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7 INTRODUCTION~悲しみの前奏~(1)
……あれ? ここはどこだろう?
見たことがあるような、それでいてないような、そんな景色が広がっている。
…………どうして左目が見えないの?
「あー、こら、勝手に外出るなって言ってるのになぁ」
少年の声が聞こえてきた。
振り向いたのはいいが、この位置からだと顔は見えない。
「……たまにはいいと思った?」
自分が何かを言ったが、聞こえない。
……これは、夢?
それにしては……鮮明だけど……。
少年の元に向かって走る。
どんなに近付いても、彼の顔はぼやけていて見えない。
「――――?」
なんで自分の声が聞こえないんだろう。
そして、あなたは誰?
「父様が帰ってきたのはいいけど……向こうの女もついてきちゃってるんだ」
「…………、――。――――!?」
「そんなに怒らないでくれるかな。……ん? 僕に対してじゃなくて、あの女に対してか。どうしてまとわりついてくるんだろうね」
知るか。
とにかく、誰なのか教えて。
……そして、なんで聞こえないのかな? これじゃあ何話しているのか分からないし。
「え、僕は――――」