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まだ知らない感情

その後一番最後に夕飯を食べた私は後片付けをするおねいと、テレビを見ながらくつろぐ隼人の目を盗んで、避けておいたコロッケを持ってそろーっと自分の部屋に戻ったの。


「うぅ、さよなら……私の大好きなコロッケ……」


今にもあふれそうな涙をぐっと我慢して、コロッケが乗った小皿をまだぬいぐるみのフリをしている、ぐれっちょんの前に置いた。


するとぐれっちょんは耳をパタパタさせて、コロッケを素早く取ると、一口で食べたの!


「ち、ちょっとぉ!おねい特製コロッケ、もっと味わって食べてよねっ!」


「腹がへってたんらぁ、ひかたねーらよ!にひても、うめぇー」


あぁー、私のコロッケが、ぐれっちょんの胃の中に……。


私はその場にガクッとうなだれる。


いきなり初日から、こんなだなんて……これからやっていけるのかな。


食べ物のうらみは怖いんだからねっ!


「ちょっと物足りねぇけど、旨かったから良しとすっか」


ぐれっちょんはそんな私の気も知らず勉強机の上に寝転んで、お腹を擦ってるし……。


何だか凄くおやじくさい。


悪魔を倒してくれって言ってた割には全然焦ってるように見えないというか…危機感がないのよね。


それに悪魔がいるような気配なんて、全然しない。

いたって平和な、いつもの日常。


「ねぇ、ぐれっちょん。悪魔って、いつ出てくるの?

全然悪魔なんて、いないじゃない。気配もないし」


私は勉強机の椅子に座ると、目の前のぐれっちょんはむくりと起き上ってあぐらをかき、何かを考えるように難しい顔をしたの。


「うむ、悪魔はな、常にそううじゃうじゃいるもんじゃねぇんだ。

悪魔が姿を見せるのは"対象となる人間を見付けた時"だ。

人間の醜い心……まぁ負の感情だな。誰かを恨む心、妬みや嫉妬。何かを拒否する気持ち……とにかく様々な負の感情だな」


「その"負の感情"を持つ人のところに、悪魔がやってくるの?」


負の感情っていうものが、いまいちどういうものか分かりにくくて、私が首を傾げた。


だって負の感情なんて、私は感じたことがないんだもん。


それとも大人になれば分かるのかな…?


「ああ、そうだ。負の感情を持つ人間に悪魔は取り入り、負のエネルギーを吸収するんだ。

悪魔に取り入られた人間は脱け殻のようになってしまい、元に戻れなくなっちまう。

そうなってしまう前にお前達に悪魔を倒して欲しいんだよ」


「う、うん、それは分かったけど……」


やっぱり負のエネルギーや負の感情というものが、どういうもので、どうして悪魔がそんなにそれを狙うのかが、よく分からなくて実感が沸かないや……。


私がぼんやりしていると、ぐれっちょんが、何だか怖い顔をして、私の顔をじーっと見つめてきた。


「な、なによ、急に……」


「いや、何でもねぇよ…。それより、飯食って腹いっぱいになったし寝るわ」


そう言うと、ぐれっちょんはそそくさと自分の耳にくるまって、目を閉じてしまう。


「え、えー、ちょっと待ってよー!まだ話の途中じゃないっ!」


「ぐー……ぐげー……」


軽く揺すってみるも、もうぐれっちょんは既にいびきをかいて夢の中……。


もうっ、すっごく気になるじゃないー。


でも寝ちゃったし、また明日聞けばいっか……。


とりあえず明日の時間割りの教科書の用意をして、お風呂に入ろっと。




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