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さて、歪な物語は少しはマシな形で終わりを告げたのかな。
後始末が大変そうだけど。
ただ働きどころか、払う対価もあるので泣けてくるよ。
今回がんばってくれたヒーローは威勢よくバラバラになってくれたけど、これってやっぱり僕が直さないといけないんだろうね…。
…ん?
エリちゃん、だったかな。彼女がもってるこの箱ってもしかして。
*---*
「あれ?」
何をしていたのだろう。
エリは床に横たわっていたまま我に返った。
すぐ隣にはアキがいて、こちらはまだ眠ったままだ。
何か、凄く気持ちの悪い夢を見ていた気がしたのだが。
もやもやとして思い出せない。
「チャーリーさんがいるって事は理科室だよね? て、わっ。外真っ赤。ちょっとアキちゃん起きて起きて!」
「ん、何よ…。て、あれ? なんでここで寝てるのあたし」
「私が聞きたいよ。それより時間々々」
「え? え? えーーーー!? ちょ、やばい、あたしお母さんに怒られる」
「私も、私もー」
二人は慌てて立ち上がる。
「というか、先生。鍵閉めにこなかったのかな」
「よく忘れてるじゃない、あの先生って、あれ?」
「ん? なに? アキちゃん?」
「さっそく、つけてるの? それ」
アキの視線の先は、エリの左手に注がれていた。
薬指にはプラスチック製の指輪。
「あ、れ? いつの間に。でも、ちょうどいいや、チャーリーさんに」
「はめてるじゃん」
アキの言葉通り、人骨模型の左手薬指には針金ではなく、エリと同じプラスチック製の指輪がはめられていた。
「おっかしいな。いつ取り替えたんだろう」
「本人が覚えてないってどういう事よ。って、それより早く帰らないとっ!」
「あ、そうだった。じゃ、チャーリーさん。また明日ねー」
「あんた、骸骨に挨拶までしてどうするの!」
「だって、婚約してるんだよー」
パタパタと、足音が理科室から遠ざかっていった。
*---*
我輩は私立方利辺小学校の理科室に配属された人骨模型である。
名はチャーリー。
チャーリー・ブラウン。
婚約済み。
仕事は見られる事。
そして、婚約者エリー・ブラウンを守る事である。
*---*
完