六月の夜
掲げられた戦利品に、三人は一様に不可解な顔を向けた。
「それ、俺が置いてきたものじゃないぞ」
という清治の言葉を捕まえ損ねてぽかんとする陽に、
「東根が置いてきたのはタオルだよね。鈴なんてどっから持ってきたの」
怪訝に眉を寄せる夢子。その言葉に寒河江が乗っかる。
「タオルって、階段の手摺に結んであったのですよね。私、結構隅々まで調べてきたんですけど、こんな鈴どこにもなかったはず……。ちょっと隹先輩、もしかしたらコレ、持ってきたらマズイもの持って来ちゃったんじゃないですか」
鈴の音が耳障りなのか、フュシスは逃げるように主の後ろへ隠れた。
「……マジ?」と陽は頬を引き攣らせた。
返してきたほうがよいのでは、という寒河江の意見により今度は全員で――フュシスは留守番だが――山に入った。
言葉少なに山頂の神社へたどり着き、鈴を元あった場所に置いた四人は念の為に拝礼し柏手を打った。気味の悪い雰囲気を引きずったまま正面階段を降りていると、
「ほら、あれ」
清治がライトで照らした先、階段の中央にある赤い手摺にタオルが結び付けられていた。普通に歩いていればまず見落とすことは無いと思われたが、
しかし――
「こんなタオル、見覚えないぞ」陽の記憶にはなかった。
皆を担ごうと嘘を吐いているのでは、と疑う三人であったが、呆然とした陽の顔に真実の色を読み取り、息を飲み込んだ。
湿った大気が林間を流れ、ゆっくりと、しかし強かな風が木々を揺らした。
「今、鈴の音がしなかったか」
清治のつぶやきに全員の背筋が粟立つ。
張り詰めた神経が、暗闇と木々のざわめきの底で幽かな鈴の音を幻聴する。あとは針で突っつくだけだった。「もうやだぁっ」と小さな悲鳴を上げて寒河江が駆け出したことで、膨らみきった恐怖が弾けて雪崩れを起こす。
場の雰囲気に巻き込まれた四人はそれぞれ声にならない悲鳴を上げ、一目散に逃げ出した。
「ちょ、ちょっとまてお前ら!」出遅れた陽は足をもつれさせながら三人を追いかける。
冷たい汗が流れる頭の隅でふと、鈴を鳴らしたのはゆーこではないかと思う。
「わああーっ」
ヤケクソのように叫ぶ喉の奥からは、陽の意思とは関係のない笑みがあふれていた。




