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異端覚者の英雄譚  作者: 北乃雪路
序章 変わらぬ世界、変わる自分
7/13

第6話 研修旅行の悲劇

えー、皆様大変長らくお持たせいたしました。


次の第7話は出来るだけ早く投稿できるように頑張りたいと思います。


よろしければ感想をいただけると幸いです

 研修旅行当日。

 空は雲ひとつない快晴で絶好の旅行日和だった。

暁は旅行鞄を片手に神社の鳥居前で雪を待っていた。


「お兄ちゃーん! ごめん、待った?」


 雪が俺よりもひと回りもふた回りも大きい旅行鞄を持って、(やしろ)の方から走ってやってきた。


「いいや、別に。というか荷物量多くないか?」

「女の子には色々あるの」

「そうか、なら行くか」

「うん!」


 それを聞くと男の身としては何も言えないので、俺はそれ以上は追求せずに雪を伴って、集合場所になっている学校に向けて歩き出した。




「よ、お二人さん。今日も夫婦仲良く登校か」

「それなりに力入れて殴るぞ」


 笑顔で拳を握りながらブンっと風切り音を発しながら拳を一振りする。


「悪かった悪かったって、だから拳をおさめてくれよ。お前の身体能力は覚者と同じなんだから一般人の俺がお前のそれなりの力で殴られたら確実に骨折れるし、下手したら死ぬよ」


 笑いながら謝罪し、そのまま去っていった男は俺のクラスの委員長だった。


「ったく」

「夫婦だって、やっぱり私たちはお似合いなんだよ。ね、お兄ちゃん」

「………」


 雪は夫婦と言われて嬉しかったようでニコニコ顏でこちらを向いてきた。

 違うとも言えず、そうだなとも言えない。

 返事に苦悩していると遠くの方で教師たちが集まるように指示をしているのが見えたので渡りに船とばかりに先生たちを指差しながら。


「ほ、ほら、先生が呼んでるから早く行くぞ」

「………逃げた」


 雪が頬を膨らませていたが、後ろからついてきた。



「一組はこっちで二組はこのバスだ」


 先生の指示で滞りなくクラスごとにバスに乗り込んでいった。


「お兄ちゃんと一緒がよかった………」


……約1名は不満タラタラだったが。


「そう文句を言うなよ。自由行動の時は一緒に回ってやるから」

「絶対だからね!」


 そういうとまだ不満そうだったが、素直にバスに乗り込んでいった。




 バスに揺られて数時間が経ち、山中をバスが走り、山頂付近に近づいたところでバスガイドが立ち上がり


「えー、皆さんの左右に見えますのは、旧兵庫絶対防衛圏第一要塞陣地司令部が置かれ、この防衛圏の要と言われていた第一要塞陣地を支えていた第一砲兵陣地跡でございます」


 急に視界が広がり、そこにはコンクリートで整備された広大な敷地が広がっており、魔導兵器が主流の現在では殆ど実戦配備されていない榴弾砲やロケット砲などといった大戦時代の実弾兵器がモスボール処置され、所狭しと飾られている姿はまさに圧巻の一言だった。


 周りの席からも「おぉ!」と感嘆の声があがり、もっと見ようとし窓に顔を近づけていたり特にこういうのが好きな生徒は興奮しながら一心不乱にカメラで写真を撮ったりしていた。



 大戦の最中、悪性霊体の日本侵攻によって、九州、中国、四国地方が陥落したことにより、神戸や大阪、京都といった大都市が多くある近畿地方が次の侵攻予定地になってしまい、悪性霊体の近畿侵攻を防ぐため四国方面は淡路島自体を要塞化し、中国方面は兵庫と鳥取、岡山との県境を要塞化、絶対国防圏として定めた。


 主戦場であった岡山との県境を第一要塞陣地とし、鳥取の県境を第二要塞陣地、淡路島を第三要塞陣地と区分けし、それらの要塞陣地を連結させ、神戸市に置かれた兵庫絶対防衛圏総司令部が全体の指揮を取り、各要塞陣地に置かれた司令部が各個迎撃の指揮を取り、悪性霊体の近畿侵攻を防ぐ役割を果たした要塞陣地群がこの兵庫絶対防衛圏である。


 要塞陣地群自体は大戦後の全国交通網再整備計画の関係上解体されてしまったが、山中に残っている砲兵陣地は大戦時の数少ない貴重な資料として、兵舎は大戦の資料館など改装して一般開放されている。


 神戸市に置かれていた兵庫絶対防衛圏総司令部には現在、日本国防陸軍中部方面隊の総司令部が置かれている。


「皆さん、落ち着いてくださいね。ここも見学コースに入っているので、後でゆっくり見れますから。当バスはこのままこの砲兵陣地跡を抜け、さらに奥にある第一要塞陣地司令部に向かいます」




 そのままバスは砲兵陣地を抜けて山道を走り続け、曲がり道を曲がった直後、不意に急ブレーキがかかった。


「ちょっと、いきなりどうしたんですか?」

「あ、あれ、あれだよ!」


 バスガイドが急に止まったことを不審に思い、運転手に問いかけると運転手は震える指先を正面に向けながら半狂乱になって叫んでいた。

 指を指した先には2mぐらいの大きさで裂けた口に大きな鉤爪を持った申し訳程度に人の形をしている見るに堪えない醜悪な容姿をした怪物が立っていた。


「ま、まさか、悪性、霊体……」


 ギョロリと大きな目をこちらに向けると口を大きく開けると大きな咆哮を上げ、獲物を見つけたと言わんばかりにこちらに向かって走ってきた。


「う、うわぁぁぁぁぁ!?」「な、なんで、なんであの化物がこんな所にいるんだよ!?」「助けて、神様!」「俺たち全員喰われるんだ!」


 バスの中では至る所で悲鳴があがり、先生とバスガイドは懸命になだめようとするが怯えている生徒たちには焼け石に水だった。

 バスは急いで方向転換し、もと来た道を引き返そうとしたが、後ろから来た二組のバスが丁度曲がり角を曲がって来た直後で、二台のバスはぶつかり、そのまま勢いを殺せずに二台とも山道のガードレールを突き破って、下に落ちていき、物凄い衝撃が身体を襲い、俺はそのまま意識を手放してしまった。






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