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満身創痍を抱え込む


『戦闘に勝利した!』

『初めてオーガを倒したわッ!』

『おめでとう! レベルが5に上がった!』

『HP+8、MP+98、ちから+8、かしこさ+12、まもり+5、せいしん+15、きよう+10、びんしょう+10』

『ジョブスキル《アイテムストレージ》を獲得した!』



 戦闘は、終わった。


「ミカ、二人は……」


 腹からこぼれ落ちる"中身"を魔力で操作して、ズブズブと体に戻していく。


『二人ともレッドではないわ。じきに意識も取り戻すハズよ』


 ならよかった……。

 とくに炎理さんがレッドゾーンに突入した記憶が残っている。


 ―――冒険者はたとえ、HPがゼロになっても回復が間に合いさえすれば、即座に死亡することはない。敵の追撃さえなければ無事なのだとは思ってはいたけど……。



 ざわざわと。


 よほど派手な戦いだったからか周囲に人が集まってくるのがわかる。


 が、いまは、安心材料か。白道の前後を挟むようにいくつかのパーティと個人が集まり、ヒソヒソと噂話をする。


 きっと、戦闘のどこかの時点で遠巻きに見ていたものでもいるのだろう、炎理さんは目立つし、僕も《鑑定》すればMPは並外れている。


「手助けは必要か?」


 その中から、壮年の男性が代表して声をかけてくる。


「二人を、どうか」

「そうは言っても、君が一番重症だ。彼女たちは安静にしていれば問題ない。……というか、なぜその状態で話せるのかわからないな」


 まぁ、全身ズタボロなのはそうだ。僕の体も、崩れた壁の瓦礫に乗っかかるようにして落ちてる。


 "要救助者"だ。それでも男性が治療を始めないのは《魔力感知》などで僕のやってる自己回復の魔法に気づいているからだろう。


「わかった、わかった。手は出さんよ。だから睨むな」

「………」


 苦笑する男性からは余裕が感じられる。さっさと行けばいいものを、見守るつもりのようだ。


 そんなに暇なわけもない。あとから何を要求されることやら。


「本当にこれは、ただの"善意"なんだがね」


 そう言ったきり、彼は離れていった。



 それから数分間が経過して、レッドゾーンを自力で抜け出し、なんとか身を起こす。瓦礫に不自然に横たわる僕を、遠くからあのおじさんが見つめている。


「ブッ、ぺっ、ぺぇっ……」


 赤黒い粘ついた血を吐き出す。

 自分でもびっくりするほど体がだるい。それは魔法なくして力が入らないくらいで、だらりと垂れ下がった両腕が―――"不要な付属物"にも感じる。


『ポーションを使えばもっと早く回復するんでしょうに……。どうしても自分で治したいのね。あんたはほんと我が強い。……たぶん、無自覚でしょうけどね』


 呆れ顔のミカが、毛先をくるくるといじりながら僕の目を見る。


 キラキラと輝くエメラルドの瞳は、気遣わしげに揺れており、絶賛負傷中の僕に何もできない無力感に襲われているようだ。


『ほんのちょっとでいいから、回復スキルとか、少しでも補助できればいいんだけど、私ってほんと、光ることしかできないんだ………』


 肩を落として暗くなる。単純に考えて天使の回復スキルが一つなくなるわけだからね。エイポンはあれでいて優秀で、僕も範囲回復と加護の付与のお世話になってる形だ。


 多くの天使は、担当の冒険者だけを対象にした単体スキルしか持たないらしいし、確かにミカの存在はパーティを組む際に足を引っ張るレベルかもしれない。


『―――な、泣くわよッ、わたし……ほんとに泣くわよ?』


 しまいには、本当に泣き出したミカが可哀想に思えた。


 だからと言うわけじゃないが、回復くらいは自分でこなしたい。


 そのとき、誰かやってくる気配がした。


 全リソースを回復に費やしている最中だ、足音からして女性。


 僕は急いで、見かけ上は平気そうに取り繕う。

 こぼれ落ちた"臓器臓物"は腹に戻したし、浄化の生活魔法により飛び散った血肉を分解し、その魔力を回収。


 レベルアップした《無属性魔法》のおかげか、自己修復や回復のスピードも上がっている。


 怪我の状態を正確に把握し、必要な箇所に魔力を送り出し、"代替物質"に変換する。恐るべきことに、自分の血肉であれば、地続きに魔力で復元できるらしい。


 "臓器の修復"、"増血"、"皮膚や筋肉の再生"。なるほど、ロックイーターほどではなくとも気持ちの悪い絵面に違いない。


 僕はパッパと汚れを落とし、すぐにボロ布と化した"元"新品のマントで腹を隠す。《銀河的外套ギャラクティカ・ベイル》は教室で箱詰めにされていて、紛失や破損の際に予備を交換してもらえる。予備は一人一枚までだ。

 一日ごとに取り替えよう!


 肉体の状態に不釣り合いな、あり余るMPをじゃぶじゃぶ注ぎ、《オーラフィールド》を満たす。


 自己回復の魔法は、単に大量の魔力があればいいわけではなく、現在は肉体に備わる"自然治癒力"を繊細に、精密に、アシストしている。だが頭上から垂らす無数の魔力の糸で自分自身を操る《ヒューマンドミネイト》の補助は行いたいのだ。


 そうすれば……。


「やれやれ、激戦だったね」


 僕は違和感なく立ち上がれる。腰に手を当ててから振り返った。


 そこには、よろよろと覚束ない足取りで近寄ってきた炎理さんがいる。顔はしょぼくれているが。


 ………よしッ! マナではなかった。



「ら、ラクミヤ……無事か」

「そっちもね」


 派手に吹き飛ばされて一時期は危篤になったはずの彼女は、苦い顔で僕の容体を確かめる。


 その頭に乗る天使マエンは、ミカに伝えてもらったからだろう、回復スキルを拒否した僕に少し引いてる。


「っ……!? ほ、ほら早く飲めよっ何してんだよ!!」


 戦闘が終わったら、HPをすぐに回復させるのは常識だ。

 最大HPの減少もあるので、完全回復=肉体も元通りとは限らないが、まずは命の危険を脱するのが合理的。


 今回は、僕の損傷は―――全身打撲と鬱血、両腕の骨折や重要臓器の破裂など、あと耳もか。総合すれば、回復後の経過観察を含めて"全治数日の大怪我"、といったところか。

 本職のヒーラーの手に掛かればどんな傷も魔法一発だが……。


 しかし、自力で治癒力を高められるなら話は別だ。


「ハハっ、あいつ強かったね。もうボロボロだよ」

「いいから。まず回復しろって」


 ゲロ不味い逆流物を胃へと流し込んで、差し出されたポーションを受けとる。飲むフリだけやってごまかそうか。


 イエローカラーのHPバーが負傷を訴えかけ、いまだ視界が黄色に染まっている。


 現在進行形で回復魔法をかけているが、優先順位の低い両手の指先は無事なものがなく、あっちこっちに曲がり、最後の猛攻で脇腹に開いた風穴をどうにか隠したが、ごそごそとまさぐられて、すぐにバレてしまった……。


「おまえって嘘つくとき目合わせないじゃん」

「あ、そんな理由。……動き自体は不自然じゃなかったよね?」

「イエローゾーンで堂々と立ち上がれるほうがおかしいわ。普通通りすぎて逆に不自然だった。マントで隠してた指もめちゃくちゃじゃねーか、なんのこだわりだよ?」


 なるべく自分の魔力だけで手傷を治したいのだ。

 どうにか、気絶したマナの復帰までには回復しておきたいところだ。


「やっぱり、レベル不足だって。本格的に防具だって買ってからにしよう。盾とか上手く使えなかったし……普通に死ぬかと思ったぜ」

「そうだね」


 僕も一方的に"殴り殺される未来"しか見えなかった。

 だからこそ、こちらの魔法も研ぎ澄まされるのだ。スキル名が『真空気弾』ではなかったのは置いておくとして――


 やはり、オーガの使う魔闘術に憧れる。

 肉体を用いたシンプルな"物理的破壊の強化"と"内部浸透の魔力衝撃"。

 これらを極めただけで最強になれるんじゃないかと思った。


「神堂さんほどじゃなかったけど……攻撃特化の魔闘術、だったのかな? 中和できなかったら、たぶん、濡れたちり紙みたいにされたはずだよ」

「…………いや。神堂がバケモンかよ。あのパワーより上だと? 死後発動したバフスキルの上昇率ハンパじゃなかったぞ」

「たぶんね」


 体格は僕と同じくらいでも"強化率・密度"が違うから。

 あの人なら正面から殴り合えるのだろう。……悔しいなぁ。


「それより、もうヘーキかよ」


 マナを運んで壁際に座り、僕らは休憩をとる。


 野次馬の冒険者たちは、あのおじさんが散らしてくれたようで、残るは本人だけだ。どうやら僕らが万全になるまで待つつもりらしい。


 時間経過で作動する罠が極端に少ないのも彼のおかげだろう。この5Fは数分の休憩でも罠が近くで発生するほど。

 専用のスキルで対策をとらないと地獄である。


「あぁ、チクショウ。悔しい。思い出すだけで、腹が立つ」


 拳大の瓦礫をつかみ、勢いよく燃やした。

 先の戦闘はさすがに彼女も思うところがあったのか。眉をしかめて、うなっている。


「それもこれも、すべて"テメェ"が弱ぇからだ」


 その響きに僕は一瞬ビクッとしたが、彼女の視線は自分の手のひらだった。


 どうやら僕のことを責めたいわけではないらしい。一安心だ。


 シリアスな空気を出す炎理さんだが、大精霊の火山領域なんかは使いたくないのかな? クールタイムや効果などの詳しい話は聞いてないのだけど……。



 それからマナが起きるまでの時間。僕らと少し離れたところにいるおじさんと、奇妙なひとときを過ごす。


 じっと待っていたら、期待どおり自動で手傷を治す《自然治癒》という体質スキルが手に入った。やったね!


 あのウッド一式のスキルと同じだろう。これは微々たるものだが戦闘中に負った傷でも、じわじわと身体組織の復元をやってくれるらしい。


 ちょうど自然吸収される魔力や元々の体力でやってくれるのでMPが減ることもない。


 それでも"速さ"が欲しいときは、能動的に魔法を使って治す。

 これは、回復魔法セルフヒールという自分だけに効果のある魔法として【ブック】に登録された。やってみるものである。


『あっ、私も……私も回復スキルほしいなぁ、なんて。アハハッ』


 両手を広げて、誰いない天に笑顔を見せるミカはほっといて、体の調子を確かめる。


 ひとまず、折れた指や関節を元に戻して致命傷もなくなった。

 しかし体力の減りは凄まじく、猛烈な眠気が襲う中、僕はスヤスヤと眠るマナを起こした。


「―――へぁ? なんらの?」

「おはようマナ」


 寝ぼけてうわごとをいくつか漏らし状況を理解した彼女は、すぐさま体を起こして機敏に首を回し、"ある一点"に固定される。


「お、もう少し休んでいってもいいんだがね。久しぶりに有望な若手の手伝いができて私も気分がいい」


 足元に大量のドロップアイテムを置いたおじさんだ。


「おっさんになんか得はあんのかよ?」

「あるさ。確実、上に行けるであろう才能に触れられること。――こうやってコミュニケーションをとれること。君たちは変に思うかもしれないが、私みたいなおっさんは結構多いと思うぜ? ―――あと、ドロップもいるか?」

「ふーん、そういうもんか。なんか怪しいからいらない」

「たはは。まぁ、賢明だな。そうやって恩の押し売りをしてくる輩もいるだろうし」

「自分は違うみたいな言い方だな」


 案外、炎理さんは物怖じしない性格みたいだ。

 教室では僕と同じく浮いてるイメージがあるから意外だった。


「それに最近、ここらもきな臭い。"組織的な誘拐事件"が起きてるって噂もあるぞ? 都市の未来を担う若者たちの成長の機会を奪わせはしないさ」

「へー。事実なら素晴らしいこった。―――おっさん自身がその犯人じゃなければ………だがなッ」


 ―――ッ! そうなの?


 会話の雲行きが怪しくなっていきなり炎理さんが"灼熱の翼"を轟々と燃やした。


「ッ!」


 その矛先であるおじさんは、冷や汗をダラダラと垂らして後ずさるが、腰の剣を抜く気はないらしい。ランクが上がれば、ステータスの『偽装』なども行える。


 僕らにとって、おじさんの正体は謎なのだ。


「―――ハハ、まいったなぁ! じゃあせめて、この『通信魔石』だけでも受け取ってくれないか? 今日は非番だが、私はパトロールでもある。普段は、5Fを中心に回ってるから、緊急時の手段とでも思ってな。……【メニュー】の『救援要請』でもいいが、手段は多いほうがいいだろう?」

「……わかった。………ラクミヤ、ヒグレ、それでいいか?」


 別段、僕らはおじさんに含むところはないので、頭を下げてお礼を言う。お節介とはいえ、貴重な時間を費やしてもらったのだ。


 今日はもう帰還すると言えば、広場まで送ってくれるとのこと。


 であれば、『パーティ』に参加してもらおう。炎理さんがここまで警戒してるとなんだか怪しく見えてくる。パーティメンバーであれば、後ろから刺されてもいくらかマシになる。


___________________________________________

『獅子島スオウ Lv.30』

【HP】 892/892

【MP】 307/307

___________________________________________



 さて、帰るまでが遠足だ。


 おやぶんコボルトの代わりなんかじゃない、大変な満足感が得られたな!


___________________________________________

 《エネルギーバースト》

 無属性の中級魔法。

 高密度の魔力塊をぶつけて対象を破壊する。

___________________________________________




「おい、ラクミヤ。今日は帰るぞ? 時間的にラストって話だったろ」

「………まだ、何も言ってない」

「目は口ほどにってやつだよ、ばーか。血も足りてないだろうに」

「………エイくん。あとで反省会。するから」


 起きたばかりで陰鬱な彼女は、いつもの陽気さを失っている。


 ヒステリーの予感がした。


「おーファミレス? 行く? 行っちゃう? ………あ、はい。なんでもないです」


 鬼気迫る表情のマナは静かな怒りを溜め込んでいる。いつ爆発するかわからない。話をそらそう。


「それにしても、お腹減ったよ。僕、今日はガッツリ食べたい。肉とかね」

「おーいいなぁ。打ち上げかー?」


 人懐っこい顔の彼女は、会話を続けたさそうにしていたが、急に足を止めた。


「げっ」


 そんな帰還ムードをダンジョンが勘案するはずもない。

 モンスターの群れが現れる。

 どの道を通ってもぶつかる密度だからしょうがないのだ。


 さて、今回は……。


「『アヘアヘン』じゃねーか! 速攻で燃やすぞ!」


 重篤な依存症を引き起こす"麻薬"でヒトをダメにする植物モンスターを中心に据えた"ゴブリン部隊"。


 一見すると、たくましい上位種『かしらゴブリン』が率いた群れのよう。

 しかし、注意深く観察すれば、"神輿"のように抱えられた植物タイプの『アヘアヘン』こそが首魁だと分かる。

 《鑑定》スキルを使えば、バッドステータス《洗脳》との文言があった。


「"焼却処理"がベストかな」

「ああ。近づけさせねーよ! こんなヤベェやつら」


 濃い緑をした球体が根本からたくさん生えたアヘアヘンは、ソレを手足のように動かしてなにやら指示を出している。

 クリーピーマッシュと言い、植物のモンスターは奇怪にすぎる。


 "白っぽい粉末"が不自然に生じた気流に乗ってこちらに向かう。


 スキル《しあわせごな》。


 呼吸だけでなく、皮膚に接触しただけでも効果は現れる。

 対象を"溺れんばかりの多幸感"に満たして洗脳するおぞましいスキルだ。このモンスターのドロップ品は取り扱いに難があり、一部は"所持禁止"と"強制買取"がされるほどだ。……そこまでされると、ちょっと舐めてみたくはあるけど……。


「『イグニートブレイズ』」


 飛び上がった彼女は、鉤爪を振り下ろすポーズをとり、炎の爪を差し向けた。


 その技は、苛烈にして豪快だ。進路上にいたモンスターを巻き込んで派手に爆発炎上。大きな溜めが必要で、なおかつオーガにはあまり効かなそうだが、それは相性の問題でしかない。


 彼女は攻撃の余波をまとめるように、両手を大胆に動かす。阿鼻叫喚の悲鳴は、意思を持ってうごめく火炎に対しての理不尽さの表れでもある。


 "ひとりキャンプファイアー"を終えて達成感に満ちた様子の彼女はさておき。状況をチェックする。


 天井や床が真っ黒になったのを除けば、おおむねクリアーだろう。


 唯一、生き残ったゴブリンの上位種『かしらゴブリン』は、太鼓っ腹を揺らして俊敏に移動していた。


 火にめっぽう弱いアヘアヘンの討伐によって、洗脳状態から解放されたのだろう。


 だが逃す気など毛頭なく、新たに加わった複雑性を増した魔法陣から『中級魔法』が放たれる。


 中級魔法エネルギーバースト


 "中級"という区分は、MPの消費量で決定される。

 《アロー》は一発『3』ポイント、《グリッターボール》は『5』ポイントの消費といった具合に一桁なのに対して、この魔法の消費量は――なんと『32』ポイント。


 あの、おやぶんコボルトにも比肩するかしらゴブリンは―――飛来する気弾のヤバさを瞬時に感じとったのか、脱兎の如く逃げるそぶりを見せた。


「―――ギョぅんっ」


 しかし、《グリッターボール》の進化系にふさわしくスピード感があった。瞬く間に、ふくらはぎにヒットして、下半身を破裂させる。


「ゥゥ………」


 力なく倒れ伏す、太っ腹ゴブリンは、残された上半身だけでも十分に逃走可能かに思える。


 しかしその実、ダメージは内部まで到達したのか、HPはゼロ。体内の魔石も破壊されているようだった。


「う、うへぇ」


 ピクピクと痙攣するかしらゴブリンは、それから何をするでもなく絶命した。


 炎理さんのイグニートブレイズのダメージがあったにせよ、たった一撃で"Dランクの上位種"を倒すとは予想以上だ。

 あのオーガは全魔力を使ったあとだから、残された肉体がもろく感じたものだが……。


「たぁ〜、こりゃ痺れるねぇ! 無属性で中級攻撃魔法とはまた珍しい」

「やっぱり、そうなんですか?」


 だいたい、察してはいたけど。


「あぁ、四大属性に比べると使い勝手は悪いからな? とくに"距離による威力減衰"がひどくて、強度を保つために"物質化"させるのが一般的だが……それなら武器でいいしな。……総じて――無属性は"万能だが威力が弱い"と相場が決まってる。間違いなく当たりのユニークスキル級だな」

「……え、でも属性耐性に関係なく、どんなモンスターにも一定のダメージが入るのは強くないです?」

「よくある"机上の空論"だな。見たところ―――触媒もなかった。つまり坊主、お前はアレだな。そこのお嬢ちゃんの『無属性版』ってとこだろうよ。一口に無属性とは言っても、大抵はエレメント化する前の"不純物"みたいなもんだ、けど坊主は、その"上澄み"を浚えるんだろう?」

「はい」


 言われてみれば、しっくりくる。


「生体に取り込んだ魔力はもっと大雑把だし、身体機能の延長線上でしか魔法として意味のあるものにはならない。……理論的には四大属性のすべてと同じことができるが劣化も劣化だ。―――他の属性に適宜混ぜる形で使うか、専用の増幅装置を兼ねるのが大半だ。そんなわけで、無属性の放出系攻撃魔法がメインウェポンなんていうウィザードなんてまずいないな」

「やっぱりそうなんですね」

「無属性魔法が得意です、ってのはつまり―――『前衛』ってことになるな、ハハ」

「ぁはは」

「さすが、詳しいですね! 今後のためにももっと教えてほしいです。……ダメ、ですか?」

「い、いや。全然いいが……。末恐ろしいな、こっちの子も。魅了系のスキルは阻害してるはずなんだが、これ天然物か……」


 そんな講釈を聞きながら、階段方面に進んでいると、人の気配が感じられないのに気づく。


「………?」


 5Fは広大だから、人の少ないエリアもあるだろうが、もうすぐ階段付近で、この気配はだいぶ違和感がある。


 不自然なくらい静まり返っているのだ。何か事件でもあったのか、と言わんばかりの不気味な静けさ。


 耳を澄ましてもモンスターの息遣いしか聞こえない。

 戦闘音も遠方で、マップ中央にある水晶広場の方向からしか聞こえないし………これはどうしたものか……。


「うん? 階段の行き来を制限………なぜだ? 通行止めしてる? 下で何かあったか」


 そこで異変に気づいた獅子島さんが険しい顔をして先頭に向かい、そのあとで忙しなく手元を操作し始めた。


「どうしたのかな……」

「さてなぁ。人がいないならいないで好都合だろ?」

「………ッ! いや、違うッ」

「…………エイくん?」


 探知魔法ニョロニョロヘビを入念に使う。

 異変の原因を探るためだ。普段はやっていない半径50メートル以上にも及ぶ"広範囲の索敵"。


 レベルの上がったスキル群のおかげで、ダンジョンの壁を何枚も挟んでぼんやりしていた遠方までも調べ上げられる。


『ラクミヤッ!』


 ―――敵だ。


「獅子島さんッ! "推定Dランクの獣タイプ"のモンスターが三匹! こちらに急速接近中です!! あと十秒以内に来る―――どうします!?」


 このフロアにいるはずのないモンスターが、群れでやってきたのだ。


 明確に、僕らのパーティを狙って、三方向から別々に。


 これは間違いなく"狩りの動き"で、道中のモンスターに構うことなく、一直線に、迷いなく向かってきている。


「くそ……何が起きてやがる? ―――とにかく階段はダメだッ、誘導されてるッ! 水晶広場へ向かうぞ!!」


 なんらかの葛藤があって獅子島さんはそのように判断した。


 彼の"態度や表情"、"心音"などを注視して見ていたがその焦りはホンモノだ。だから、炎理さんの言い掛かりみたく、逃亡中の犯人の一人というオチではなさそうで、ひとまず安心した。


 魔力の大きさからして、獅子島さんと僕らが力を合わせれば切り抜けられる脅威だろう。


 ―――そう、考えていたから……。


 先導する、獅子島さんの首元に突如現れた刃に僕は気づけなかった。


メモ


 ニョロニョロヘビ 探知魔法

 チェーンバインド スキル化してもよさそう 鉄以下の鎖 テンタクル→バインドのコンボもいける。

 ヒューマンドミネイト 人体支配 解剖学的な魔力の通し方と制圧

 天楼魔剣 大量の血とエンチャント前提 場と身体強化も必須

 魔力感知Lv2 精度と範囲拡大

 魔力操作Lv2 精度と強度上昇

 無属性魔法Lv2 全般的に威力上昇と習得

 エネルギーバースト 中級魔法 

 セルフヒール 一気に20は回復 MP消費は4

 自然治癒 体質スキル 自然回復+0.1

 ワンワンハンド 魔剣以下の触媒 プレッシャーわんわんが使えるネタ装備

 鬼の手 素材 骨をマナの棍棒に? あのほら、剣折られてたしね

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