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第二話 リスポーン

魔獣に喉笛を噛みちぎられ俺の転生生活は幕を閉じた。

 ……はずだった。

 誰かの声が突如響き渡る。

「ちょっと勝手に終わらせないでくれるかしら」

「あれっ?ここは?」

目覚めるとそこは東神高校の教室によく似た場所だった。

 また、教卓には鮮やかな桃色髪の純白のドレスを着た女性が立っていた。

 女性が話し出す。

「はぁい、目は覚めたかしら私はナビゲート・システム

 気軽にナビ子って呼んでね♪」

 女性は軽い調子でナビ子と名乗る。

「ここはどこだ?俺は死んだんじゃないのか?」

 事態がうまく飲み込めずナビ子と自称する女性に質問する。

「えぇ、あなたは確かに死んだわ、けれど終わったわけじゃない」

 言葉の意味が分からずまた質問する。

「死んだのに終わってないってどういうことだよ」

 ナビ子が俺の質問に答える。

「簡単に言うとあなたはリスポーンすることができるわ」

 その言葉に俺は驚きの声を上げる。

「はぁ⁉︎リスポーン⁉︎そんなことができるのか⁉︎」

 ナビ子が説明を始める。

「あなたが転生したのは『ノクス・マギア』というゲームの世界、これは分かっているわよね?」

「あぁ、ゲームを始めようとしたら発作が起きて気づいたらこの世界にいたんだ」

 まさかとは思うがゲームの世界だからリスポーンできるなんて言わないだろうな。

「この世界はシステムに支えられているの

 そしてあなたはそのシステムに保護されている

 だからあなたは死ぬことはないわ、他のキャラたちは死んでしまうけどね」

 おいおいマジかよ、これじゃあ本当にゲームの世界じゃないか。

 ちょうどいい機会なのでこの世界に来てからずっと疑問だったことを聞く。

「なぁ、俺がこの世界に来た理由はなんなんだ?

 俺にやらせたいことでもあるのか?」

 俺の質問にナビ子が答える。

「特に無いわ、強いて言うならば物語(ストーリー)を終わらせることよ」

 ナビ子の答えを反芻(はんすう)する。

「物語を終わらせる……か、でも俺はこのゲームについて何も知らないぞ?本当に物語を終わらせられるのか?」

 俺の吐いた弱音にナビ子が答える。

「大丈夫よ、きっとヒロインたちがあなたを導いてくれるから」

 とりあえずの方針が決まったので動き出すことにする。

「それじゃあ、もうリスポーンすることにするよ」

 そんな俺にナビ子が声をかける。

「あなたは魔獣を倒した直後にリスポーンするから後ろに気をつけてね」

 そして一拍置いた後さらに言葉を続ける。

「きっと……この物語を終わらせてね」

 言葉の意味が分からず俺は尋ねる。

「それって、どういう……」

 だが、すぐにリスポーンが始まり意識が遠のいていく感覚がする。

 意識が遠のいていくなかナビ子が思い出したかのように

 言葉を投げかける。

「そうだ、向こうの私にもよろしくね♪」

 どういうことかと尋ねようとするが声に出ず、意識が落ちる。


 目が覚めるとナビ子の言葉通り魔獣を倒した直後にリスポーンしてようだ。

 とっさに後ろに振り返る。

「危ない‼︎」

 魔使さんの声を後ろ手に聞きながら襲いかかる魔獣を撃退する。

「【切断(ディバイド)】‼︎」

 魔獣は真っ二つに裂かれ息絶える。

 その後魔獣は小さな石となって消える。

「何だこれ?石?」

 俺の疑問に魔使さんが答える。

「それは魔石、魔獣は死後魔力を宿した石になるの

 そんなことより、早く現世に戻るわよ

 ここにいたら命がいくつあっても足りないわ」

 こうして俺たちは無事に現世に戻ることができた。


 現世に戻って来てすぐに魔使さんが話し出す。

「ねぇ、今晩だけでもあなたの家に泊めてくれないかしら」

「え゙っ⁉︎」

 突然の頼みに言葉が詰まる。

「実は私、家出してきたの、お父様と色々あって飛び出すようにね」

 魔獣と契約するために間界(はざまかい)に来たと言っていたがそれと関係があるのだろうか?

「う〜ん、うちには父と姉がいますから俺の一存だけではなんとも言えませんし、ひとまず家まで来て大丈夫か聞いてみましょう」

 正直、ヒロインだから以前にこのまま見捨てるというのも心苦しいからどうにかしてあげたいが大丈夫だろうか?

 だがまぁ、魔使さんがいることで性格の違和感なども誤魔化せるかもしれないし是非とも泊まっていただきたいかぎりだ。


 そして家にたどり着き、なるべく自然な感じで中に入る

「ただいまぁ〜」

 奥から一人の女性が出てくる。

 その女性の姿を見て、俺は一瞬驚愕した。

 着ている服は全く違うし、髪も少しくすんだ色をしているがその姿は間違いなくナビ子そのものだった。

 そしてすぐに思い出す。この女性は黒峰桃子(くろみねとうこ) 黒峰刀也の四つ年上の姉だ。

 この世界に来て始めに記憶が流れてきた時は一瞬だったから忘れていたがナビ子と黒峰桃子は顔が瓜二つなのだ。

「あら遅かったわねご飯できてるわよ」

 帰りが遅くなってしまった上に頼みごとをするのは

 とても心苦しいが仕方がないので思い切って言うことにする。

「あの〜、突然で悪いんだけど知り合いを家に泊めちゃだめかな?」

 俺の提案に黒峰桃子は戸惑っているようで、遠慮がちに聞いてくる。

「えっ?知り合いって誰のこと?」

 ここで魔使さんを紹介する。

「さっき知り合った人で魔使さん、家出してきたそうだから今晩だけでも泊めてくれないかって」

 魔使さんも家に入ってきて自己紹介をする。

「えっと、魔使優奈です。どうか今晩だけでも泊めてくれませんか?」

 黒峰桃子を見ると唖然(あぜん)としていた。

 数秒ほどフリーズした後、弾かれたように動き出す。

「お父さーーん‼︎刀也が女の子連れ込んだーー‼︎」

 とんでもない誤解につい声が口に出る。

「姉さん‼︎魔使さんはそういうのじゃないから‼︎」

 自然と姉さんと呼んでしまったがどうやらこの体は

 黒峰桃子を姉さんと呼ぶのが自然なようだ。

「なんだって⁉︎刀也が女の子を⁉︎」

 姉さんの大声に奥からもう一人、甚平(じんべい)を着た男性が出てくる。

 少しボサッとした黒髪に黒目と黒峰刀也をそのまま中年にしたような見た目の男性、黒峰刀重郎、黒峰刀也の父親だ。

 誤解をしている二人に改めて事情を説明する。

 ただし、契約は流れでしてしまったということにした。

 事情を聞いて、姉さんが口を開く。

「なぁんだ、そういうことだったのね。

 私てっきり刀也が女の子を連れ込んだのかと」

 姉さんの言葉に父さんも続ける。

「そういう事情があるならぜひ泊まっていくといい

 だがまぁ、二人ともお腹が空いているだろう。

 まずはご飯にしよう。

 桃子、魔使さんの分も用意できるか?」

 父さんの質問に姉さんが答える。

「そうね、明日のお弁当用に作り置きしておいたものがあるから用意できるわ。

 あと刀也、本当は今日はあなたが食事当番だっんだからね。今日は私が作ったけど明日のお弁当と夕食はあなたが作るのよ」

 どうやら食事当番は交代制らしい、一人暮らし歴2年の料理でどこまでいけるものか。

「あの、本当に急なことにも関わらずありがとうございます」

 魔使さんが唐突にお礼を言い出す。「まぁ、一応魔使さんのおかげで助かったからな

 そのお礼と思ってくれたらいいよ」

 本来は俺は無関係なので泊めてあげることを恩に着させるような発言は心苦しいが、今の体は黒峰刀也なのでいいだろう。

 その後食事をとり、改めて話しをする。

 最初に切り出したのは父さんだった。

「じゃあ、改めて自己紹介だ、私は黒峰刀重郎、黒峰刀也の父だ」

 そこに姉さんも続く。

「私は姉の桃子よ」

 父さんが真面目な顔をして話し出す。

「それでだ魔使さんあなたは魔使優奈と言ったね

 ということは七大魔家の一つ、魔使家のご令嬢ということでいいかな」

 魔使さんの態度が急激に硬くなる。

 七大魔家ってなんだ?

 父さんはそのまま説明を続ける。

「日本全国にいる魔術師、その中でも頂点に位置し、日本全国を七つのエリアに分けてそれぞれを守護する七つの魔術師の名家、【星詠(ほしよみ)】、【四元(しげん)】、【呪禍(じゅか)】、【(きざみ)】、【祈闘(きとう)】、【術木(すべき)】、そして【魔使】、君はその一族の者なんだろ」

 魔使さんが驚きながら逆に質問をする。

「そこまで知っているということはあなたも魔術師なのでしょうか?」

 魔使さんの質問に父さんが答える。

「あぁ、そうだ千年以上の歴史を誇る七大魔家ほどではないがこれでも200年の歴史をもつ家だ」

 やはり黒峰家も魔術師の家系だったらしい。

 というか、魔術が使えなくて契約したのに本当は黒峰刀也が魔術を使えたなら怪しまれるんじゃないか?

 だとしたらまずいぞ⁉︎

 父さんが話しを続ける。

「刀也は事情があって魔術が使えなくてね、だから君が契約してくれて助かったよ、まさか人と契約できるとは知らなかったがね」

 黒峰刀也は元々魔術が使えなかったのか‼︎

 ということはやはり物語が始まるにあたって魔使さんとの契約は必須イベントだったということか。

 さらに父さんが話しを続ける。

「それで本来は北海道地方担当の魔使家が三重にいるということは日魔長決議(にちまちょうけつぎ)が始まったということかな?」

 魔使さんが目を見開いて驚く。

「そこまで……知っているんですね、えぇ私は日魔長決議に参加しようとした父に着いてきてこの地に来ました」

 日魔長決議ってなんだ?俺の疑問に答えるように

 魔使さんが話しを続ける。

「日本全国の魔術師が所属する日本魔術組合、その(おさ)であり全国の魔術師を統括する魔術長それを決める儀式である日魔長決議が昨日の5月10日から始まりました」

 魔使さんは少し言い淀んでから意を決したように話す。

「本来であれば魔術長の候補者には七大魔家の当主が選ばれます、ですが何故かお父様の代わりに私が候補者に選ばれたんです」

 そう言って魔使さんは右手の甲を見せながらその手に魔力を込める。

 すると、手の甲に太陽を模したような紋様が浮かび上がる。

 魔使さんは紋様に触れながら話しを続ける。

「候補者を選ぶ魔道具が何故父ではなく私を選んだのかは分かりません、ですが選ばれた以上私は挑みたいと思った、父は魔獣と契約ができていない私に無理だと言って

 棄権を進めてきて、私はそれに反発して魔獣と契約してくることで父に日魔長決議の参加を認めさせようとしたんです、後はお話しした通りです」

 なるほど家出の経緯はそんな風だったのか。

 一つ疑問が浮かんだので魔使さんに質問する。

「なぁ、魔使さん、日魔長決議って具体的に何をするんだ?」

 俺の質問に魔使さんが答える。

「日魔長決議は候補者として選ばれた7人の魔術師同士での闘いよ、期間は決議が始まる5月10日から30日間

 あらゆる場所、あらゆる時に闘いが起きるわ、

 参加者のうち6人が死亡もしくはリタイアすると決議が終わり新たな魔術長が決まるわ」

 俺は日魔長決議の内容に驚く。

「それってつまり殺し合って決めるってことかよ⁉︎」

 俺の言葉に魔使さんが冷静に答える。

「魔術師は間界(はざまかい)から魔獣が溢れ出ないように間引いたり、魔術を悪用する魔術師を倒すのが仕事よ、その長であるならば最強でなくてはならない、別に普通のことよ」

 それに、と魔使さんが付け加える。

「それに、絶対に殺さなきゃいけないわけじゃないしね」

 魔使さんの言葉に確かにとなりつつもどこか判然としない。

 これは俺が現代日本から転生してきたからだろうか?

 魔術師ではこの価値観は普通なのか?

 俺が言葉に詰まっていると魔使さんがまた話し出す。

「でも、もう私はリタイアしようと思うわ」

 その言葉に俺は驚き、咄嗟に言葉を発する。

「えっ⁉︎それでいいのか?魔使さんは日魔長決議に参加したくて家出したんじゃないのか?」

 魔使さんは命の取り合いに別段恐怖している様子も無かったので参加するつもりだと思っていたのだがどういうことだろう?

 魔使さんが話しを続ける。

「あなたとは契約ができたけど魔獣とは契約できなかった、あなたやお父様にこれ以上迷惑をかけるわけにもいかないし、もしできるなら契約を解除する方法を探さないとあなたも困るでしょう?」

 確かに魔使さんの言葉は一理ある、だが本当にそれでいいのか?

 今魔使さんは自分の意思を押し殺し、他人の都合を優先している。

 もしかしたら、このまま魔術と関わることをやめることで彼女は幸せになれるかもしれない、でももしそうでないならば?ここで彼女が諦めることで彼女が不幸になる可能性があるというのに見捨ててもいいのか?

 それに、もう一つ懸念もある。

「なぁ魔使さん、一つ質問なんだがもし魔使さん以外が魔術長になったらどうなる?」

 俺の質問に魔使さんが少し思案し、答える。

「そうね、特段何も変わらないかもしれない、けれど魔術師は基本的に好戦的な人々よ、私だって命の取り合いには

 何の恐怖も抱かない、そして魔術師によっては民間人を巻き込むことを何とも思わない人もいるわ、

候補者にそういう者が選ばれるとは考えたくないけれど」

 魔使さんの答えを聞いて考える、少なくとも魔使さんは

 戦いに民間人を巻き込むような人ではない、そしてもし他の候補者が民間人を巻き込むような奴でそいつが魔術長になってしまったら民間人に犠牲が出るのではないかと思う。

 だから、魔使さんに一つ提案をする。

「魔使さん、提案だ俺と一緒に日魔長決議に参加しないか?」

 魔使さんは驚き、答える。

「でっ、でも危険な儀式なのよ、あなたにも迷惑がかかっちゃう」

魔使さんの反応は予想通りだ、だから一気に畳み掛ける。

「確かに危険かもしれない、だが民間人を巻き込むような奴が候補者にいたらそいつの優勝を止めなくちゃならない。魔使さんだったら信頼できるからもし、魔使さん以外の候補者が危険な奴なら魔使さんに魔術長になってほしい」

 そう言った俺に魔使さんは反発する。

「信頼ってまだあなたと私は出会ったばかりよ⁉︎」

 魔使さんの言葉にさらに返す。

「でもあなたは俺を助けてくれた」

 魔使さんがさらに答える。

「それは私が助かるために必要だったからであなたのためじゃない!」

 俺はそんな魔使さんにさらに返す。

 「あなたは最初、自分が魔獣に襲われているときに、俺に逃げろと言ってくれた、それだけで俺はあなたを信頼できる」

 魔使さんの目をじっと見つめながら魔使さんが言葉を発するのを待つ。

 とうとう魔使さんは諦めたのか、

「分かった!分かったわよ!そんなに言われちゃ参加するしかないじゃない!」

 と言い。さらに魔使さんは付け加えて言う。

「けど本当にいいの?私自身は戦えないから

 矢面に立って戦うのはあなたなのよ」

 魔使さんの言葉に俺は当然といった感じで返す。

「それくらいの覚悟はできてます」

 魔使さんは完全に納得したようで右手を差し出す。

「それじゃあ、これからよろしくね」

 俺も右手を差し出して握手を交わす。

「はい、よろしくお願いします」

 俺たちの様子から話しがまとまったと見て父さんが話し出す。

「話しはまとまったようだね、今日はもう遅いから

 お風呂に入って寝てしまいなさい」

 父さんに姉さんも続く。

「優奈ちゃんは着替えとか持ってないでしょうし、

 私の服を貸してあげる、なんだか妹ができたみたいで嬉しいわ♪」

 魔使さんは恐縮したような感じでお礼を述べる。

「何から何までありがとうございます」

 その後風呂に入り、俺は自室に、魔使さんは客間に布団を敷いて眠った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

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