恐怖のモアイ
どんどん行きます!
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【ログ】
[パーティ:戦闘に勝利した!]
[かぎづめモグラを倒した!]
[おどるオニオンを倒した!]
[ポイズンスライムを倒した!]
[パーティは経験値を 113 を取得した]
[ドロップを手に入れた!]
〈素材〉
魔石
モグラのツメ new!!
オニオン new!!
毒の魔石 new!!
スライムの毒肉 new!!
〈装備〉
ウッドソード new!!
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「―――て、これボス戦でもなんでもなーーい!!」
ツッコミと共に炎が吹き上がった。憤慨し、地団駄を踏む炎理さんによるものだ。
「え? かっこよかったじゃんマナ」
「そういう問題か!? このペースで5Fに行くつもりなら途中でヒグレが死ぬぞ? おまえら仲良かったんじゃないのか……」
理解不能な目で見る彼女を横目に、ドロップを回収する。
あのポイズンスライムにも似たテンタクルハンドを出してペタペタする。
土気色が混じる魔石。
毒々しい魔石。
モグラのツメ。
タマネギ。
ぷるんとしたスライム肉。
そして―――木でできた片手剣。
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《ウッドソード》
ふつう。木剣。切れ味は低いので練習に使おう。
売却額:80G
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「初めての装備ドロップだ……!」
武道場で握ったやつとまんま同じタイプの木剣。
通常/ノーマル級の中でも出現しやすく性能も低いが、ダンジョン産の装備品は、まれに『オプションスキル』と呼ばれる能力が付与される。
これが付けば、元とは比較にならないほど価値が高くなることもある。
能力は多種多様で、属性、状態異常、装備者のアビリティ増強などがランダムで付く。これもそうかも…? 振り回しても特に変化はないが……。
「出たな、"厳選要素"」
満足して手に入れた木剣を眺めていると神妙な顔つきの炎理さんが、そう吐き捨てた。――おそらく同じウッドソードでも性能が千差万別なことを言ってるのだろう……。
何回も同じのを出して強い武器をゲットするのだ!
「……しっかし、ラクミヤ。―――本当に、何もしなかったな」
若干、非難するように細い目をした炎理さんが呟く。……あれ? 厳選の話をしたいわけじゃないらしい……。
「おまえの《アロー》ならスライムの魔石――魔核/コアを狙えたんじゃ? 目標の捕捉と命中力、どちらもあったんじゃ……?」
疑り、真意を探るような目つきだ。
そんなことを言われても……?
「でもまさか全部を削って倒すなんて……!! 魔核/コアも移動しないのにとくに狙ってもいなかったし」
合理を求めるならマナ自身が切り開けた。本人が"非合理を望んでいたから"邪魔したら悪いだろう。
「それどころじゃなかっただろ……」
しかし僕の考えは伝わらず、落胆した炎理さんを伴い、嫌な匂いを発する乾いた毒沼にやってくる。
「……やったよ……っ! えいくん! わたしが倒したっ……これでみすてない? えいくん、わたしのこと………冷たい目で見ないで……ッ」
………意外と元気そう。エイポンのスキルのおかげだ。
なかったら、確実に序盤で死んでいただろう。その分強くなれたはずだ。
「―――ねぇ、返事してよっ? わたし、頑張ったよね??」
青い顔でなんとか立ち上がるマナに手を貸した。
「うん、頑張ったよ」
言いながら、先の戦闘を振り返る。
エイポンの加護は一見してあっけなく抜かれたが。毒のダメージと症状の緩和に貢献していたのだろう。解毒薬を渡す必要はなかった。
見聞きした情報と比べても、ことさらマナが特別でない限りは、もっと急激にダメージが入ってもよさそうだった。
―――毒って怖いな……。
この毒液……持って帰って"常用"するか……?
と思い、採取用の空き瓶ですくったが……。
「あ……。これ、蒸発するんだ………。魔力の流れからして、死体を集めたら正常にドロップがもらえないのかもね」
「………………」
「……っ」
虚ろな目をしたマナと、ビクついてる炎理さんがいたけど―――無事、僕たちの勝利だ!
長居は無用なので、移動を始める。
「いやしかし、エイポンすごいね〜」
『フフン、ようやくわかったポンか』
ポーションだっていちいち補充しに行くのは面倒すぎる。解毒薬は高いしね。そこをスキルだけで回せるのはデカい。
炎理さんの天使マエンがスキル《プチファイア》で10秒ごとに1〜8ポイントのHPダメージを出すだけなのと比べても―――《火傷》の付与も起きなかったし―――本人が言うようにSSRガイドエンジェルなのだろう。
……………。
『なによ? 出ないものは出ないってのッ」
僕のうちに閉じこもるばかりのミカはお仲間にさんざんバカにされてやる気が萎えたのかな。
ピカピカ光って妨害するのも敵にとってはかなりイヤだと思うが……魔力がないから僕もやられたらウザいと思うし……?
『ふんっ。取ってつけたみたいに言わないでくれる。………いくら慰められても何も変わらないから……』
暗い顔。鬱っぽい雰囲気で――僕の中で体育座りをするミカ。
一度、休憩を挟んだのが悪かったのだろうか。
探索・戦闘と真剣に脳を活用していたときはよかったのに。
僕も、少しずつメンタルが悪化してきてる……。
疲労を顧みない能力の酷使はクセみたいなものか。
《オーラフィールド》等のスキルは体力を消耗する。魔法は未だ、洗練されていないものばかり。高コストなのはなにもMPに限った話ではない。
体力の消耗を軽視したツケがやってきたのか?
黒いモヤモヤを吐き出すように、僕は口を開く。
「ほらマナ、行くよ〜? ―――次だよ、次」
振り返り、疲労困憊な少女に問いかける。
「マナが悩んでるのちゃんと知ってるからね! そうだっ! アイツ……ロックイーターっ、出てこないかな……? ―――きっとマナも"食べられたら"強くなって帰ってくるよっ!」
薄目を開けて僕に引きずられるマナは、一仕事終えた気分なのだろう、マジかこいつ……という顔をした。
のんきに休憩してると罠やモンスターにちょっかいをかけられる。
フィールド内にいるならむしろ安全かもしれないな!
「―――マナが戦えなくなっても僕が動かしてやるからっ」
「やっ……!!」
「やっ、じゃない」
マナはかっこいいが、僕の魔法と競争するならまだ足りない。
「ふふっ……」
そんなマナの濡れそぼった目に映る、僕の表情は……愉悦に満ちていて……なんだかとてもイヤな感じだった………。
「おまえらの関係がよくわからん……」
お手上げだ、と手をぶらぶらさせて首を振る炎理さん。
と、雰囲気があまりよろしくないな……。
閉鎖環境では一度悪化したメンタルは戻りにくい。途中立ち寄る水晶広場でしっかりリラックスした方がいいかな。
そう考えてマナを炎理さんに任せて慣れたふうにトラップを無駄打ちさせていると――足元に違和感があった。
「……っっ、落とし穴かッ」
頼りなく震えた地面にすぐさま反応してバックステップをしたら、先ほどまでいた通路の床が抜け落ちて大穴ができあがったのだ。
大きな落下音と、ガレキの破砕される音が混じり合い大量の砂ボコリが舞い散る。僕は、半透明のシールドを足場に、突如として発生した大穴を舐めるようにして観察する。
「…………」
通路を横断するように走った不自然な切れ目と、消えた地盤。
穴の深さはそれほどではなく、一部残った白道通路の床が、落とし穴最下部から突き出た複数の"鉄杭"とぶつかり合い、その残骸がしっちゃかめっちゃかになっている。
「こほ、こほっ」
そもそも白道は、元のダンジョンオブジェクトの上から塗り固めるようにして石材を流し込み、補強した通路だ。
それ故にオブジェクト越しの罠を大部分阻害でき、僕らの元まで届く鉄槍、弓矢、魔法などは通路の内側で発生したもの。
一部強力な罠はソレすら貫通してくるが、今回は白道に一定の荷重が加わると作動する罠だと推測できる、が、なんとも言えない。
「これも、モンスターが通ったら……いや、なんで石材が全部消えない? 範囲を指定して丸ごと入れ替えたんじゃ……?」
堂々巡りの思考。不可解で不条理な罠のトリガー。
真面目に考えれば考えるほどこんがらがってくる罠に関する思考。
「やっぱ対策ないとキツイか。罠に関しては魔法でどうにかできる領分じゃない」
集まって三人身を寄せ合う。
「やっとッ! エイくんにできないことがッ!?」
「どうせ現状は……ってオチだろ? 目に見えて動きが良くなってるからなぁ」
「そうだけど、罠は予兆が掴みづらいんだよ。作動自体は防げないから、こうやって被害が出てしまう」
マナー講座を開くために新たなマナーを生み出すダンジョン。
僕の罠に対する印象はそのようなものだ。
マナーを知るためにはその講座を受講するしかない。
しない場合は、確実に罠に当たる。受講した人だけが目には見えない安全地帯が"なぜか"わかるし、虚空に向かって、一定の回数一定のリズムで手を叩いて解除するなどしていた。
その光景は異様の一言であり、どこか"宗教儀式"にも見た奇妙さが感じられた。僕らは"何者か"の腹の中に入るために自ら下処理をして味付けまで行っているのではないか、そんな予感があった。
改めて、ダンジョンが普通ではない常識の通用しない場所だと認識しつつ、パーティメンバーの"死んだ目"を眺めた。
「―――"連装タイプ"だったね、閉じ込められちゃった!」
「可愛く言っても壁はなくならないぞ?」
落とし穴を中心にして通路の前後に"岩壁"が現れたのだ。
僕らは身を寄せ合って周囲を警戒する。即席で作られた閉鎖空間。20メートルほど先にある岩壁に魔法をぶつけるもびくともしない。
「水責めか……通路全体の崩落による生き埋めか……再度の落とし穴か」
《雷撃弩》をズラリと並べての一斉砲撃かもしれない。
これだから罠はイヤなんだ。ダンジョンの匙加減でやりたい放題。
「ははん、それか『モンスターハウス』だな?」
「ここ、まだ3Fだよ……?? ……全滅しちゃうっ!!」
まさにその予感を補強する"不吉なメロディ"が流れ始める。
遠くの岩壁付近にいくつもの"魔法陣"が出現した。
見覚えのある黒に染まった『召喚陣』と呼ばれるモンスターを吐き出す専用の魔法陣だ。
「炎理さんの正解、だったね」
それは、"角ばった人の顔をした巨石"に、"細長い指をした猿の手"がくっつく非常に不気味なモンスターだった。
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『モアイアイ Lv.12』
『モアイアイ Lv.10』
『モアイアイ Lv.13』
『モアイアイ Lv.10』
『モアイアイ Lv.12』
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彼らは地響きを立てて通路に降り立ち、落とし穴を挟んで向こう側にいる。
―――ヌゥんんんンンンンンンン!!!!
―――ヌンン、んんんンンンンンン!!!!
―――ヌぅん、んンンンンンンン!!!!
―――ヌんんんンンンンンンン!!!!
―――ヌュンんん、ンンンンンンン!!!!
一斉に起動する"巨像の目"がギョロリと動く。そして、叫び声をあげた。
「マナッしっかりして!」
「ヒグレっ……なんだこの圧はっ……!? ………チッ、《ヒートサンクチュアリ》!!」
大音響は共鳴して空間全体を大きく震えさせる。
敵対する者の心を挫くプレッシャースキルは増幅されてマナの意識を刈り取る。と、奴らは、その長い猿手を角ばったモアイの顔面に張りつけて―――
『避けなさいッ! ラクミヤっ!!!!』
―――剥ぎ取り、そして、その自分の顔を投げつけたのだ。
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[モアイアイたちがスキル《投石ガン》を使った!]
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ア○パ○マン




