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命が輝く

決着です!


 ―――さて、残りは二体。


 寝転んだまま横スピンして僕を狙うヤツと、一心不乱にマナたちを狙う不届きものだけだ。


「―――んぐぅ……んぐぅっ……んううう〜〜〜!!!」

『よっと………それじゃあ、いくか〜』


 自己主張する、僕の口を"魔法で塞ぎ"、同時に"魔法で声を出す"。


 

 ―――あの魔剣は引き抜かないでいいかな? 軽い足取りで歩き出す。

 対するは、ブレイキンみたく高速回転して接近する巨像だ。

 その動きは、不規則で見切るのがとても大変だった。



『―――攻略完了』


 落下したコインを真上から制するみたいに巨像の鼻頭を踏みつけると、両手に溜め込んだエネルギーを解き放った。


「もうやべてぐだざぃ〜〜ッ!」

『うぉらぁああ〜〜〜〜』


 交互に、気弾を押し出すのだ。両拳を殴りつけるごとに敵の『HPバー』が削られていく。真っ赤に腫れて裂けたこの手はあくまでも魔法を伝える仲介役のようなもの。


 この技は、言うなれば―――"魔石直通"の『貫通気弾』か。


 ぎっしり詰まった石像を通り抜けた"魔力の塊"が内部に損傷を与え続ける。それを繰り返すうち、グーではなくパーのほうが通りやすいと判断した。なので、すぐに手を開かせる。


 その最中も、左右から伸びた猿手が異常な握力で僕の障壁を―――首元の鎧をミシミシ砕く音がする。


 しかし、圧倒的な魔力の奔流に、猿手も痺れたように何度も弾かれた。



 激減するモアイアイのHP残量。


 そして、ついに怒り狂ったモアイアイが目をこれでもかと開け放つ。


 ―――大口の絶叫が、至近で耳をつんざいた。


 保護した鼓膜。

 それでも耳がキーンとする。《オーラフィールド》で中和したけど、"上にいる僕"も鳥肌が立つくらいだ。


『もうッ、いい加減、終われ!!』

「〜〜〜!!」


 言葉とは裏腹に、優しく手を当て精度の上がった貫通気弾を流し込む。と、彼は息が詰まったような独特の呼吸を漏らして目を瞑るように、静かに、ひっそりと生き絶えた……。


『―――じゃあッ、死亡確認するね!』


 予感がしたので、もう一発叩き込むと、今度はこの世ならざる絶叫を残して、魔石のチカラもついに感じなくなった。


 ――――オォォォオオ…………


 ふ、やはり死んだフリだったか。


『ビビらせやがって』


 その頃になると、最後のヤツが僕にガムシャラ投石を始める。

 炎理さんたちからも意識を外して、両腕使って全力投擲。


『ぅおっ』


 自身の損傷を厭わない自滅覚悟の連続攻撃…………いや、自爆狙いか! 


 それはそうと、至近から浴びる高回転の投石はヤバすぎた。


『―――ぐ、おっ』


 障壁が"濡れたチリ紙"みたいにボロボロになって致命傷を回避するため左回転する。


「〜〜〜ッ!?」


 右脇腹を刺すような痛みのイメージ。目を瞑ってる方の、カラダの僕も苦しそうだ。


 離脱して回復に努める。

 ボロボロの体が小マシになってきたではないか。


 回復魔法と元々の治癒力。この二つがかみ合い急速に復元できた。


 しかし、不思議な話だ。人体に備わる反射なのか、そうでないのか、「イヤだイヤだ」と駄々をこねる自分をさらに上から自分の魔法で強引に戦わせるのは、なんとも言えない"快楽"があった。


 だが感謝してほしい。モアイアイとまともに戦闘できるレベルまで"強さ"を引き上げてやったのだ。少なくとも、僕は二人いるようで、今は混ざり合ってる感じだろうか。


『ラクミヤ……? 帰ったらメディカルチェックを受けましょう』


 ………? どうして?


『どうして、って……自分が二人とか、"重度の精神汚染"や"精神分裂"の症状に、該当するからよ……?』


 自信なさげじゃんか。


 たぶん、分身スキルの元なんじゃないかな。……よくあるやつでしょ?


『………ま、まぁ、そうなのかも……? でも本当につらかったら言いなさいよ? 私、人間のことよく知らないし……』


 と、また意識だけになってるので、"下の体"に精神を戻そう。

 そうすれば、僕自身の悲鳴や、恨みつらみが残響する元の感覚が戻ってきた。


 ―――オエッ、気持ち悪い……………。


 これら不必要な"ノイズ"を除去しつつ、手足の感触を確かめる。


 カラダが壊れるまで戦い、今度は治しながら戦う。

 そして、治ったら、また――戦うのだ。シームレスに継戦する。

 理論上、環境中に魔力がありさえすれば"無限に戦える仕組み"の完成だ。さっそく、新しい戦い方を試そうと軽く飛び跳ねて接近するも……?


「……う、ぅん? なんのつもりだッ」


 あとは一対一で雌雄を決する、というタイミングだった。


 "カラダと魔法の一致"により、もう完全に見切れるようになった豪速球を軽々と回避できる。スキル《投石ガン》は攻略済みだ。


 そこで僕に、背を向け全速力で逃げるモアイアイが見えたのだ。


「ぉい」


 あの長い手を使ってジャンプ。――着地して頭部も一緒になってまたジャンプ。そして、グングン離れていく奇妙なモアイアイ。


「……は?」


 方向転換や微調整に使っていたほかの個体とは打って変わって全力だった。


 ―――罠の利用……距離を取っての投石……自爆を確実に発動するため、などなど色々考えたが……?


『まさか弱いもの狙い!?』

「クソっ」


 普通、モンスターは戦闘中もっともダメージを与えた者を狙うはずだ。


 『敵愾心ヘイト』と呼ばれる概念だが、回復スキルなどを使う場合も上昇する。


 まさか、エイポンの回復か? 天使のヘイトは持ち主に向く。


『イヤイヤっ! あんたの暴れっぷりに比べたら誤差よそんなもの!! ここまでやられてなっさけないわねぇ〜〜?』


 だが――合理的だ。モアイアイと比して莫大な魔力の塊たる僕を相手にするより、倒せそうな獲物を狙う。


「一番困るな、ソレ」


 煽りに煽る、ミカを尻目に僕もようやく追従する。

 地面に猛烈な勢いで魔力を噴射させ跳躍すると、地面を滑るように爆走し、攻撃魔法を飛ばした。


 ―――そして、すぐに遠い背中が見えた。放った光条が十字に輝く。


「―――ぐろぅん、ぐろぅん、ぐろぉおおんんんん、ぐろぐろぐろぐろ……」


 しかしヤツは狂ったように自身の腕を振るい、その体躯はすでに半分くらい縮んでいる。落とし穴の瓦礫の山を乗り越えて、僕を徹底的に無視するつもりのようだった。



「ぁ……ぁはッ…! はあッ、相性、わりぃ……しぬぅ……」

「…………スー、スー」


 額から血を流す炎理さんと、死にかけのマナが行き止まりの岩壁を背にして追い詰められている。


 砕け散る岩片の先に、"淡く輝く盾"が見える。二人は現在ホワイトシールドの影に隠れているようだ。――ナイス判断。手放せば死ぬぞ?


「―――ま、マジで死ぬっ! ヒグレ盾ゼッテー離すなよッ」

「ぁぐっ………!! わかってるよ、そんなのッ!!」


 瓦礫の山を突っ切り、猛攻を加えてモアイアイのHPを大幅に削るが……。



「ヌゥン……ヌゥン……ヌゥン」


 目を閉じた、モアイアイが瞑想するみたいに独特の声を発して浮かび上がる。と、膨大な魔力が一点に凝縮されるのがわかった。


 ―――アレは……!?


「や、ばッ」


 極めて危険な魔力の収束が、可視化されたエネルギーが、モアイアイを凄まじく不安定な"爆弾"と化す。


 スキル《じばく》は、物質タイプのモンスターに特有の、魔石を極端に不安定化させ、構成要素を丸ごと犠牲にして爆発を起こす"終端スキル"。


 ………く、位置関係が悪いッ!!


 スキルが発動された時点で、爆発の阻止は不可能だろう。

 ゆえに今から刺激を与えるのは悪手――急速に生み出した大量の触手で繭をつくるようにモアイアイの周囲に結界を張り巡らせる……が――ダメだッ、間に合わないッ!!


 

 良案浮かばず、無数の光る触手がドーム状の結界を構築するその真横を、通り抜けたとき―――


 

 閃光。

 轟音。

 吹き荒ぶ熱風と、飛び散る岩片。


 《オーラフィールド》の全域を舐めるように灼熱が埋め尽くした。


「しっ、ぬぅ……!!?」


 地面に頭を伏せて身を小さくする。亀のように閉じこもると―――横合いから大量の破片がやってくる。


「ぐぁッ? いたっあたっ、いたぁ〜〜」


 破片は、全身を突き刺して"左肩"や"脇腹"に激痛が走る。それでも、爆炎と爆風の中和に専念して少しでも『パーティの生存率』を上げる。


 紅蓮一色に染まる《魔力感知》。

 通路全体が高温に熱せられる。できあがった"灼熱地獄"。


 その中で、左上に意識し続ける仲間のHPバーが窮状を伝えた。


___________________________________________

『ヒグレマナ Lv.3』

【HP】 36/100

【MP】 93/93

【状態】 《火傷》《重症》

___________________________________________


___________________________________________

『エンリノゾミ Lv.5』

【HP】  18/122

【MP】 893/1068

【状態】 《瀕死》

___________________________________________




 灼熱の嵐が過ぎるのを、ただ待った。


 パーティメンバー全員に供給される、エイポンの全体回復スキル。――誰だって、何にもできない局面で、確実に発動される"全体回復"は、まさに福音でしかなかった。


 《じばく》発動後から2回目の《エンジェルヒール》が届いた頃になって、やっと、荒れ放題の通路が元に戻る。




『戦闘に勝利したわ!』

『モアイアイA〜Eを倒した!』

『おめでとう! レベルが4に上がった!』

『HP+7、MP+92、ちから+6、かしこさ+10、まもり+4、せいしん+12、きよう+9、びんしょう+8』

『おめでとう! ジョブ《冒険者見習い》のレベルが4に上がった!』

『スキル《生活魔法》を獲得した!』

『サウンドが追加された!』

『ギルドクエスト【モアイアイを倒そう】を達成した!』

『グランドクエスト【困難を生きのびろ!】を達成した!』

「クエスト【抜群に強いモンスターを倒そう】を達成した!』

『クエスト【モンスターハウスを脱出せよ】を達成した!』


 ・

 ・

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___________________________________________

 〈素材〉

 まどうコア×5 new!!

 猿の手 new!!

 大地のプレート new!!

 ミニチュアモアイ new!! rare!!

 〈装備〉

 ブロンズバスタード new!!

 ウッドボウ new!!

 ウッドスピア new!!

 ウッドブーツ new!!

 ウッドバングル new!!

___________________________________________



 ミカの勝利宣言が、福音のように聞こえた。

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