の色が、そして詐欺師の人にはまた違う特定の色が光り輝いて見えていた。
筵達は初期の軍資金100万円を銀行の様なところから、それぞれ受け取った。人生ゲームで言う銀行とは少し違うのは札が1万円しかないのと、借金を示す-1万円なる紙幣が大量にある事だった。そしてそれがこのゲームがどういう物なのかを表していると言っても過言では無かった。
続いて詐欺師である筵は詐欺師カードの山札から2枚取る、それを確認すると結婚詐欺と霊感商法と書かれていた。
詐欺師カードが被らなかったことに安堵した筵は、その後に行われたジャンケンにより、一番最初にルーレットを回す事に決まった。
筵はルーレットの回す部分をつまむと、恐らくこのゲームの恒例っぽい、セリフを語り出す。
「それでは最低最悪な今世を始めようか?・・・」
筵がそう言うと、何回か頷いているZクラスのメンバーの顔を見回した。それを準備OKのサインと受け取った筵は、続きの言葉を口にする。
「では良き来世を願って!!」
ルーレットを思いっきり回すと、あの心地いいカラカラという音が教室に響き渡った。そして最初の一投目、というか一回転目の出る目に全員が注目した。