ハシトの章3 入試
幼馴染二人の会話から始まります。フルスロットル。
「――ケイトさんどうしたんですか? 怖い目をして」
「ビッチ」
「うっ、ひどいっ! 私はまだ身も心も穢されていないと言うのに……」
誰もいない更衣室の中で、二人の女が言い合う。
「誰も彼も手を出して――恥ずかしげもなく『悲劇のヒロイン』きどりするのは楽しい? あなたの運命に巻き込まれる身にもなってよ」
無表情の中にも怒気を滲ませるケイトは、幼馴染で家族のハシトを除いた二人だけのときはこうして不満をぶつけることが多い。
今回はハシトと別れたあとの、彼女の行動についての疑義だ。
護衛の任務をこなすため文句を言わずに付き添ったが、神堂は明確な目的をもって走り出し、偶然を装って有望な受験生とのコミュニケーションを重ねていたのだ。
男子に対しては、おおむね"色仕掛け"というのもイライラの原因だろう。
「下手な芝居を何度も見せられる私の気持ちが分かる? そこまでして助かりたいわけ? みっともないよ。せめて、ハシトに誠実であってよ。それならまだ許せるから」
一通りの不満を吐き出すと、彼女は目を伏せて、手のひらを上に向けた。
今度はそちらの番、とでも言うように。これで神堂の過剰な行動を少しでも抑えられたら儲け物。
ケイトはそのくらいの、軽い考えだった。
「それなら、私も言わせてもらいますけど、いつまで隠すつもりですか?」
「……っ!」
「紫陽で"お尋ね者"の『殺人鬼イグノア』さん。いえ、『魔法少女イグノア』と言うべきですか?」
「………本当になんでも見えるんだ、その目」
神堂の"魔眼"によると、彼女の正体は"特別な精霊との契約を果たした『魔法少女』"であり、同時に紫陽の貴族街で、十数もの貴族を殺害した"連続殺人犯"でもあった。
「――かつ、本来ならその殺人犯を探すべき"諜報部隊"の一員でもある。どれか一つくらいは開示したらどうですか? ハシトさんが可哀想ですよ」
「やっ……やめてッ。ハシトには言わないで………お願い」
「では―――ハシトさんのパパとママを殺したのが貴方だという事実もですか?」
「っ!?」
今度こそ、ケイトは絶句した。
「ち、違うっ……あれは……っ、仕方なくて……アイツらが『ワルイーゾ』に変身したから、ああするしかなくて……」
「――『ワルイーゾ』、ですか。魔法少女たちが戦うという"侵略者の尖兵"。それならしょうがないですね」
「…………分かってくれるの」
「はい」
慈愛の笑みを浮かべて神堂は抱きしめる。
ケイトの見た『ワルイーゾ』と呼ばれる侵略者が実際は"脳内に寄生した妖精による幻覚"だという事実も知っているが、それを告げることはない。
なぜなら、この愛らしい彼女も友誼を結ぶ対象だからだ。
いつか来るべき"怨敵との対決"において役立つ可能性がある人物は積極的に取り込むようにしている。
「じゃあ、ハシトさんを待たせても悪いですし、そろそろ行きましょうか。更衣室の占領もみなさんに悪いです」
神堂はケイトと手を繋いで扉を開け――振り返り、魔法による偽装を解いた。
先ほどまで"白い壁"にしか見えなかった場所に更衣室の扉が現れたのだ。
これでパンクした女子トイレも少しはマシになるだろう……。
***
「遅いな……」
規定の時間になり、流れ作業で進んでいく集団を見つめる。
人工芝の感触を足で確かめながら、アイツらを待つ。
もう十分もすれば俺たちの番号が呼ばれるだろう。
順番は前後してもさほど問題ないとは言え、あちらの方で不測の事態が起きてないとは限らない。
端末でケイトに確認をとれば、いま向かってるとのこと。
しばらくして、健康的な肌を見せる二人の少女が現れた。
どちらも際立った容姿だ。周囲の人たちがあからさまに視線を向けるのも分かる。しかし声かけはNGだ。
「いてっ――いででッ」
しつこいナンパ男の手をひねり、追い返す。
やっと『基礎能力』の測定だ。
――パンッ、とピストルが打ち鳴らされて一斉に飛び出す。
さすがに名門校を受験するだけあってそれなりにやるようだが、ギアをひとつ上げた俺に追いつけるものはおらず、六名の中では"断トツの一位"だった。タイムもまぁまぁ速い方だろう。
そういった感じで、『握力』、『反復横跳び』、『上体起こし』と続くが、感触からして好成績と言っていいだろう。
たまにざわめきが起きる飛び抜けた結果を出すヤツもいるが、俺と同じように初歩的な『身体強化魔法』を扱っているのだろう。
魔法の有無で大人と子供くらいの差にはなる。その証拠に、俺より遥かに細腕のオウが砲丸投げで『50メートル』先にある向こうの魔力障壁にぶつけていたくらいだ。
俺は『37メートル』。砲丸の重さに男女の差はないし、俺と違って"野球投げ"でアレだからな。素直に悔しい。
ケイトは……と。
『35メートル』のライン手前だな。
「ふっ」
俺が勝ち誇って見るが、彼女は気づかなかったようだ。
次の『立体地形踏破』では、さまざまな障害物を妨害のある中で渡りきるもの。
グラウンドの外周部分に用意されたアトラクションを一周するまでの時間を計測。
ダンジョンでは魔物に殺される以上に設置された罠で"死ぬ"んだそうだ。
………死ぬって、そんなに簡単なものか? と今さらながらに思うが……。
スタートの合図でピストルが鳴らされると雑念は消え、目の前の障害物を効率的に乗り越えるルートを模索し、走り出す。
勢いよく風を切って、背丈ほどの盛り土を飛び越える。
着地地点に怪しいベニヤ板が見えたので、コレを蹴って側面に移動する。思った通り、半分にへし折れたベニヤの下はスロープ状の落とし穴が掘ってあった。
コースの地面自体が"盛り土"でどこでも落とせるようになっている。
これはなかなか本格的じゃないか? 側面も頑丈な壁で挟み込まれており全体的に薄暗い。
遠くを見通せば、遮光性のある屋根で暗闇を演出している箇所もある。周辺環境の把握をしていると壁に開けられた穴から突き出た銃座からペイント弾が射出された。
これも先に進むに連れて数が多くなってきて、他の罠に意識がとられている間に挟まれると避けるのは困難。すべて回避は無理だな。
ということで、重要部位の着弾だけを避けて、ゴールすることを優先する。タイムだけで成績が決まるわけではないだろうが、これが実戦だと想定するならばやはり優先するべきは目的地への到達だ。
支給された体操着の白がところどころ赤の染料で塗り潰された屈辱感を味わいながら、出口にあるスコアボードを見る。
結果は『368点』。
『6位/212人』
微妙か………。
クソ、悔しいな。よほどの失敗をしない限り、合格は確定だが、悔しいのは悔しい。
そして当たり前のように『500点』を叩き出したオウにはもう何も言えんよ。胸元の大きな膨らみに視線の集まる"純白の体操着"を見れば一目瞭然だ。
悔しいのはケイトに負けたことだ。
「ブイ、ブイ」
『400点』………だと! 昔からコイツは消えたようにいなくなるときがあるからな。普段からの身のこなしが活かされているのだろうか。
――あ、それと出口に置かれていた『宝箱』は、ピッキングで開けられるのと絶対物理的に無理なのがあった。
『木組みの宝箱』は用意された針金を上手く使ってカチャカチャすれば開いたが、『銅色の宝箱』は内部の機構が複雑になり制限時間ギリギリまで使ってようやく解錠。
『銀色の宝箱』に関しては魔力を通して開けることは分かったが、その先がビクともしなかった。高いレベルで魔力を練る技術があって、なおかつ、それを離れた位置まで伸長する技能が必要だった。
今のところ、体内の魔力を使って身体強化や単純な魔力放出くらいしかできない俺には残念ながら不可能だった。
これも、オウと……なぜかケイトは開けられたそうだが、アイツも身体強化しかできなかったはずだが、どちらも『金色の宝箱』は無理だったそうな。
「アレはスキルが不可欠です。純粋な技術の届く域ではありませんからね」
と、いうことらしい。
さて、長い試験も残すは『戦闘試験』のみ。ここまでが前座とは言わないが、戦闘試験の配点は満点がない。
つまり、"試験官の独断"で合格を決定できるのだ。
戦闘試験は六人がランダムで選ばれて、一人の試験官と戦う。
俺のメンバーは……残念ながら二人とは離れてしまった。
だが見かけた顔がある。あの死にかけの男だ。
ここでもやはり土気色の死にかけた表情をしている。
不安そうに周囲をキョロキョロと挙動不審に見つめている。
電光掲示板で番号分けもされている。何も迷う必要はないはずだ。
「お前、大丈夫か?」
「あっ、はっ……ハイ。………ハイ」
「武器は?」
「………これ、ぜんぶ、持っていこうかと」
確かに一つとは言われてないが、過剰だろう。
まぁ、本人がしたいなら止めはしないが。俺は他のメンバーとも相談を重ねて連携のイメージを構築していく。
そして、ブザーがなって、円形の闘技場に足を踏み入れる。
「《サモン:ゴブリン》」
俺たち全員が舞台に上がったのを見て、試験官はさっそくスキルを使用する。
遠目から何度も見せられれば学習もする。どこから連れて来られたかは分からないが――ゴブリン、恨むなよ?
「――おっ、ちったぁ動けるやつが来たな」
早々に切り捨てたゴブリンの死体を一瞥し、完全に息の根を絶ったことを確かめてから試験官に向き直る。
試験官の男は、後ろから放たれた矢を軽々と手の甲で弾いた。
武器は持たない無手だが、身体強化の練度やそもそもの規格が違いすぎる。――勝つのは不可能でも、どれだけ食い下がれるかを見られているのだろう。
俺は地を強く蹴って、剣を叩きつける。
「ほぅ……お前は紫陽の出だな。『ヒタギ流』の動きによく似ている」
…………やはり、抜き身の刃が衝突しても肌すら傷つけられない。
試験の意図は理解できた。
ならば――ここは味方をどう使うか――連携を図り最大の効果を生み出すべきだな。
"槍持ちの彼"がリーチで引きつけ。
"短剣の二刀使い"が、その隙間をカバー。
"弓使い"は、とにかく敵に当てることを重視してもらう。
事前に話していたことだ。
"錫杖使いの少女"は特に魔法を使えるわけではないらしいので、接近戦に参加してもらうほかない。そして………彼は、何をしてるんだ?
さっきから、闘技場を一周して武器を等間隔に配置していく男――ラクミヤは陣形などまるで無視したように自由に動く。
浮いた駒は各個に撃破されるだけだ。この試験での最善が戦闘時間を伸ばすことか、味方を使って無駄のない連携をこなすことかは分からないが、実戦ならば、逃走しかありえない。
しかし、場外に出れば"死亡扱い"と説明されていたのでその選択肢が潰される。
「《アロー》」
――まずいッ!
とっさに庇おうとしたが、高速で風を切った鋭利な魔法は――弓をつがえる男に直撃し、体操着を鮮血に染める。
「いてぇ〜〜〜ッ!!」
つねに俺たち前衛の後ろに隠れろと言ってはいたが、実際に避けられるかどうかは別問題だ。初速から何から――速すぎた。
彼からすれば、ろくに見えなかったはずだ。
「うっ、うわぁああっ………ぁああ!!!」
この試験では出血もある。
むしろ、「その後でどうするのか」を測るとでも言いたげだ。
別に治療手段は与えられていないのだが、この試験だけひどく実戦的なのは、生身の損傷に耐えうる精神性を見るためか。
そうして、ショッキングな光景を間近で目撃したことで士気は最低まで下降する。ただでさえ、こなれていない槍は持ち上げるので精一杯といったところ。
――す、と。
もはや試験官の男がおもむろに手をかざすと、それだけで過剰に反応した槍使いが背中を見せて転げ回り、場外に落下した。
自身の手傷を避けるための行為と見れば、間違いなく正解だ。
しかし、これを実戦でやればどうなるかはお察しだ。
「き、棄権します!」
「わ、わたしも……っ! ごめんなさい」
「………いや、よく頑張った。お疲れさま!!」
片手を上げて彼らを見送る。魔法を受けた生徒もすでに下で治療スタッフの処置を受けている。
残るは………ラクミヤだけか。彼は――何だろうね。
今度は片手剣を右手で振り子のように揺らし、その場で佇んでいる。
まったくの無表情で、その瞳にも何かを映しているようには見えない。
「こっちは文句なしの合格。アレは……分からん」
「…………ですよね」
繰り出される拳や蹴りをなんとか弾いて、体勢を整える。
少しずつギアが上がってきた。そろそろ降参してもいい頃合いか。
全身に鈍痛と疲労が蓄積していく。
対して、あちらはここからが本調子といった感じ。
実力はアキラさんたち『隊長格』と同等かそれ以上。レベルやスキルが介入すれば予想など当てにはならないが……。
そして、ついに、受け損なった左フックをもらってしまい、脳が揺れる。
―――さらに回し蹴りが。……間に合わない――ここまでだ。
「とうっ!」
だが――
大袈裟な声を発してラクミヤが剣を振るった。
素人丸出しのチャンバラじみた一撃だ。危なげなく反転した男に剣は蹴り飛ばされてしまったが、実にいいカバーだった。
霞む視界の中で、一歩詰める。
「アフっ」
肺が叩かれ、床をバウンドする。速さも技の威力も違いすぎる。
「カァアッ………ふ!」
同じようにアッパーを腹にくらったラクミヤが素っ頓狂な声を上げて膝をつく。あの身のこなしからして、完全に"戦闘の素人"だろう。
意識を保ったのはさすがだが、そう遅くないうちに苦痛が引き延ばされただけだと知るだろう。
「シャオラぁっ!」
「その意気や――よし!」
鈍い打撃音。
「アガっふぅ……っ! …………ぅぅ」
ビチャ、ビチャと床に粘着質な液体がこぼれ落ちる。
ここでやめてあげればいいのに、男はじっと待ってその場に立つ。
「………っ、っっ」
ラクミヤは手のひらを前に突き出し、腰をかくつかせながら、立ち上がる。
「――コヒュッ」
そこに無慈悲に手刀が落ちる。――首元に突き刺さったのだ。
ラクミヤはとっさに左肘を手前に引いて腹に残し、うつ伏せに崩れ落ちるのを防いだ。まだ戦闘の意欲がある証拠だ。
ガッツはある。アイツは軍人向きかもしれない。
いや、闘士とかか。
―――それで?
俺はいったい何をしてるんだ。ここで寝そべって、ただ試合を観戦するだけか? 一方のラクミヤは適当な武器を掴んで迎え撃つが、その度に地面を転がり回る。
攻撃に比して派手なアクションだ。
………アレは大袈裟にバウンドして衝撃を逃し、回転を利用して立ち上がっているのか。半分くらい意識のない状態だろう、視線がさまよっている。
そう言えば、全身真っ赤だな。――ペイント、そんなに食らったのか。
ボロボロの彼は、おぼつかない足取りで何度も立ち上がる。
重心がフラフラ。ろくに戦闘が成り立っていない。
――ほら、オレも早く立ち上がれよ!!
オレが、やっと片膝をつく間にラクミヤはもう三度ほど撃ち倒された。
見れば、指の骨が二、三本反対に曲がっている。
闘技場には彼の血溜まりだけで水遊びができそうなくらい吐血で汚れている。
異常だ。
なんだコイツ。
これは単なる試験だぞ?
お前はいったい何と戦ってるんだ。目の前の試験官に挑むことにどれほどの意味がある。
お前は"物語の英雄"じゃない。都合のいい力が発現したりもしない。
――ダンジョンに入ってからなんだよ、そういうのは。
「……いや、お前、もう休め」
困惑した試験官が、医療スタッフに目線を送った瞬間、ラクミヤは獣のように地面を四つ足で飛んだ。
「うおっ!」
そして、弾き落とされた。
鈍い、破砕音がした。
自制のされてない一撃だったからか、空中で骨が粉砕したのだろう。肋骨あたりに入ったか。
「ゥゥ……」
だが……まだ動く。手足は四つも残ってると言わんばかりの前傾姿勢だ。
コイツは本当に人間か?
爛々と瞳をギラつかせて、口角を上げた獣が奇声を上げて、腕を振り回しながら突貫する。
まるで――狂人だ。
そうとしか思えない。
「っ……!?」
それが狙いだったのか。足蹴りを放った試験官の直前で急停止し、軽やかに立ち上った。
続けざまに懐から短剣を取り出し、投げつける。
間合いは――完璧。しかし圧倒的に技量が足りない。
そして、恐らく威力も。
あっけなく弾かれた短剣。しかし彼の行動は終わらない。
もう一度取り出した、量産品の先と同じ短剣を今度は構えて接近する。
俺も習ったヒタギ流の無手の型に近い――がやはりお粗末。
ガラ空きの太ももに蹴撃が入り、再び破裂音が鳴った。
「よし、合格だ!」
……そうだった。
これは試験だったのだ。――よかったな、ラクミヤ。
「―――ふぅッ」
だがラクミヤは短剣を滑らせる。
左手首の動脈から、噴水のように血液が滴った。
"目潰し"だ。
血の量、方向性、勢い。三拍子すべて揃ったが、あちらは現役の冒険者。この程度のことで狼狽えることはない。
たとえ目を潰されても、あちらは魔力を使って、あるいは他の感覚で補完する程度のことはできる。
軽やかなフットワークでラクミヤの無力化が始まる。
明らかな"過剰ダメージ"。
出血量からしても命の危険がある。――それでも、動く。
異常なほどの耐久性。見た目の割に頑丈なのはオウが見抜いた魔力量のおかげか? しかし魔力を操る技術なくして効率的な運用は行えない。
「いい加減、休め。――そんで正気に戻れ。………いや、これで正気なのか……」
何の確認をしたのか、紫陽のヒタギ流の関係者らしい男は戸惑う。
しかし悠々と歩いて、ラクミヤの顎を撫でた。魔力を瞬間的に噴射させたのだ。
首の骨が曲がるのでないか、と思わせる衝撃だった。
カクン、と90度に折れ曲がる。
それでも、ラクミヤは止まらない。視界などとうに消失しているはずだ。なのに肉体だけが独立して動くのだ。
俺は、それを――"からくり人形"みたいだと思った。
ちょうど顔の向きが固定されていない不気味な容貌がそう思わせる。
本人は、戦うことしかできないんだ。止まれないんだ。
手足をもがれても、心臓を抉られても――アレは動く。
そう確信させる。
最終的に、羽交締めされて、スタッフが回復の魔法を使用し始めれば、これ幸いと元気を取り戻して戦闘を続行する。
俺はもう、見ていられなかった。
どうすれば、こんな人間が生まれるんだ。どんな罪を背負ったら、こんな人生を送ることになるんだ。
『睡眠の魔法』を使われてもピクピクと痙攣して抵抗し、手足を伸ばそうとした。
その姿を見て、俺は彼が"呪われている"と確信した。
オウの言った通りだ。普段は病弱そうなのもきっとそういう理由だろう。
―――いっしょにいた女の子が可哀想だな。
うつ伏せになって、一部始終を見ていた俺は思った。
そして、重ねて確信した。
アイツは危険だ。
絶対にオウに近づけちゃいけない。
俺は――彼女の笑顔を守るためにここにいるんだ!
アイツからは不吉なものを感じる。きっと良くないことが起こる!!
―――そして……俺は、無事、星刻学園に入学したのだった。
以上、ロリ神堂、ハシトの原体験、ケイトの正体、普通に負けたラクミヤくんでした。(やはり主人公のターンになると長い……すまぬ……)ちなみに後半のハシトくんはずっとうつ伏せに倒れてます。
次回の第四章はレギオンハウスから戻ったあとのラクミヤくんたちです。また"ゆるふわな日常"を生きたいです。




