第一話 ゲームスタート
初投稿です。不定期に更新します。
ピンポーン、とチャイムの鳴る音がする。
俺、炎上寺心也は玄関に出向き、宅配便を受け取る。「やっと、届いたな『ノクス・マギア』
早速やってみるとしよう」生まれつき体が弱かった俺は人生のほとんどを病院で過ごし、すっかりゲームとアニメ鑑賞が趣味のオタクになってしまったが
それなりに充実した人生だと思う。
さて、この『ノクス・マギア』を買った理由だが、理由は二つある、一つはゲーム紹介に載っていたヒロインが好みだったこと、もう一つは
主人公の名前が黒峰刀也と少し自分の名前に似ていて気になったからだ。このゲームはバトル要素のあるノベルゲームで大まかに3つのルートがあるらしい。舞台は現代日本だが魔獣が存在し、人々は魔術を使い魔獣と戦う、そんな人々は魔術師と呼ばれ、ゲーム本編ではそんな魔術師の日本でのリーダーを決める儀式に主人公黒峰刀也は巻き込まれ、運命を変えていく……
といったストーリーらしい。
「さてと、ディスクをパソコンにセットして
始めるか!」俺はパソコンにディスクをセットする、だがゲームを起動しようとしたその瞬間
俺の心臓がはね上がる。
「ぐぅぁっ!?」
発作が起きたのだと瞬時に理解する。
とっさに薬を飲もうとするが生憎と薬はキッチンにあるため手元には無い。
荒くなる呼吸、暗くなっていく視界、
そうして俺は意識を失った。
意識が落ちていくなかで誰かの声がした。
「君は僕を楽しませてくれるかな?」
「刀也、もう六時だよ、学校が閉まっちゃう前に帰らなきゃ」
「んっ、ここは?」声をかけられて目を覚ます。
ここは学校の教室だろうか?夕焼けの光が教室を茜色に染めている。
半目開きの目で俺を起こした人物を見る。
どうやらこの黄金色の髪の美青年が俺を起こしたらしい。
誰だ?俺はこんなやつは知らない、もし既に会っていたのなら忘れようのないほど顔が良い。
直後、俺の脳に誰かの記憶が流れ込む。
どうやら、この青年は俺の親友で名を術木薔薇
と言うらしい。
「どうしだんだい?そんなに呆けた顔をして、
僕は先に帰るからまた明日」
そう言って青年は教室を出ていく。
「あぁ、また明日‥‥」
そして俺は一人教室に残された。
いやいや、待て待てどうなってる⁉︎
俺はついさっきまで部屋でゲームをしようとして発作が起きて気絶したはずだ。
なのに今は夕方の教室にいる。それにさっきの記憶、少しだけだが自分のことも頭に流れてきた。
自分の名前は黒峰刀也、黒髪黒目で東神高校のニ年生この記憶が間違っていなければ俺はいわゆる異世界転生ってやつをしてしまったのではないか?
やりこんでいたゲームの世界に転生するというのは見たことあるけど、まさかやったこともないゲームの世界に転生することになるとは。
というか、事前情報ほぼ無しで始めようとしたからこの世界についてなにも分からないのだけど、バトル要素があったはずだから、主人公は戦うのか?
俺は戦えるのか?何も分からないがひとまず帰るとしよう。幸い、先程記憶が流れ込んだ時に帰り道も分かったしな。
「考え事をしていたらすっかり暗くなってしまった」俺は暗い夜道を一人歩いていた。空には星が舞っていてまるで海のようだ。
ひとまず家に帰ろうとしているが黒峰刀也の家族をどう誤魔化すかが問題だ。
「家族だしなぁ、絶対にばれるよなぁ」
黒峰刀也の家族は母親がすでに死んでいて
父と姉と共に3人家族で暮らしているようだ。
一瞬、記憶が流れ込んだ時に悪感情などは感じなかったことから家族仲も良さそうだ。
そんなことを考えながら歩いているとふと、
一人の少女が目に入った、腰ほどまでに伸びた茶髪、ブラウスにベストとロングスカートを着た姿は間違いなくヒロインの一人魔使優奈だ。
どうやら路地裏に入ろうとしているようだが、何をするつもりだ?
その瞬間俺はある考えを閃く。
もしかして、これは物語が始まる時のイベントなのではないか?ここで黒峰刀也が魔使優奈を追いかけることで何かが起きて物語が始まるのではないか。そう考えた俺は魔使優奈を追いかけることにした。
魔使優奈を追いかけて路地裏を進んでいくと、先程までいた町によく似ているが空が赤黒く別の場所だとわかる場所に出た。
「きゃあ⁉︎」
どこかで女性の悲鳴が聞こえる。おそらく、魔使優奈だろう。
すぐに悲鳴が聞こえた場所まで走る。
そこでは先程見た少女が何にも形容しがたい四足歩行の化け物に襲われていた。
「ば、化け物⁉︎」あまりの衝撃につい、声を出してしまう。
すると、少女と化け物が両方ともこちらを認識した。
「来てはダメ!逃げて‼︎」
少女が叫ぶ、それと同時に化け物がこちらに向かってくる。
戦い方など知らない、そもそもこの世界で主人公は戦えるのかもわからない。
「Guaa‼︎」
俺が慌てふためいている間に化け物は今にもその前足を振り下ろそうとしていた。
「うわっ⁉︎」
とっさに横に飛んで攻撃をかわす。
なんとか回避できたが次も避けられる保証は無い。
「こっちよ、早く!」
少女に呼ばれ、共に建物の裏に隠れる。
そこからさらに逃げた後、ひとまず化け物を撒けることができたと見て立ち止まる。
少女が口を開く。
「ひとまず撒けたようね、私は魔使優奈、あなたは?」
「俺の名前は黒峰刀也」
ひとまず、名前だけを教えてボロが出ないようにする。
「あなた、魔獣のことを知らなさそうだけど、魔術師じゃないのにこの間界に入れたの?」
魔使さんが怪訝そうな顔をしながら尋ねる。
魔獣と魔術師はあらすじにも載っていたからわかる。
そうか、あれが魔獣だったのか。
間界というのは初耳だが言葉から察するにこの赤黒い世界のことを言うのだろう。
「路地裏に一人で入っていくあんたが気になって追いかけてたらいつのまにかここにいたんだ」
俺の言葉に魔使さんが少し思案する。
「間界に入れたということは魔力があるはず、でも魔術については詳しくなさそうだから天然の魔力持ちということ?」
何やら小声で喋っているが間界には魔力を持っていないと入れないなら、やはり主人公は本当は魔術師なのだろう。だが、今の俺は魔術の魔の字も知らないので戦えそうにもない。
さてどうしたものかと考えていると魔使さんが喋り出す。
「ねぇ、あなた、私と契約してくれない?」
「はぁ⁉︎」
魔使さんが発した言葉に思考が停止する。
いったいどういうことだろう、魔法少女にでもなって戦ってくれとでも言うのだろうか?その場合、男でも大丈夫なのか?
「さっきの化け物は魔獣といって、この世とあの世の境目である間界にのみ出現する化け物よ」
魔使さんが説明をしだす。
「私たちのように魔力を持ち、間界に入れるものは魔術を使って魔獣と戦うの」
「私の魔術は【使役】魔獣と契約を交わし、使い魔として戦わせる魔術よ」
「最初はここに魔獣と契約をしにきたのだけれど失敗して襲われていたところにあんたが来たの」
なるほど、何をしにここへ来たのか疑問だったがそういうことだったのか。
だが、なぜそこから俺と魔使さんが契約することになるのだろう?
話では魔獣としか契約をできないのではないだろうか。
「私は魔獣を使役できなれば戦うことはできないわ」
「でも、あなたもまだ戦うことはできない」
確かに俺は魔力を持っているようだがその使い方が分からないため、戦うことができない。
「だから、私があなたと契約することであなたの魔術を目覚めさせる」
「本当は魔術師と契約しようとしても意識的、無意識な抵抗で弾かれるのだけど、まだ魔術に目覚めていないあなたなら契約できるかもしれない」
「どうかしら?どのみち、現世へ戻るには戦う力が必要だし、このままニ人揃ってお陀仏になるよりはマシだと思うのだけど」
彼女の提案に少し考える。使役というからには今後彼女の命令には従わなければならないのだろうか。
だが、魔術が使えない以上、手段を選んでいられないのも事実。
俺は腹をくくることにした。
「わかった、俺だって死にたくないからな、俺と契約してくれ」転生した直後に死亡だなんて嫌すぎるからな。
「ありがとう、それじゃぁ契約を始めるわ」
彼女は右手を俺の前に差し出す。
「私、魔使優奈は汝と契約を結び、汝の主となる
汝の名を述べよ」
俺はすかさず自分の名前を答える。
「黒峰刀也」
光が俺たちを包み、俺の右手に収束していく。
光が収まると俺の右手に謎の紋様が刻まれ、すぐに消えた。
「どうやら契約は成功したようね、魔力を感じられるかしら?」
そう言われて、目を瞑り、何かを感じ取ろうとしてみる。
体のうちに暖かい流れが感じ取れ、また魔使さんと俺の間にも経路のようなものを感じ取れた。
「あぁ、魔力を感じられるし、力も湧いてくる」
「なら良かったわ、これでなんとか現世に戻れそうね」
魔使さんが安堵したような表情で話す。
俺たちは先程来た道を戻ることにした。
俺と魔使さんが出会った所に戻るとそこに奴はいた。
「Gruuaa」
表情はよくわからないがなんとなく、獲物がまた来たと言っているような気がした。
「悪いがさっきまでとは一味違うぞ」
魔力の操作方法は先程魔使さんにいくらか教えてもらった。
体に魔力を漲らせ、身体能力を強化する。
【身体強化】魔力操作の中でもかなりシンプルなものらしい。
だかそれゆえに魔術に目覚めたばかりの俺でもできる。
「Gaaaa‼︎」
魔獣が先程と同じで前足を振り下ろしてくる。
だが、身体強化をした今の俺なら難なく受け止めれられる。
「おらぁ‼︎」
魔獣の前足を振り解き、パンチをお見舞いする。
魔獣は数メートル程吹き飛ぶがすぐに体勢を立て直す。
「黒峰くん!身体強化だけでは埒が開かないわ、魔術師は皆己自身の魔術を持っているそれを使うのよ!」
そう言われても自分の魔術が何なのか結局分かっていないからどうしようもない。せめて、武器があればとポケットなどを探すが、カッターがあるくらいだった。
「くそっ、無いよりはマシか」
カッターに魔力を通し強化する。
再度襲って来た魔獣に向かって斬りかかる。
その瞬間、また黒峰刀也の記憶が流れ込んだ。
「そうか、黒峰刀也の、いや俺の魔術は……」
カッターを振るいながら、自身の魔術の名を叫ぶ
「【切断】‼︎」
魔術によって強化されたカッターは魔獣の体を真っ二つにし、あたりには魔獣の血が飛び散った。
「倒……した?」
魔獣を倒して有頂天になった俺は魔使さんに話しかける。
「やりましたよ魔使さん!倒せました!」
そんな俺に向かって彼女は少し呆れながらも応える。
「えぇ、いい戦いぶりだったわ、これで安心して現世に戻れるわね。」
そんな風ににこやかだった彼女だが突如、表情を変える
「危ない‼︎逃げて‼︎」
「えっ?」
その言葉の意味を知るのは別の魔獣の牙が俺の喉笛を噛みちぎった後だった。
鮮血が吹き出し、俺の意識は瞬く間に落ちていく。
こうして、俺の転生生活は幕を閉じた。




