道場破りが現れた!
止まるんじゃねぇぞ!
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[星刻の大迷宮 5F ]
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―――あいつは、いなかった。
「………僕の魔力も途切れてる……。もうこのフロアにはいないみたい」
「だな〜! オレもこっからだと燃やせねーな! フロア間の魔力はつながりが断絶されてやがる。……ってことで、やつと同じフロアにいないとムリだろうぜ……』
モンスターは冒険者と同じくレベルアップする。モンスター同士の闘争で勝ち残り、あるいは冒険者を殺害するなどして成長していくのだ。あいつは周辺のモンスターに比べると頭一つ抜けていた。
レベル13。
大抵は10未満だし、ただのコボルトとはワケが違う。
そして、強くなり過ぎたモンスターはダンジョンの奥深い場所へ向かうことはできるが、その"逆"はほとんどない。
この現象が、"適正階層"や"推奨レベル"という考え方につながる。
「―――エイくん? まさか"6F"に行くとか言わないよね?」
ソレは圧力のある笑みだった。
5Fの内部空間は広大で緻密だ。冒険者がより多くモンスターや罠にぶつかるよう、通路が折り畳まれて、移動距離が伸びる構造となっている。
どれだけ急いでも―――広大なマップを踏破しておやぶんを探し、戦闘を終えての水晶広場までの道のりが―――1時間では収まらない。
何より、そもそも5Fのフロアボスを倒さないと先に進む資格がない。学園の予定では再来週からだ。
「………………くっ」
そのことを冷静に結論づけて、そっと拳を握る。
自分の欲望が満たされない苛立ちと理性がバチバチとせめぎ合う。
「フーーーッッ!」
「そこまでっ!? ……むしろ、ホントに先まで進んじゃったなら、最優先で回避すべき敵でしょ?」
「ラクミヤがバカなのはよーく分かった。なまじ、一人で行けそうなのがタチ悪ぃよな」
「……そこまで言う?」
「ハッハ! ………でもよかったわ。こうやってつるめるやつがいてさ」
頬を赤らめて微笑む。普段の刺々しさとのギャップは、なかなかに破壊力があった。あの絵巻の光景が夢のように思える。……黙ってれば可愛いというヤツ?
だからちょっと、イジワルをしたくなったのだ。
「炎理さんって教室ではそんなに眠たいの? 休み時間は丸まった背中しか見えない」
「なっ、おまえっ! それは触れちゃいかんとこだろうがッ」
「そんなの知りませんね」
「くっ」
あははっ、と一緒に笑う。ざわざわと人の気配もある階段付近。
僕らと同じく腕試しに来るビギナーが勇足で進んでは―――すぐに撤退する。
そんな彼らを尻目に、僕らはさっさと最初の分岐を曲がり、いくらか進んだ白道にやってくる。
振り子になった金属の"鎌"が高速で飛来し、シールドを突き破る。
平素ではまず気づけない、魔法で隠蔽された"熱線"が僕らの腹を切断する位置に固定されていた。
これらすべて、《オーラフィールド》に触れてようやく対処が間に合うレベルだ。ビギナーが逃げ帰るのも納得の難易度だ。《トラップジャマー》との併用でリスクを最小限化して進む。
「…………じー」
「なんだ? ラクミヤ」
それらを、ことごとく燃やすことで突破する彼女の暴虐はひどいと思う。
そんな彼女でも、魔法を貫通してくる矢や鉄球には無傷とはいかず、ポーションを使わされている。
普通、ダンジョンハントは適正レベルでなければひたすら損害だけが嵩むのだ。それが良くわかる。
マナだって、新調した"ダサい装備"がなければ今頃死んでるだろう。見た目を優先してスタイリッシュにキメようとしたら、"首チョンパ"か"脳破壊"されていた罠もある。
《オーラフィールド》は、根本的に"一人用"なのだ。
だから今日はもう引き返し、安全なレベリングに切り替えるべきだと感じる。
「ラクミヤ、ヒグレ。……帰るか」
「ノゾミちゃん。そうだね」
僕も、そう思う。
「最後にしようか。―――《ヒューマンドミネイト》」
さっそく使ってみた。マジックスキル《ヒューマンドミネイト》の効果で、僕らに背を向けたゴブリンが、モンスターに襲いかかる。
「グギャッ」
「バァゥ、バウバウッッ」
たった今、"味方になったゴブリン"と犬人間『コボルト』が取っ組み合いの喧嘩を始める。
「いけっ! そこだ! つかみかかれ!」
しかし、ゴブリンの動きは精彩を欠く。僕の魔法に抗って、身をひねったり片手を持ち上げたり、意味不明な動作が途中に入るからだ。
それがなければ、お互いで潰し合えるはずなのに。
「意識があるときは、強く抵抗される。それをねじ伏せるためには、MPを追加で消費しなければならない」
しかも、それですら完全に言うことを聞かせるのは不可能ときた。うーん、あんまりコスパがよくないな……。
「ゴブリンに同情するわけじゃないが、すっごい苦しんでるな」
「…………あ、やられちゃったよ? 残ったコボルトはどうしよっか」
「任せろ。―――『火炎弾、乱れ打ち』」
火が弱点のコボルトに炎弾が炸裂した。回避動作をとってその場を脱しようとするコボルトの背中に炎の花が咲き乱れ、絶叫して火だるまになった。
「『チェーンバインド』+『誘導弾』」
それでも這々の体で床を転がるように離脱する。足元に"鎖の蛇"が絡みつき、それを道標にして―――気弾が下半身を砕き割る。
逃走手段を封じられたコボルトは、そのあと無抵抗に燃やし尽くされて、たちまち炭となり、そしてドロップになった。
「まほうッ、ほしいッ。まほうッ、ほしいッ」
羨望の目で壊れたラジオになるマナは、切り株をそのままかぶったようなカブトをコンコンとリズミカルに叩き、アピールする。
魔法使いが充実するパーティはMP切れしない限りは、このように"らくらく"とした道中になるようだ。
5Fのモンスターは強さの上限が跳ね上がり、遭遇率も高いとはいえ、それよりも脅威なのは致命傷を受けかねない罠の方であった。
「これがラストバトルだッ」
そんなわけで、遠方からニョロニョロヘビをしつこくぶつけて、さらに《ヒューマンドミネイト》で嫌がらせをした結果――目当てのモンスターが釣れたようだ!
―――ガァアアアァアァアア!!!!
立ちはだかった巨躯が光を遮り、僕らに大きな影を落とした。
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『オーガ Lv.15』
【HP】 858/858
【MP】 370/370
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赤褐色の肌をした豪腕の鬼『オーガ』は、仲間がいないにもかかわらず、堂々たる風格で"血塗られた拳"を振るう。
「ッ!」
会敵早々。
地面を踏み砕く猛烈な加速で襲来した。オーガと最前衛のマナが激突して――
それは交通事故と似たような光景を生み出した。
「ぅぐぁっ!!」
盾に張ったシールドもろとも"ひしゃげ"させる勢いの放たれた拳打にマナが後方に流れていく。
頑丈な白盾は無傷でも、持ち手はそうじゃない。
受け身も取れずに派手な音をそこかしこに鳴らして転がる、だけど意地でも盾を手放さない彼女らしい奮闘を見て。
「はぁっ!」
その一手を無駄にしないとばかりに僕の魔剣が"鋼鉄の皮膚"を裂いた。
オーガの突進に合わせて距離を詰めたのだ。
手応えはあった。
あの龍崎さんと同様に。
「……ッ、硬い!」
「しかもコイツっ炎も効き辛ぇぞ! ラクミヤ!」
あまりにも強靭な肉体だ。さらに爆炎を顔面に受けても止まることがなかった。
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『オーガ Lv.15』
【HP】 857/858
【MP】 362/370
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モンスターランクD。
あのロックイーターと殺し合ってもピンピンしてそうな強敵は、パワーもスピードも兼ね備えるフィジカルのバケモノ。
今日の"シメ"にしようと提案し採用された。たぶん、個のチカラだと周辺でもトップクラスだろう。
なぜか"道着姿"の武人然としたオーガは、はち切れんばかりにパツパツとなった胸を張って大地に根を下ろした。
ゴツい素足の、眼光鋭い鬼は、続けて引き絞った右拳を繰り出す。
「ッ! はやっ―――シールドッ!」
スキル《豪腕鬼》の尋常ならざる身体のポテンシャルと武術の組み合わせは、まさに戦闘特化のパーティにおあつらえ向きだった。
人体操作も完全に無効化される! 僕もテンションマックスだ。
そして、あっけなく打ち砕かれたシールドの破片がキラキラと輝き――血の魔剣と正面から交錯した。
まっとうに考えれば、業物の魔剣が打ち負けるはずはない。
しかし実際には、"鉄塊"の如きゲンコツを両断することかなわず、魔剣は繊細な音を立ててヒビ割れ、砕け散る。
「ちっ!」
魔剣の心棒に負荷がかかるとき、血の骨組みと刀身が連鎖して崩壊するのだ。
これによって、一時的に"元のホワイトソード"があらわになるが折れるよりはマシだろう。
「……ッ!!」
その成果として――彼の拳から血がしぶく。横手に振り払った魔剣が再構築される……。
けれども、骨までは到達しなかったか……。
魔剣それ自体も凄まじい切れ味を持ち、さらに魔法を付与していたのに"コレ"だ。
一瞬の交錯でわかる。
"過去最強"の僕が求めたモンスターだ。
「………あぁ、つよい」
にわかに、ワクワクしてきた。
砕け散った魔剣が完成するよりも"次の手"がやってくるほうが何倍も早く。あの神堂さんを彷彿とさせる肉体美は、練り上げられた魔力がゆえだろう。
「―――ガァアアアッ!!!」
光り輝く鬼の拳がどてっぱらに食い込んだ。厚さ数ミリの『魔力装甲』から放出される衝撃などモノともせずに振り抜かれる。
「ぐっ……!! ハッ」
先のマナ同様。今度は下から掬い上げられるようにして、わずかに両足が宙に浮く。
肺の空気が吐き出され、意識に一瞬の空白が生まれた。
いくつもある防御をブチ抜いて直接圧力を加えられたからだ。
「《オーラ……フィールド》ッ」
しかし、すぐに足はついた。無理やり解除された《オーラフィールド》を張り直し、無傷で構えた僕の姿に、始めは疑問符を浮かべたオーガの表情が、しだいに喜悦に変わっていく。
「…………」
ヒト・モンスター問わず、誰にでも喧嘩を売る好戦的なオーガは別名『道場破り』とも呼ばれる。
いかに奇怪なダンジョンといえども、ナワバリや不文律があるものだ。とくに長生きしたモンスターは新入りをまとめて"コロニー"を作ることもある。
そんな一種の生態系とも呼べる環境を一切忖度せずに強者を探し歩く"習性"が所以だ。
「ラクミヤっ撤退しよう! こいつに炎は効きづらい。オレもヒグレも……おまえだって装備が貧弱すぎる……。なんの対策もしてねぇよ」
身体強化の魔法を駆使するオーガに"火炎の魔弾"は、ほぼノーダメージ。
体表を覆う"魔力の層"に阻まれるのが大きな原因だ。
しかも直撃したとして、オーガの肉体はそもそも火に強い。
「なぁヒグレからも言ってくれよ! ハァハァ……止まる気ないってこいつ」
「……援護しよ? 牽制でも効果はある」
「ったくキツィぞ、これはよぉ……カスみたいなダメになってて! だいぶ萎えるんだが………【フォムーラ】!!!」
独特の効果音を残して、放たれた火の玉が三つ散らばって吸い込まれるように着弾したのち―――爆炎を上げた。
回避したオーガを追尾したのだ。
「フゥ!」
けれど、鬱陶しいとばかりに振るわれた手刀からは煙が上がるのみ。
丈夫な皮膚にすす汚れがつく。HPの減りはわずか『12』。
火炎弾は、ゼロダメージ。代わりに"MP"を数発に一回奪ってるくらいだったがスペルマジックの効果はあった。
だがHP残量的には、この魔法だけで倒すのは不可能かもしれない。
「ふっ……」
僕は少しだけ安堵して、構築されつつある魔剣に付与をおこなう。
鬼の眼光が見下ろす。
「…………」
さぁ、準備はできたかと、視線で問われた。爆発的に高まった彼のオーラが、次々に放たれる火炎の魔法を誘爆させると、瞬時にかき消えた。
「っっ!?」
僕のもとに直線距離で突貫すると予測していた剣は――行き場を失い、横並びになった"巨漢"が炎理さんに突っ込む。
《オーラフィールド》の範囲を完全に見切ったギリギリの移動。
まずは邪魔な後衛から打ち倒すつもりか。――遅れて、方向転換をした。視界では、またしても殴られたマナが――けれど今度は耐え抜いたように見えた。
「マナっ!」
しかし、その実、手加減されていたのだろう。
強引に掴んだ"盾の縁"をめくるようにして剥がされる。
とっさに繰り出した"大剣のコンボ"は一手目の振り下ろしで終わった。
―――片手で、つかまれたからだ。
「フン」
半ばからへし折られ、その頃になって――ようやく大上段から叩き落とした僕の"全力の一撃"が首元に食い込んだ。
「―――グガッ」
白透刃を使い捨てにした剣技は、垂直方向に多大なる剣撃を発生させて、オーガの筋肉を切り裂く。
―――決まった。
魔剣の刀身が肩にめり込む、はっきりとした手応え―――
「ッッ!?」
その瞬間、全身の魔力が急激に移動を始め、肉に埋まった魔剣を圧迫した。
―――このままだとへし折られる! 即座に判断し、魔剣を変形させる。
バラバラに砕け散る血塊。
引き抜かれるホワイトソード。
「フゥッ」
すると、やつはニヤリと口角を歪めた。するすると液状化して手元に引き寄せられつつある血塊。
「?」
オーガはこれらに向かって躍動し、拳打を連発。
それは何もない虚空を穿つような滑稽なものだったが、魔剣は明らかに小さくなっていた。
「チクショウ、やられたッ」
一部が、ただの血液になって床に付着した。
ほかにも"分離法"がいくつもありそうだ。
そうしてるうちにも、僕と炎理さんの魔法を浴びてジワジワと負傷が蓄積する。
―――たしかに、勘は鋭かった。
けれども、問題ない。
いまや"小剣"と化した魔剣の調子を確かめて身体強化の出力を引き上げる。
《ブースト》の魔法陣が足元で、ひときわ強く光り輝いた。
「全力全開のッ! ブースト!!!」
滲み出た魔力が湯気を立ち昇らせる。オーラが光を屈折させ、いまや僕の肉体は、彼や神堂さんほどではなくとも十分に"強靭"と評価できるフィジカル。
前傾姿勢となった。――弾かれるようにして地を蹴る。
接近した僕の魔剣が幾筋もの残像を生み、繰り出される鬼の拳と剣戟を重ね、オーガの豪快な腕が振るわれるたび、血がしぶき、そのたびに魔剣は小さくなっていく。
お互いに、削り合う。
――否。削り合える時間は―――すぐに終わった。
なぁ、オーガよ。
小手調べは済んだか?
「こっちは本気だってのに……!」
魔法の鎧を展開した僕は―――
貧弱な生身とは相反する頑丈なデク人形だ。僕は最低限オーガと切り結べるくらい強くなった。
が、しかし、それはあくまで、小手調べの段階で通用するものであって―――
ヤツの強さの底値である身体能力にかするくらい届いただけであって―――
「ぬぐぉ〜!!」
あまりにも速い、回し蹴りが爆音を残し、僕の体を弾いた。
スキル《破城槌》。
とうとう攻撃スキルが繰り出されたのだ。小石のように跳ねながら僕は考えた。あちらにも当然、スキルがある。
「ラクミヤっっ!」
腹筋が捩じ切られる痛みに、脳が灼熱を生んで、ふわりと白道に横たわる。
―――勢いを利用して体重を乗せ着地する。次手に備えた。
チラリ、と横目でダメージを確認する。HPは―――二割減。
防御の上から大幅に軽減できて、このダメージか。
まともに戦えばあと"5発"で死ぬ計算。腹の具合、臓器の負傷からして、体感とも一致する。
「【フォムッ!】【フォムーラァッ!!】」
息継ぎなしでスペルを吐き出す炎理さんの必死さが伝わる。
それに対し、鬼は無造作に左手を振るい、そこから放たれた手刀が懸命の魔法を無為に散らせる。幸い、鬼は僕に意識を向けて叩き潰そうと手を向けた。
そうだ! 背を見せれば、また叩き斬ってやる。
「くぅ、私だってぇ……!」
マナの声が聞こえたが、今度は一切の躊躇なく《オーラフィールド》を侵した鬼の手が、魔力装甲を一掴みにして剥ぎとる。
反撃の衝撃波を受けて、小刻みに痺れる五指。
なおも侵略を続ける、その指を削ぎ落とすように剣を閃かせた。
―――先端が、何本か落ちる。
《オーラフィールド》内で、魔力による防御は"無意味"だ。
選択的な魔力の打ち消し能力『オーラブレイク』によって、お互いの魔力の"対消滅"が起きる。
さすがに、体内の魔力には干渉できないが、放出されたオーラだけなら、ちゃんと打ち消せる。
「はぁああっ!!!」
「………バーニング、ブロォオオッ!!」
"煌々と輝く熱線"と"弱々しく発光する刃"が同時に巨体に叩き込まれる。
「グ……」
とるに足らぬと切り捨てたはずの二者による攻撃は、むき出しになったオーガの生身を深々とえぐり、たたらを踏ませた。
『―――決まったわッ! このまま一気に削るのよ!!』
腹部をそれぞれ"白剣"と"炎柱"が貫き、しばし硬直するオーガ。
―――さすがに強い。そう簡単に倒せはしないが、三対一の優位を活かせば決して勝てない相手でもない。
「………そう言えば、試してなかった」
トン、と空気の足場を蹴り跳躍すると、ボロボロの長剣を視界に収める。
この魔剣は、僕の血を素材としている。とすれば供給も可能ではないか。
両手で握りしめた魔剣を真上に掲げる。
そして、"首元"に生成した魔力の刃で動脈を引っ掻き、傷をつけ、おびただしい量の血が噴水みたいに飛び出した。
血のシャワーだ。
「あつまれ」
不可解な挙動に警戒するオーガは、両腕を構えて《破城槌》を放つ。
強力無比な足払い。
目的は、ここぞとばかりに攻勢をかける二人だ。
凄まじい衝突音を残し、通路の壁際まで吹き飛ばされた。
「ノォォオオッンっ!?」
とっさに盾を構えたマナよりも、接近戦の苦手な炎理さんがヤバそうだ。
ここで決めたい。
「やっぱり」
新鮮な血液を魔剣に送る。急速に減少していくHPのポイントが自身の生命の喪失を教えてくる。
《オーラフィールド》内で自在に操る血液が渦を巻き、一箇所に吸い込まれていく。ドクドクとしたたる血液を嬉しそうに取り入れる魔剣。急速に成長して、あっという間に背丈を超える長さとなった。
『…………』
それなのに、あいも変わらず見た目ほど重くはない、改めて不思議な魔剣と両手に魔力を集中させる。
「―――『天楼魔剣』」
いま考えた、この技は大きな"溜め"が必要だった。
すかさず、鬼の脳天めがけて振り下ろす。
「!!?」
驚愕に瞳を揺らす。オーガは、当然のことながら、当たるわけにはいかなかった。
回避動作をとるオーガ。
そこに無数のチェーンバインドが群がる。―――それらはすべて、僕の背中につながっており、すでに《オーラフィールド》内では半自動的に行える"所作の一つ"。
絡みつく鎖の束。
引き千切られ、離脱するオーガに迫る"天楼魔剣"。
「ッッ!!!」
やむなく、頭上で腕を交差し、速やかに移動される魔力が"なんらかの技"を発揮したのを認識できた。
鬼の腕部に高まった"魔闘術"と、白く咆哮した大斬撃がぶつかった。
―――弾けた。その余波が通路に突風を生む。砕かれた石材と、大量の砂塵が巻き上がり、血飛沫が舞う。
結構な自傷と引き換えにした僕の最大火力技は、重ねられたオーガの二の腕を軽やかに切断し、鬼の脳天に直撃したのだった。
おやぶんには出会えませんでしたが代わりにホンモノの"鬼"を見つけたようです。ダンジョンは一期一会。その時その時の縁を大切にしたいですね。
次で決着です。




