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【魔神転生】 〜無限の螺旋に挑む者たち〜  作者: 暗黒のグミ
第二章 白き怪物のアギト
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エピローグ 空を睨む

第二章「白き怪物のアギト」エピローグです


 高高度の澄み切った景色は、精神を鎮静化させ、火照って"一部が硬化した体"を冷却する。


 ミカもいなくなった。


 広大で過酷な自然の中に区切られる『人類の生存圏』を見下ろす。


 人が生み出した兵器の射程内は――割と平和だ。

 

 常日頃から上空の襲撃に備えて分厚く頑丈な魔法結界『アイギス』を張っており、安全な位置から発射される砲撃が『魔物』を撃墜させているからだ。


 そもそも僕らの戦うダンジョンモンスターは『魔物』と呼ばれる生物群の一種であり、ダンジョンの定めた独特のルールに基づき行動する特徴がある。


 ――たとえば、彼らは自由に移動ができない。限られた範囲でしか動けず階段や転移水晶に近寄ることは原則ありえない。その代わり、ダンジョン内の"罠をあらかじめ知る"などの特性がある。


 地上にいる魔物は、行動原理や習性が自然の動植物に近くダンジョンから"帰化"することもある。


 そんな魔物たちの住処を『魔境』と呼ぶ。これは学園にある『魔の森』も該当する。人類は日夜魔物と戦い生存圏の拡大・縮小を繰り返す。


 さて、そのうちの一つ。

 アイギスの結界に囲われた"巨大な城塞都市"が見える。

 星刻学園や、大迷宮のある――『星都アストライア』だ。


 星都は、周辺でもっとも安全な人類の文明圏だ。その周囲に点在する都市群『アステロイド』の中心都市でもある。


 山地や原野、砂漠の中にポツンと突然建物の群れが現れるのだ。

 僕らの出身『六道市』も惑星と自称する中核都市の庇護を受けるアステロイドの一つに過ぎない。


 それはともかくとして、視点をさらに引き上げる。

 小さくなっていく都市圏の姿からピントをずらせば――雄大な自然が横たわり山脈には"竜の棲家"があり、大きな翼を広げて悠々と飛翔する竜の一頭がすぐ近くを横切った。


 人類は――ごく狭い地域にギュウギュウと密集する。世界はこんなに広いのにと不思議に思った。


 現在の『皇国列島』は、皇都のある『八島本島』と三つの『大支島』からなる。


 僕らのいる島は、そのうち一番西よりにある『西方大支島』と呼ばれるものだ。


 勢力圏でいえば、となりの『紫陽都市圏』が一番大きいかな。

 毒々しい『紫の太陽』を空に打ち上げてモンスターを弱らせる独自の防衛システムをとっている。


 見た感じ、人体にもだいぶ有害そうだが……? メディアでもあちらの情報は悪いイメージばかりだ。



 ―――さぁ空の旅もそろそろ終着か。地平線の向こうに沈む太陽とおさらばして高度が上がり続ける。ツノが僕の願いを聞き届けて、可能な限り叶えてくれた結果だ。


 しかし、それにも限度はある。


 ある境から『天空』の世界が広がっているからだ。

 尋常ならざる荒々しい魔力のせいか僕の視界にもノイズが多くなる。


 真っ当な生物が生きてはゆけない"極限の環境"。

 大嵐と落雷が敷き詰められた"魔の領域"。

 さらに上を見るならば、もっと空気が澄んだ静寂な世界が現れる。―――が。以前はここの"ヌシ"と目が合ったのだ。


 日夜、険しい闘争が続けられる、過酷な生態系の頂点に"君臨する王者"。

 地上でも度々その動向が世間を騒がせる"災害の代名詞"。


 "空の王"、"天空の支配者"、"水神"、ヒトが大気圏外を夢見て一向に越えられない最大の原因。


 彼の者を呼び表す言葉は多いが一言でまとめるならば―――



 ―――『龍』。



 あまりにも規格外な、この超生物が活発化して地上に襲撃を仕掛ければ、過去の例からも都市などは一日で滅ぶのが分かりきっている。


 そして、僕も小さい頃に追い返されてしまったトラウマがある。『黒い龍』だ。

 何をどうしても――"絶対に勝てない"と理解させられたのだ。


 そろそろ視点を戻そうか。



 かの"偉大な龍"のテリトリーに触れる前に。



 ―――思えば、僕の《オーラフィールド》の超・超・超・強いバージョンなのだろう。一定範囲を自らの支配領域とする能力にさしたる違いはない。その影響範囲と出力がケタ違いなだけだ! 


 途方もない話だが、いつか、僕だって"大気を丸ごと掌握"できるようになってみせる!! ダンジョンに通えばいつか必ず!



 そんな高揚感は―――打ち消された。



 すすり泣く声がしたからだ。



「うぅ……ひぐっ………なんでぇ、ねぇ、なんで無視するの?」


 ポタポタと湯船に波紋が広がる。マナの震える声が胸を刺激する。


「っ!」


 先ほどまで見た空の旅がすべて夢だったのではないかと思わせる、圧倒的なリアリティを感じる。


「もう……上がろうか。マナもきっと、疲れてるんだよ」

「……触らないでっ!!」



 ―――パシンッ



 これが戦闘中だったなら、そのくらいの攻撃は防げただろう。

 

 ジンジンと、手のひらが痛む。


 飛び出したマナの背中を呆然と見送る。



「なんだよ………」


 別に僕は悪くないはずだ。


 "そういうこと"は、"本当に好きな人としかしちゃいけない"って教えてくれたのはマナだ。


 それなのに、なぜ悪いことをした気分になるんだろう。


「フゥーーー、フゥーーー」


 深呼吸を何度かやっても"悪い気持ち"がなくならない。

 ――僕は、ビクビクと怯えているミカを呼び出して【メニュー】を表示させる。



『……ひっ……やめ……ひどいことしないでッ』



 今だけは――この天使に実体がないのが幸運に思えた。


 

 生きていれば、きっと、ひどいことをしただろうから。



『……………』


 泣き疲れて――だらんと、無防備に首を下げる天使の背中をスワイプして音楽を鳴らす。


『………………』


 曲はなんだっていい。爆音で脳内に響き渡る戦闘曲のやかましさで少しずつ冷静になっていく。――無音は耐えられない!


 しかし、今度は無性にダンジョンに行きたい欲求が高まってしまった。


 ――世間では、『ダンジョン依存症』という言葉がある。


 医学的なものではない。俗称だが、高ランクの冒険者は、みなが罹患しており、ギルドは『異常者の集団』だと糾弾する民間の団体がよく使う印象だ。


 いまの僕はどうだろう。――少し考えたが、それを言ったら、『マナ依存症』だろう。


 両者を天秤にかけてどちらを選ぶかと訊かれたら………。



 ――――ダンジョンの方が少しはマシだよね?




「風邪引くよ」


 脱衣所から続く濡れ放題の床を拭きながら、僕はリビングの様子を確かめる。


 こういうとき、魔法サマサマだ。


 マナは、素っ裸のままソファに体育座りをして固まっていた。

 チラチラと僕のいる方をうかがっているのが分かる。

 ――キッチンや柱越しで遮蔽物があるからこその反応だ。

 だけど、視界には僕の心配の声に反応して――期待する顔がハッキリと映る。


 こうやって事前に観察しないと近づくことすらできない僕の臆病さと言ったらない。


「クリームパスタ」

「……え?」

「作ったから。マッシュの」


 あのお化けキノコ――クリーピーマッシュのドロップは、高品質のマッシュルームだった。


 魔力を豊富に含んだ食材をふんだんに使用した料理。


 これは少々の贅沢、あるいは役得だろう。


「…………すごく美味しいよ」


 月並みな感想しか言えないけど。


 あの不気味なモンスターの絵面が浮かばなければ、もっとよかったが……。


「やっぱりマナはすごいよ。どうやったらこんな美味しいものができるのか見当もつかない」

「………マウマウで調べたらすぐに出てくるのを真似しただけだもん」

「いや、本当にすごいよ」


 語彙力が貧しくて、もどかしい。


 でも、そんな器用なこと僕にはできないから。

 レトルト食品かカップ麺か、とにかく既製品を用意するだけで一苦労。

 そもそもの食べる面倒さに加えて、作る労力を想像したらほとほとやる気がなくなる。


「はぁ〜、美味しかった。ごちそうさま」


 いつもより食べるのが遅いマナをチラ見して――食器をシンクに置く。


「テレビでも見ようかな〜」


 わざとらしいセリフを述べて、ソファに座った。


 ポチッとつけた『ギルドチャンネル』は、ことダンジョン関連の最新ニュースを伝えてくれる。


『それでは、"皇都のトップレギオン"でも! 大迷宮の完全攻略は不可能だということですか?』


 "スレスレ討論会"。


 今日のテーマは、『それ言っちゃっていいんかい? いつまでも終わらないダンジョンクライシス』とのこと。



『ハウプトフリューゲルもプラチナエクリプスでも大迷宮のダンジョンボス――魔王を倒せないということですか?』


 ゲストの"第一線級万能手"と紹介される眼帯の男は、女性キャスターの質問に眉をしかめる。


 あちゃあ〜、よほど痛いところをつかれた、といったわざとらしい表情を作った後、滔々と語り始めた。


『………残念ですが、難しいでしょう。非公式だが最後に魔王が倒されたのは"50年以上も前のこと"。海外の例ですが――この真に勇敢な冒険者たちも、そのときにボスフロアに侵入したものは全員が帰らぬ人となった。……………この意味がわかりますか?』

『いっ、いえ……っ』

『―――不鮮明で欠落のあるログの復元と、それ以前の内部環境との比較によって『ダンジョンマスター』が変更されたことが示唆されてはいます。一世紀近く経った現在でも、"歴代最高"の呼び声高い"初代勇者パーティ"ですら―――帰ってはこなかった』


 男の片目が熱量を増す。


『この偉業だけは、いまだ誰も成し遂げてはいないし、挑戦すら憚られる。永遠の行方不明はあまりにも痛いんですよ。―――ここだけの話。私は"大陸の皇帝"、"僭称初代勇者"は本人に限りなく近い存在だと睨んでますよ』


 この言葉に、スタジオは物議もかもす。


『眷属化に洗脳――負ければ尊厳が剥奪されるのは自明ですね。私どもは常にそのリスクを負ってダンジョンと戦っているのです』

『しかしあの"独裁者"が勇者本人とは軽はずみに言うもんじゃないでしょぉ〜』

『ちょっとぉっ!! さっさと冒険者がモンスターを倒さないからそんなことになるんでしょ!? なしてんのよ〜っ!』

『……ミルペさん、さっきの話聞いてましたかね?』


 笑いをとる空気感が出てきた。


 僕は雑談めいた出演者の声に耳を傾けたまま、洗面所の方へ歩く。


「ありがとう」

「ううん。それより嬉しいもんだねー。簡単に炒めただけで、物足りないかと思ったけど」

「いや、ベーコンも牛乳もまろやかでよかったよ」

「フフっ。ならよかった〜」


 途中で洗い物をするマナと話し、意識をテレビの方に向ける。


 ――以前は聞こえない音量でもハッキリと発言が聞き取れるようだ。

 コレも魔法で聴力を上げているから。"五感の強化"はわりと簡単そうだが、出力を上げるほどに魔力が失われる独特の脱力感が生じる。不慣れなことを試してロスが多大だ。

 けれど最大出力や範囲、聞き分け能力くらいは調べた方がいいだろうか。


 ただでさえ、知覚に特化してるのでより敏感肌になりそうだけども。


 この辺の地区は『一等地』に比べて人口密集は少ない。

 それでも両隣の家と向かいくらいの近所の生活音がノイズとなって聞こえ、一つずつ聞き分けていくと。

 個人的で遠慮のないやりとりが脳を埋め尽くし、すぐにプライバシーの侵害かと思い至る。


 家族の団欒。テレビやスマホから流れるデジタル音。

 肉声だけを追ったとき――女子のくぐもった悲鳴と男の愉悦が聞こえた。


 この家は――二軒先の軋むベッドの上から。暴行の現場か情事の最中かは分からない。少なくともこの瞬間は合意のない行為に思えた。


「……………ハァ。きもちわる」


 少しだけ、気分が悪い。


 このように、耳の良さはよく分かった。頑張ればヒトの可聴域を超えて"イルカさんとおしゃべり"ができるようになるかもしれない。


 けれども、ツノ同様に不必要な情報が手に入ってメンタルに悪影響を及ぼすデメリットの方が強い。


 要練習だろう。


 それはともかく――コレは気になるな。


「だから、まだ分かんないってば〜。彼ってとってもミステリアスだから」


 すぐ隣の元実家に住むお姉さんの声だ。


「………て言っても。――さっそく今日、小試練に挑んで、なんと完全勝利を収めたらしいからね……! まぁ、あのスペックならいくらでも手段があるとはいえ、無魔法の習得速度がえげつない。……なにコレ? 強度がちょっと普通じゃないね、分かってたけど」


 お姉さんは近くの大学に通う学生さんだったはず。

 副業で冒険者をやっているとか? そんな服装を見かけたことはないけど。


「うん、うん。まったねー。そいじゃ、続報が入ったら伝えるよ。………しっかし、彼―――なにしてんだろうね? あの位置は――洗顔でもやってる? そんな習慣はなかったはずだけど」


 この人っ! めちゃくちゃプライバシーの侵害してる。


 こわっ。


「『スペル』は察知される恐れがあるからなぁ〜」

『あんたも少しは人付き合いを気にするべきじゃないかしら。そんな泥棒みたいなやつじゃなく、正面からね』


 全くもってそのとおりです。電話の向こうの大人の人。


 今まで気にもしなかった近所の人たちの事情など知りたくもないが犯罪者となれば話は別だ。


 あの暫定カップルも、家主の男が誘拐犯とかなら通報しないといけないのかな?


「はぁ〜。それにしても、ボロいバイトだにゃー」


 タバコを吸ってベランダからこちらを見るお姉さんは、真っ暗の空を見上げて――たそがれる。


「健全な青少年……かは微妙なところだけど、楽宮叡の特殊性や背景についての調査。――『クリアランス』は学園入学を果たしたことで十分だとも思うけど」


 うんうん。


 とぎれとぎれに漏らされる独り言を拾う感じだ。

 

 ――だけど、数分間無言が続いたので、僕も段々と飽きてきた。


「―――お、もうこんな時間だ。『ルナルー』の配信はリアタイ視聴って決めてんだ。――プシュー、プシュー、この音が聞きたかった。………ング、ングっ」


 こんばんムーン、とよく分からない挨拶から始まった個人チャンネルに対しての応援にお姉さんが集中するようになって――


 僕は、鏡に映らない全身から立ち昇るオーラをうねうねと動かして歯ブラシをとり、歯磨き粉のチューブに圧力を加えて中身を押し出す。


 洗面台に手を置いたまま、ひとりでに動く歯ブラシがわりと強めに歯茎をえぐったので仕方なく手動でやることにした。



 超がつくほどの眠気に襲われる自室。


 スマホでライセンスカードのIDとパスでログインすれば、『ギルドアカウント』を用いてネット注文もできる。


 魔力感知センサー、警報、防犯カメラ。業者に頼むにしても、いっぱいあってどの組織がいいのやら。

 一番の会社だけで十分じゃないか。

 それとも、ギルドのサービスを受けるべきか。


「なんで防犯グッズ?」


 ヒョコッと横からマナが、覗き見た。

 ベッドで横になりいつでも寝れる状態だ。


「もしかして『プチバズり』したの見ちゃった?」

「………プチバズり?」

「あの勇者のやつだよ。ギルドにいた冒険者たちが広めたらしいね。学園の生徒や中学の同級生まで反応してるよ、見てみる?」

「…………いい」


 今日はいろんな人と不本意につながってもうお腹いっぱいだ。

 感情が上手く働いていないのだ。あとからまとめてドバーッと現実感がやってきてパニックになる予感。


「じゃあいきなり絡まれたりして怖くなったんだ? 私は、また全員揃って入院するハメになるかと心配してたよ」


 ―――小学生のときの話。よくやったものだ。刃物を持った格上複数相手にガラス瓶のカケラで対抗した記憶。

 同じ条件で、同じことをやれと言われたら今の僕にできるだろうか。


「そうじゃなくて、となりのあの……」

「高田さん?」

「そう。その人がずっと見てた、から」


 僕が気づいたことをたどたどしくも伝えるうちに――少しずつ怖いマナが現れる。


「………………」


 目の奥が冷たくて、けれど燃えるような激情が静かに閉じ込められている。


「…………ふーん、あの人もか。……大丈夫だよ。エイくんは、なにも心配しなくていいから」

「………そんなこと言っても。あと二人の男女がね」

「うんうん」


 ――あ、それはね、と。


 軽い感じで話し出す。


「女の人を呼んで要望に合わせたシチュエーションでエッチなことをするんだよ。そっかー、あの人そんな趣味が。――聞きたくなかったな、たまに顔を合わせるのに」

「……ごめん」

「ううん。ちゃんと教えてくれてありがとう。自分一人だけで溜め込んだら、エイくんいつか爆発しちゃうからね」

「そうかな? ………そうかも」


 今日は一日中いろんなことがあった。

 朝から晩までの――印象的な光景が脳裏をよぎる。

 その中で、もっとも鮮烈で刺激的なのは――やっぱり巨大ミミズ、ロックイーターとの戦闘だろう。


 業物の武器がなければ、あの凶悪なアギトに噛み砕かれて、分解されたのち吸収されたかもしれない……。


 そうだ。――惜しかった。あと少しで命が絶えるところに迫りそうだったのに!


 なんだか鬱っぽい気持ちが湧いてくる。

 眠るときは――大体いつもこんな感じだ。いまぐっすりと眠ったら……もう二度と目を開かなくなるかもしれない。


 ―――そんな"期待"だ。


「………眠れない?」


 僕は勉強机のライトをつけてノートを開く。


「うん、ちょっと」


 真新しいノートに魔力のペンで文字をつづる。

 一見すれば、中学のテスト勉強のページでしかない。


『龍崎ほむらLv20』


 決闘の相手だ。


 実際に目にしたナマの情報をノートにメモる。


 ――身長、体重、体格と立ち振る舞い。魔力の多寡と運用法。

 ――彼の、豪快で迷いのない剣筋をイメージして何度も頭の中で動かしていく。

 ――今回見ただけでも得られたデータは多い。


 素早い反応は、基本職ウォーリアーのジョブスキル《見切り》によるもので、高いレベル相応のフィジカルのおかげで瞬時の迎撃が可能。

 また、魔法が直撃しても急所以外はノーダメージ。

 魔法付与ありの木剣だと薄皮を裂くのが関の山。


 戦力の予想と対抗策を練る。やはり即座に効果のある《無属性魔法》の練度上昇と剣術スキルの習得。


 基礎体力の向上は言うまでもなく。日時の通達にもよるが、時間はあるほどに差は縮まるだろう。


「フゥ……こんなところかな。あとは本人のパーソナルデータ、まで調べるか? フェアじゃない? でも生き死にをかけてるわけでもなし。ネタバレはイヤだなぁ〜」

「怖くは、ないんだね?」

「人前でやるのはキツイけど、戦闘が始まれば気にならないはず」


 そういうもんだよね、僕の体って。


 さて、ライトを消して横になれば、左手を強く握られる感触がする。



 ―――どこにもいかないで、って切に願う。祈りにも似た儀式。


 コレがあるから、僕の心は鎮静化してしまう。


 それに対抗するわけではないけど、【ライブラリ】の鑑賞を始める。


 一番の大物だ。


―――――――――――――――――――――

 -トラップモンスター

 ロックイーター★

 -討伐数:1

 -基礎スペック

 初期レベル:10

 取得経験値:130

 ランク:E

 種族:岩食虫(ワーム種)

 スキル:『プレッシャー』『かみつく』『再生』『脱皮』『溶解弾』

 耐性:『打撃につよい』

 せつめい:岩盤をバリバリ砕く大顎で獲物を捕食する習性をもつ

 -ノーマルドロップ(66%)

 大地の結晶-2800G

 肉厚な皮膜-3200G

 ?????

 -レアドロップ(0%)

 ????? -G

―――――――――――――――――――――



「あーレアドロップなんだろう。……調べたいけど、自分でゲットして初めて知りたい気持ちもある」

「…………」

「明日はどんな冒険ができるかな〜。またロックイーターと出会えたらいい。もっと強い敵がやってきてもいい。ダンジョンで死んでも復活するんだ、どんな目に遭ったっていい」

「……………………」

「すべての力を出し尽くし――それでも敵わなかったときの絶望はいかばかりか。………ごめんね、マナ」

「………なんで謝るの」

「ハハ、なんでだろう」


 常時無意識のうちに操作している魔力の手ごたえからして、明日にでも、もっと強力で強固な魔法を編み出していける。


 確信がある。

 僕はもうこれ以上"弱くなれない"。――そのとき、マナは隣にいるだろうか。


 それが少しだけ足枷となる気がして、けれど――そんなに悪い気分ではなかった。


お疲れさまです! 二章が終わりましたっ。これが彼らにとっての日常のようです。……羨ましいねぇ! 世界観……というか地理的なのってどう説明すればいいかまったくわかんにゃい。外は魔物でいっぱい。きけん。だから一般人は分厚い壁の中で暮らすんだぁ。村もいっぱい。だけど死亡率は高めね!


 次章(三日目)は「新たな仲間」編です。引き続きよろしくね〜! ずっとエイくんとマナちゃんの病んだ関係を見たかった人はごめんな! おやすみ!

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